見積書は重要な書類として位置づけられており、一定の期間保管しなければなりません。
最近では紙の発行だけでなく、電子データの発行も増えてきました。
電子データも同じように一定期間保管が必要なことに加え、正しい管理が必要です。
この記事では、見積書の保管が必要な理由をはじめ、管理方法や紙で保管する場合・電子データで保管する場合の注意点なども解説していきます。
見積書とは
実際に正式的な契約書を交わす前ですが、見積書には金額やサービスの範囲などが詳しく書かれているため、重要な書類です。
正式な契約するかどうかも、見積書次第で変わってきます。
そのため、契約書と同じように、取り引きの証憑(しょうひょう)書類として、一定期間の保管をしなければならない書類でもあります。
見積書の保管が必要な理由
見積書は、法律で一定の期間の保管が決められています。
それは、契約を行った後に見積書で話されていた内容と違う時に証拠になるためです。
お互い信頼し合って契約を行うわけですが、絶対にトラブルが起きないとも限りません。
もしかしたら、取引先がごまかしてくる可能性もあります。
見積書をきちんと保管しておけば、万が一の時に、見積もりの段階ではどうだったのか証拠として提出できます。
会計処理に関しても、真実性や正確性を裏付けることも可能です。
契約を行った場合は見積書の保管は必須ですが、特に契約を行わなかった場合は必ず保管しておく必要はありません。
何かの時に参考にする企業も多く、契約に至らなかった見積書も社内資料として残しておく場合も多いです。
見積書の保管期間
見積書には保管期間があるのですが、法人や個人事業主の場合で少し変わります。
何かトラブルが遭った時にも重要な証拠となりますので、しっかりと該当する保管期間を守りましょう。
ここからは、法人の場合と赤字決算だった場合、個人事業主の場合に分けて紹介していきます。
法人の場合
法人が見積書を保管する場合は、7年間と法律で決まっています。
それよりも前の段階で、自社判断で決めて処分しないようにしましょう。
年数の数え方は、法人税の申告期限の翌日からです。
うっかり数え間違えてしまうと、ズレが生じてしまうため注意しましょう。
赤字決算の場合
売上がプラスにならず、赤字決算となってしまう場合もあるでしょう。
この欠損金が生じた年は、通常とは異なります。
欠損金の繰越期間が10年に変わったこともあり、見積書も同じく10年保管しなければなりません。
法人だから7年とは限らず、自社の状況が赤字となった場合は長くなるため注意が必要です。
どこまでが7年保管で良く、どこから10年保管になるのかわからなくなってしまうケースもあるかもしれません。
迷ってしまったら、赤字決算になった年からは、一括で10年保管にしておくと、間違えて7年で破棄してしまうことも防げるでしょう。
個人事業主の場合
法人に比べると個人事業主の場合は、原則5年保管すれば問題ありません。
申告の方法が青色、白色どちらでも一緒です。
しかし、個人事業主の中でも、全前年度の課税売上が1,000万円を超える場合は変わります。
法人と同じように、7年間保管をしなければなりません。
見積書の関する記事はこちら
見積書の管理方法
見積書の管理方法には、紙と電子データの2パターンがあります。
ここからは、紙と電子データに分けて管理方法を説明していきます。
見積書を紙で保管する場合
普段から紙で見積書を保管している企業も多いかもしれません。
紙の場合は、取引先などから届いた見積書を事業年度か、取引先のファイルに挟めて保管する場合がほとんどです。
事業年度ごとに分類
その年の事業年度のファイルに挟めていくだけですので、難しい技術は必要ありません。
従業員もファイルの場所さえ覚えれば、誰にでもできる作業です。
特に何か細かく分けることもなく、そのまま順番に挟めていけばOKです。
保管は簡単ですが、どのタイミングで破棄するか悩んでしまうかもしれません。
企業としてルールを決め、廃棄する際には業者に頼んで破棄しましょう。
取引先ごとに分類
自社との取り引きが多い企業の場合、専用のファイルを作っておくと便利です。
何か確認したいことがある場合も、企業ごとに分かれていれば見つけやすくなります。
さらに、見積書だけでなく、請求書や納品書なども一緒にまとめておけばさらに見やすくなるでしょう。
保管期間が過ぎた後は、間違えないように年度に注意をして適切に破棄をしましょう。
見積書を電子データで保管する場合
見積書を電子データでの保管を考えている場合、いくつかの方法があります。
それぞれ決まりもありますので、正しく保管できるように覚えておきましょう。
電子帳簿保存
オリジナルの電子データを利用して、見積書を保管することも可能です。
ただ、自社だけの判断で、電子帳簿へ見積書の保管ができません。
事前に税務署へ伝え、承認してもらってからでないと認められません。
正しく保管してもらうために、ほかにも決まり事があります。
ここをクリアしていないと、電子帳簿保存ができません。
電子帳簿保存を考えている場合は、まず国税庁のパンフレットなどでルールの確認をすることが大切です。
国税庁「電子帳簿保存法の概要」スキャナ保存
見積書を簡単に保存したいと考え、スキャナ保存を使用する場合もあるでしょう。
スキャナ保存も可能で、手軽にスマートフォンやタブレットなどでも撮影ができます。
しかし、自社の判断でこちらも始めることはできず、まずは税務署へ事前確認しなければなりません。
承認すると認められ、電子帳簿保存と同じように要件をクリアする必要もあります。
電子取引データ保存
取引先とはじめから電子データで取り引きをしている見積書の場合、紙ではなく電子データで保存しなければなりません。
法改正でも、電子データで取り引きしたものは紙での保管が認められなくなりました。
電子帳簿保存法の第10条でも決まった事項ですので、税務署への確認や承認は必要ありません。
電子帳簿保存法に関する記事はこちら
見積書を紙で保管する際の注意点
今後も見積書を紙で保管したいと考えている場合、注意点があります。
間違った管理をしてしまうと、いざトラブルが起きて見積書を出さなければならないとなった時に、どこへ行ったのかわからなくなってしまいます。
法律でも5年から10年の保存などが決まっていますので、失くしてしまっている状態は違反していることにもつながります。
失くさないように、適切な管理をして紙の見積書を保管しましょう。
原本を保管
紙で見積書を保管する際には、見やすいように順番を決めましょう。
案件や取引先ごとにファイルを変えて、取引年月日順に挟んでいきます。
適当に手前に挟んだり奥に挟んだりしてしまうと、年月日の順番がめちゃくちゃになってしまい、いざ探す時に困ってしまいます。
見積書の順番を周知し、皆がわかるようにするのもコツです。
そして、紙が日に焼けてしまい見えにくくなるなどがないように、保管庫で管理すると良いでしょう。
よく取り引きをする企業であれば、ほかのものとは別に取引先のファイルを準備すると、いざという時に見積書も見つけやすくなります。
2024年1月以降、電子データの紙面保管不可に
紙で保管する場合は注意点があり、守らないと法律違反になってしまいます。
2022年1月の法改正で、これまで電子データを紙にして保存しても良かったものが認められなくなりました。
見積書を電子データでやりとりしてきた企業の中には、自社で紙にコピーをしてファイルに挟めていたケースも多いのではないでしょうか。
猶予の期間もありその間はこれまで通り紙にしても受理されますが、2024年以降は電子データを紙にして保存することはNGになりました。
これまでと同じ紙での保存を考える企業もあるかもしれませんが、電子データで見積書をやりとりしているのであればやり方を変えることを検討したほうが良いでしょう。
電子データでやりとりしたものを電子データ保存できれば、スムーズに処理もできます。
帳票の電子保存に関する記事はこちら
見積書を電子データで保管する際の注意点
見積書を電子データで保管する場合も、ルールを満たせなければ受理してもらえません。
電子データで保管する際には、特に真実性確保と可視性確保が重要となります。
ここからは、データ保管する際の注意点を詳しく紹介していきます。
真実性の要件を確保する
電子データを有利なように改ざんされてしまったら、有効なデータとして保存できません。
そのため、簡単に改ざんできないように真実性の確保が求められています。
たとえば、削除を行った際に履歴が何も残らないと証拠隠滅されてしまう危険性があるので、その記録が残るシステムを利用しなければなりません。
もしくは、訂正や削除ができないようなシステムを利用するなど、改ざんが簡単にできない工夫が必要です。
タイムスタンプの付与やスキャナを選ぶ際に基準以上のものを選ばないと、真実性確保ができなくなくなるので注意が必要です。
可視性の要件を確保する
真実性確保と一緒に、可視性確保も求められます。
見積書を見せてほしいと要求があった際に、すぐに確認できるような状態でなければいけません。
そのために、検索機能の確保が求められます。
CHECK!
検索機能の要件を満たす
電子データを保存した後、もう一度そのデータを取り出して確認しなければならない時がくるかもしれません。
可視性確保ではすぐにデータを取り出せるように、取引年月日や取引金額などの項目から検索できるようにしなければならないと決められています。
見積書もすぐに検索して出せるように、設定しておかなければなりません。
見積書の電子化に関する記事はこちら
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まとめ
見積書は、何かトラブルがあった時にも大きな証拠となるため、一定の期間保管が義務付けられています。
保管期間は法人では7年、赤字の場合は10年、個人事業主の場合は5年となります。
見積書の管理は紙と電子データの2通りがありますが、法改正によって電子データでやりとりした場合は、紙での保管が認められなくなりました。
猶予の期間が過ぎてしまうと、電子データでの取り引きは電子データでの保存のみが有効です。
今後のためにも、システムを導入して見積書の電子データ保存も対応できるようにしておくと安心です。
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