工務店では1回の見積提案ですぐに契約に至るケースもあれば、検討しても決断に至らなかったケース、相見積もりで他社に負けてしまうケースもあります。
契約件数に比べて見積書の作成件数が上回るのが一般的ですが、作成した見積書はどのように管理しているでしょうか。
ここでは、工務店における見積管理方法について、見積書の役割や管理の重要性やポイントとともに解説していきます。
工務店における見積書の役割
顧客に提案した見積書は、どのように管理されていますか。
一度提案、提出したものだから、契約に至った場合は契約書類と一緒にファイリングしていても、それ以外は処分している場合やまとめてしまい込んだままというケースもあるかもしれません。
ですが、工務店における見積書の役割を正しく理解することで、管理をしっかり行い、有効活用することが大切と思えるようになります。
顧客との合意形成
見積書の役割は、顧客との合意形成の第一歩になる点です。
提案書や施工プランと見積書を別に提案する場合もありますが、多くの工務店では顧客から相談を受け、現場調査などをしたうえで、希望する工事内容に沿った見積書を提案します。
顧客はこの見積書を見て、工事を発注するか判断するのが基本です。
1つの工務店の見積書のみで、工事をするか、それとも今回は見送るか決めるケースもあれば、他社と相見積もりをして比較検討されるケースも少なくありません。
金額がいくらかを比較するだけでなく、費用の内訳や使用されている材料のグレード、見積書の見た目やわかりやすさが判断に影響する場合もあるので、体裁も重要です。
効率的な契約書・発注書の作成
顧客が納得し、合意形成が取れた見積書が、その後に締結される契約書のベースとなる場合や建材や部材を発注するための発注書の作成ベースになります。
一から作成し直すより、見積書の記載内容を用いることでスピーディーに作成ができ、記載ミスや記入漏れなどの不一致も起こりません。
契約書には見積書で同意された金額をはじめ、顧客の氏名や工事名などが転記できます。
発注書には、見積書で合意された使用する建材や材料のメーカー名や製品名、型番、数量などが反映できます。
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見積管理の重要性
見積書は合意形成され、契約に至れば、不要となるわけではありません。
一度作成した見積書は、その顧客との施工履歴管理に用いるだけでなく、ほかの顧客への提案などにも活用することが可能です。
個人情報の流用には気を付ける必要がありますが、見積書を管理することで業務効率化や施工例の共有や見積ノウハウの継承などにつなげることができます。
ここでは、見積管理の重要性について見ていきましょう。
スムーズな見積書の発行
ひな形を作成しておくことで、必要項目を入れ替えるだけでスムーズに見積書を発行することができます。
類似案件や同等の建物の案件などについては、過去の見積例を参照し、スピーディーに見積書を作成して提案ができます。
競合他社との相見積もりがなされるケースをはじめ、顧客がスピードを求める場合もあるので、スムーズな見積書の発行は重要です。
適正価格に沿った見積もりができる
毎回の見積もりごとに一から計算をするのは大変ですが、類似案件の見積書が参照できれば、契約に至った適正価格を踏まえて作成することができます。
見積書の計算や作成に慣れていない、経験の浅いスタッフでも、これまでの見積実例にもとづき、適正価格に沿った見積もりが可能になります。
見積ノウハウの継承にもつながるので、社内の知見を高め、経験値を上げていくためにも見積管理は重要です。
過去の見積情報の蓄積ができる
見積書を適切に保存、管理していくことで、過去の見積情報の蓄積ができます。
よくある事例を踏襲して応用していくことができるのはもちろん、レアケースの案件の相談を受けた時も、過去に見積情報があれば参考にすることが可能です。
同じ地域の同等案件や類似案件、レアケースに至るまで過去の見積情報の蓄積ができれば、経験の有無を問わず、適正な見積書を作成しやすくなります。
1つの工務店における適正価格が形成され、担当者や案件によって大きなバラつきがなくなります。
工事規模や使用する建材のグレードなどが同等の案件であるのに、価格にバラつきがあると、顧客からの信用が得られません。
過去の見積情報の蓄積により、社内の統一的な見積ルールの形成が可能です。
見積管理の方法
見積管理の方法として、簡単に導入しやすいエクセルを利用する方法と、専門の見積管理システムを用いる方法があります。
それぞれの特徴を見ていきましょう。
エクセル
エクセルはパソコンにソフトがインストールされていれば、すぐに利用することができます。
社内で統一のフォーマットを作成し、作成中や提案中の見積書、契約が決まった見積書などをフォルダに入れて蓄積することで、参照することや活用することが可能です。
エクセル管理のデメリットは、案件が増えることや担当スタッフが増えるほど、管理が煩雑になる点です。
ファイルの保管場所にバラつきが出たり、間違ってデータの上書きをしてしまったりと、ヒューマンエラーも発生しやすくなります。
データは定期的にバックアップを取らないと、データが消失するリスクもあります。
一方、プリントアウトして紙ベースで保管する方法もありますが、検索しやすいようにファイリングする手間がかかり、保管スペースも必要です。
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見積管理システムは専門のシステムで、ソフトウェアタイプや専用システム、クラウドサービスなど、さまざまなタイプがあります。
エクセルより導入コストや管理コストがかかる場合がありますが、見積管理のために作られているので、ミスやトラブルが起きにくく、効率良く管理することが可能です。
見積書の作成も必要項目を入力するだけで簡単にでき、過去のデータを呼び出して反映させることも可能です。
過去の見積書の検索も条件を指定するだけですぐにできます。
クラウドサービスならデータもクラウド上に保管でき、フォルダ管理やファイル管理の手間や面倒もなく、データ消失などのリスクも軽減できます。
見積管理の際のポイント
見積管理の際のポイントとして、属人化を防ぐこと、社内での情報共有の徹底を図ることが大切です。
2つのポイントについて詳しく見ていきましょう。
属人化を防ぐ
エクセル管理で起こりやすいことですが、一部の担当者による属人化を防ぐことが必要です。
最初に取り決めたルールに沿わず、ひな型を勝手に替えたり、フォルダ名を変えたり、分類方法を変えたりされると、ほかの方が使いたい時にわからなくなります。
よりわかりやすく、使い勝手の良い運用に変えていくことは大切ですが、一部の人が勝手に進めてはいけません。
その人が離職した場合や定年退職でいなくなったら、どうなっているのかわからなくなるような管理の仕方は避けましょう。
社内での情報共有の徹底
見積書にはスムーズな見積書の発行ができる、適正価格に沿った見積もりができる、過去の見積情報の蓄積ができるといったメリットがあります。
ですが、情報共有を徹底しておかないと、せっかく見積情報があっても宝の持ち腐れです。
同等の案件なのに一から作成するのは時間の無駄です。
また、同じ顧客に前回の見積もりを修正して提案する必要がある場合など、担当者が変更したからといって一から作り直す必要はありません。
情報共有の徹底が図れるよう、ルール作りを行いましょう。
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まとめ
工務店における見積書の役割は、顧客との合意形成を図ること、効率的な契約書・発注書の作成につながることが挙げられます。
見積管理の重要性はスムーズな見積書の発行ができること、適正価格に沿った見積もりができること、過去の見積情報の蓄積ができることです。
見積管理の方法にはエクセルを利用する方法と、専門の見積管理システムを用いる方法もあります。
見積管理の際のポイントとして、属人化を防ぐこと、社内での情報共有の徹底を図ることが大切です。
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