工事発注書とは?書き方や注意事項を解説

工事発注書とは?書き方や注意事項を解説

工事発注書は、工事を行う際に必要となる重要書類のひとつです。

工事発注書を作成せず、口頭の取り決めのみで契約を交わしてしまうと、何かトラブルが生じた際の対応が難しくなります。
契約内容が文書として残っていなければ、契約内容の確認ができないからです。

しかし、工事発注書の重要性は理解していても、書き方がわからないという方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、工事発注書の書き方や主な作成方法、作成時の注意点などについてまとめました。

工事発注書とは

工事発注書とは

工事発注書とは、工事の内容や工期、金額や支払方法などが明記されている契約文書のことです。
下請法では、下請取引の内容を記載した書類を作成し、保存することが義務付けられています。

しかし建設業では、口頭で契約を取り決めたり、メールなどで簡単に確認を済ませたりすることがあるようです。
実際、建設工事の下請負は下請法の適用外ではあるものの、公正取引委員会は以下の点に留意するよう呼びかけています。

例えば、建設業者が建設資材を業として販売しており、当該建設資材の製造を他の事業者に委託する場合には、製造委託(類型1)に該当する。
また、建設業者が請け負った建設工事に使用する建設資材の製造を他の事業者に委託する場合には、自家使用する物品として建設業者が当該建設資材を業として製造していれば、製造委託(類型4)に該当する。

引用元:公正取引委員会

下請法の適用範囲に含まれる取引はもちろんですが、そのほかの取引であっても発注書を作成・保存する方が得策といえるでしょう。

発注書の役割

ではなぜ、工事発注書を作成した方が良いのでしょうか。
ここでは、発注書の役割について確認します。

工事発注書には、注文者が取引先に工事を発注する意思を示すという役割があります。
つまり、発注書記載の内容は、注文の確定版であり、正式な依頼です。

工事発注書なしに口頭で受注してしまうと、後から契約の内容を確認することができません。
取引先と自社との間の認識のズレによるトラブルを回避するためにも、契約内容を正確に記載した書類を作成する必要があります。

発注書の保存期間

工事発注書は、法人税法で帳簿書類として扱われます。
そのため発注書は、確定申告の提出期限以降7年間保管しなければなりません

工事発注書を受け取った企業は、自社の都合でその文書を破棄しないよう注意しましょう。

また、発注書は原則紙で保管することになっています。
税務調査の際、すぐに対応できるようにするためです。

これまで、電子データをそのまま保存する場合には、税務署長から事前に許可を得る必要がありました。
現在では電子帳簿保存法改正により、電子メールやクラウドサービスでやり取りした発注書・注文請書などの電子取引データは、電子のまま保存することが義務付けられています。検索機能や改ざん防止措置など、法令の要件を満たした形で保存する必要があるため、クラウド型の文書管理システムを導入する企業も増えています。

発注書/注文書/注文請書 違いは?

これまで、工事発注書の概要を確認してきました。
工事発注書と似た言葉として、「注文書」「注文請書」があります。

以下では、それぞれの違いについて紹介します。

発注書と注文書の違い

発注書と注文書は、法律上特に違いはありません。

ただし、企業によっては

発注書:工事や作業など形ないものを依頼する場合
注文書:商品や資材など形あるものを依頼する場合

あるいは

発注書:素材や原料を加工せずに使用する場合
注文書:素材や原料を加工して使用する場合

など使い分けていることがあります。
使い分けが不明瞭であれば個別に確認する必要があります。

また、自社のなかで発注書と注文書の使い分けがあいまいである場合は、区別を明確にするか、どちらかに統一した方が良いでしょう。

発注書と注文請書の違い

発注書と注文書に法的な違いはありませんが、発注書と注文請書は異なる書類です。

発注書は、注文者が取引先に注文の意思を示す書類ですが、注文請書は、受注者が注文を引き受ける意思を示す書類です。
つまり、発注書と注文請書の2つが取り交わされることで契約が成立します。

契約の順序は、発注書の発行→注文請書の発行です。
注文請書が先に発行されることはありません。

工事発注書の書き方

工事発注書の記入項目

これまで、工事発注書の概要や注文書、注文請書との違いについて確認してきました。
では、工事発注書には何を記載する必要があるのでしょうか。

以下では、

  • 記入必須項目
  • その他の記入項目

に分けて工事発注書の書き方を紹介します。

記入必須項目

工事発注書には、以下の5つの記入必須項目があります。

  1. 書類作成者の氏名もしくは名称
  2. 取引年月日
  3. 取引内容
  4. 取引金額
  5. 発注先事業者の氏名もしくは名称

その他の記入項目

一般的には、先に確認した必須項目に加えて、以下のような項目を記載します。

  • 施工現場名:工事を行う場所の名称
  • 納期:工事の期間
  • 支払期日:取引額を支払う期日
  • 支払条件:取引額を支払う際の条件(支払方法など)
  • 発注明細:工事の具体的な内容(項目、単価、数量、単位、金額)
  • 備考:補足事項や注意点があれば記載する

下請法適用範囲内の取引の場合

工事発注書の概要についての部分で、建設工事の下請負は下請法の適用外ではあるものの、一部適用範囲内のものがあることを確認しました。
下請法の適用範囲である取引に関しては、下請法で定められた記載項目を網羅した発注書を作成する必要があります。

詳しくは、公正取引委員会のホームページをご確認ください。

公正取引委員会「親事業者の義務」

工事発注書の作成方法

工事発注書に記載する項目について確認しました。
以下では、実際に工事発注書を作成する方法を4つ紹介します。

市販の書式を使用して作成

1つ目の作成方法として、市販の書式を使用する方法があります。
市販の発注書を購入し、必要事項を手書きで記入します。

パソコンの操作が得意でない場合におすすめの方法です。

ワードで作成

2つ目の作成方法は、ワードを使用する方法です。
インターネット上では、企業や個人の提供する無料の発注書テンプレートが公開されています。

自社に合ったテンプレートをダウンロードし、必要事項を入力すれば完成です。
パソコン操作が苦手でなければ、手書きより効率的に作成することができます。

また、完成した発注書を電子データで送付できるため、紙代などのコスト削減につながります。

エクセルで作成

3つ目の作成方法は、エクセルを使用する方法です。
エクセルは、関数を利用して計算できるため、より素早く正確に発注書を作成することができます。

ワードと同様、無料のテンプレートが公開されています。

管理システムで作成

最後に、管理システムを利用した作成方法について紹介します。
建設業向け管理システムを利用すれば、見積書の内容をもとに発注書を自動作成できます。
さらに、発注書の内容を原価管理や支払管理へ連携できるため、転記ミスの防止や業務効率化につながります。
電子保存やPDF出力にも対応できるシステムであれば、法令対応もしやすくなります。

業務を効率化したい場合は、管理システムの導入を検討してみてください。

クラウドサービスを利用して作成

近年では、クラウド型の受発注システムを利用して発注書を作成・管理する企業が増えています。ブラウザ上で必要事項を入力するだけで発注書を作成できるため、ソフトウェアのインストールは不要です。

また、見積書や工事台帳、原価管理と連携できるシステムであれば、見積内容から発注明細を自動で反映でき、転記作業や入力ミスを削減できます。作成した発注書はPDFで出力したり、メールやクラウド上で取引先へ共有したりすることも可能です。

さらに、発注履歴を一元管理できるため、過去の発注内容をすぐに確認できるほか、電子帳簿保存法への対応やペーパーレス化にもつながります。発注業務の効率化と法令対応を同時に実現したい企業は、クラウド型の管理システムを活用するとよいでしょう。

工事発注書作成時の注意点

工事発注書作成時の注意点

これまで、工事発注書の記載項目や作成方法について確認してきました。
以下では、工事発注書を作成する際の注意点について解説します。

訂正したいとき

発注書に記入ミスが見つかった場合、基本的には訂正した発注書を再発行する必要があります。

発注書の再発行ができない場合は、訂正箇所に二重線を引き、印鑑を重ねます。
この際、発注書に押された印鑑と同じものを使うようにしましょう。

また、発注書の訂正方法に決まりがある企業もあります。
そのため、取引先に訂正ルールの有無を確認したうえで訂正するようにしましょう

押印の必要性

発注書への押印は必須ではありません。
しかし、一般的には注文書の発注者名の部分に重なるように発注者側の社員を押印します。

発注書には、取引内容や納期、金額など重要な情報が盛り込まれています。
発注書への押印は、これらの情報が正式なものであることの意思表示になると同時に、改ざん防止にもなります。

契約約款の必要性

取引先と基本契約を締結していない場合、注文書に契約約款を添付する必要があります。

約款には、発注書に記載のない項目やその他の必要項目を記載し、発注書の裏面や別紙に張り付けます。
複数ページとなる場合には、割印が必要です。

既に取引先と基本契約を結んでいる場合であれば、約款の添付は不要です。
「記載事項以外については、基本契約書の通り」と発注書に明記しましょう。

メールで発注書を送付するとき

作成した発注書をメールで送付したい場合、メールで送付しても良いか、まず取引相手に確認を取りましょう。

また、メールで送付する際はPDFファイルを使用するのがおすすめです。
エクセルやワードで作成した文書をそのまま送付すると、ファイルを開くことができなかったり、レイアウトが変わってしまったりする場合があります。
複製や改ざんを防止するためにも、PDF形式に変更したうえで送付すると良いでしょう。

近年では、メール添付だけでなく、クラウド上で発注書を共有したり、電子契約サービスと連携して発注から契約締結までオンラインで完結させたりする企業も増えています。

印紙の必要性

印紙の必要性

発注書を発注書としてのみ作成する場合、印紙は必要ありません。
つまり、発注書と請書を別々で作成するときには、印紙は不要です。

ただし、発注書が注文請書も兼ねている場合は印紙が必要です。
注文請書は印紙税法上で課税文書に分類されています。
印紙が必要なのはこのためです。

また、「発注書」という名目であっても以下のような場合は印紙が必要です。

  • 「発注書のみで契約が成立する」ことが当事者間で合意されている場合
  • 見積書を承諾する旨が明記されている場合
  • 当事者双方の署名や押印がある場合

以上のような場合、発注書は契約書でもあると判断されます。

印紙税額は、国税庁のホームページで公開されています。
契約金額に応じて税額が変化するので、印紙が必要な場合は確認するようにしましょう。

国税庁HP「印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで」  

印紙が不要な場合

発注書と請書を別で作成する場合に加えて、発注書を電子データで作成する場合も印紙は不要です。
発注書が契約書であると判断された場合でも、電子データの発注書であれば印紙は必要ありません。

印紙税法における課税対象は紙の文書であるため、電子データは課税の対象にならないようです。

ただし、発注書をデータで送信した後に、紙の発注書を別途取引相手に交付するなどした場合は注意が必要です。
国税庁のホームページでは、以下のように明記されています。

ただし、電子メールで送信した後に本注文請書の現物を別途持参するなどの方法により相手方に交付した場合には、課税文書の作成に該当し、現物の注文請書に印紙税が課されるものと考える。

引用元:国税庁HP

つまりこの場合、紙の発注書は課税対象となるため、内容によっては印紙が必要となります。

インボイス制度による影響

インボイス制度は、2023年10月から開始され、現在は適格請求書の保存・管理が日常業務となっています。
この制度は、主に請求書に関する制度であり、適格請求書(インボイス)」を発行・保存すると、発注者が商品などの仕入税額控除を受けられるようになるというものです。

そのため、発注書と請求書を別で作成する場合、インボイス制度による影響は特にないと考えられます。
しかしながら、印紙の必要性のところで解説したように、発注書が請求書を兼ねている場合などは注意が必要です。

適格請求書への記載項目

適格請求書には、以下の項目を記載する必要があります。

  1. 書類作成者の氏名もしくは名称・登録番号
  2. 取引年月日
  3. 取引内容(軽減税率対象品目である旨)
  4. 税率ごとに区分して合計した対価の額(税抜き又は税込み)及び適用税率
  5. 消費税額等(端数処理は一請求当たり、税率ごとに1回ずつ)
  6. 書類の交付を受ける事業者の氏名もしくは名称

引用元:国税庁「消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます」(リーフレット)(令和2年6月改定)

赤文字の項目が、現行の工事発注書記入必須項目に追加される事項です。

よくある質問

ここでは工事発注書の作成に関するよくある質問についてご紹介します。

工事発注書は書面で作成しないといけませんか?

原則として書面で作成することが望ましい ですが、最近では電子データ(PDFやクラウド管理) も増えています。
下請法では、工事発注書を交付する義務 があるため、口頭やメールだけでなく、書面を作成するのが一般的です。

工事発注書を発行しなくてもよい場合はありますか?

小規模な作業や短期間の工事で口頭契約することもありますが、トラブルを防ぐために発行するのが望ましいです。
ただし、契約金額が一定額を超える場合や、建設業法に基づく契約が必要な場合は、発注書だけでなく請負契約書の作成が推奨されます。

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まとめ

今回は、工事発注書の書き方からインボイス制度による影響までを簡単にまとめました。

建設業では、まだまだ口約束や簡単なメールでのやり取りで契約が交わされることがあるようです。
しかし、取引先と自社との間の認識のズレによるトラブルを回避するためにも、工事発注書を作成することをお勧めします。

本記事で紹介した通り、工事発注書を作成する際には押印や印紙の有無などややこしい決まりや複雑な記入項目があります。
インボイス制度や電子帳簿保存法への対応が求められる現在では、発注書を正しく作成・保存することがこれまで以上に重要になっています。

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