見積書に有効期限はなぜ必要なのか?記載する目的を解説します

見積書に有効期限はなぜ必要なのか?記載する目的を解説します

建築業界では、同業者間の仕事依頼や法人顧客、個人客問わず、発注を検討する判断資料として見積書を提出します。
その際、有効期限を設定するのが基本です。

自社のフォーマットにあるからそのまま使っている、自社基準で○日と定められているから従っている方も多いかもしれません。

新入社員時代に先輩や上司から、必ず有効期限を載せるように指導された方も多いことでしょう。

ではなぜ、見積書に有効期限が必要なのでしょうか。
これまで当たり前のルールとして運用してきた方も納得して使える、記載する目的について解説していきます。

見積書とは

見積書は工事の発注をするか検討するにあたり、いくらでできるのか、予算に合致するかを判断するための資料です。
実際の契約に至るまでに、お互いの交渉や打ち合わせで金額が変更されることもあります。

一方、見積書の金額がそのまま契約金額として受注するケースも少なくありません。
また、見積額が見合わないと断られ、契約に至らないケースもあります。

会社が契約を獲得し、売上を上げていくうえでも、重要な判断ツールとなります。

見積もりを依頼する法人や個人客の多くは、1社だけで決めることはありません。
複数の業者から相見積もりを取り、比較検討するケースが多いです。

そのため、他社と比較されても、自社を選んで頂けるように工夫する必要があります。

見積書の記載事項

見積書に記載する事項は明確な決まりはありません。
多くの会社では、すでにフォーマットが作成されている場合や、自動計算ツールやソフトなどを用いて作成しているのではないでしょうか。
もし、これから自作でフォーマットを作成するのであれば、以下の項目を入れるようにしましょう。

タイトル

「見積書」または「御見積書」と表示します。

発行日

いつ作成したのか、いつの時点での見積内容なのかを明確にできます。

作成者の名称

会社名、部署名、担当者名を明記し、会社の住所や電話番号などの問い合わせ先を記載することも欠かせません。
相見積もりを取るケースも多いため、作成者の名称がないとどの企業のものかわからなくなります。

気になった時や契約したいと思った時にすぐに連絡をもらえるよう、連絡先も明記しましょう。

宛先

見積書を提出する顧客の名称を記載ししてください。
企業なら企業名と部署名、役職名、担当者名を、個人なら氏名を様付けで記載します。

見積書番号

見積書番号は必須ではありませんが、今後、相手の意向や要望を踏まえ、何通か見直す可能性もあります。
どれが最終的な見積もりか、顧客が問い合わせてきている見積もりがどの段階のものかが明確になるよう、1通ごとに個別の番号を割り振りましょう

そのうえで、自社で発行したのと同じ内容の見積書をデータなどで保管し、同じ番号を振って管理することが大切です。
番号を振っておくことで、担当者が不在の時や万が一退職してしまった時でも、ほかの担当者が対応しやすくなります。

件名

工事名称やプロジェクト名称などを記載します。
法人客なら、〇〇プロジェクトや××マンション大規模修繕工事などです。
個人客の場合、住宅外壁塗装一式など、相手に伝わりやすい具体的な工事名を記載しましょう。

施工開始予定日

すでに予定が決まっていれば具体的な日付を記載しますが、受注後○週間以内など、受注が入ってからどのくらいの期間で施工できるかを示す場合もあります。

施工場所

法人客なら貴社指定場所など、個人客なら〇〇様宅外壁、〇〇様宅キッチンなどです。

見積金額

まず、大きく見積もりの合計金額を記載します。

現行は消費税込み表示が基本ですが、税込金額と、本体金額、消費税額を記載する場合は項目を明記しましょう。

見積明細

見積もりの内訳を記載します。

工事の項目や資材費用などを単価、数量、それぞれの合計額を明確にします。

最終的には合計額で決めることも多いですが、何にいくらかかるのかを明記しておかないと、高いのか安いのかわからず信頼が得られません。
個人客は内訳を見てもわからず、合計金額だけで判断する方も多いですが、だからといって明細を書かないのは不親切であり不適正です。
法人客の場合は、明細を細かくチェックするのが基本ですので、単価や数量などの間違いがないように注意しましょう。

見積有効期限

見積書の有効期限を明記します。
「本見積提出後2週間」といった表記が基本です。
見積書の有効期限は、この金額で契約できる回答期限になります。

備考

補足事項があれば記載しておきましょう。

有効期限を記載する目的

見積書に有効期限を記載するのにはどのような目的があるのでしょうか。
見積もりを受け取る個人客の立場になると、そんなに急かさなくてもと不満に思うかもしれません。

法人客の場合も、急ぎの工事ではないし、稟議を回すのに時間がかかると思うこともあります。

なぜ、有効期限を設けるかは、大きく2つの目的があります。
1つは顧客に契約を促すためです。
もう1つは思わぬ価格変動リスクに備えるためです。

以下で詳しく確認していきましょう。

顧客に契約を促すため

顧客は法人であれ、個人であれ、工事を発注するか決めるにあたり費用が気になります。

工事は全般的に高額になるケースが多いため、費用がどのくらいかで、予算に合うかどうかが判断され、見積額によっては断念せざるを得ないケースもあります。

また、ほかの業者と比較検討しているケースも少なくありません。
契約を促すためには営業による交渉や勧誘という手段もありますが、顧客にとって大きな判断材料となるのが見積書です。

そのため、見積書を見たうえで、判断をくだしてもらう期限を設け、契約促進を図る心理的効果を与えます。
顧客側から見れば、急ぎではないからもっとゆっくり考えさせてと思うかもしれません。

ただ、費用が知りたかっただけのこともあるでしょう。
見積もりを依頼された側としては、顧客の心理まではわからないため、いつまでも宙ぶらりんの状態では困ります。

この取引条件でこの金額で契約できる期間はここまでと区切ることで、宙ぶらりんの状態に白黒をつけることが可能です。
条件が合えばすぐにでも契約の決断をしてくれる区切りにもなります。

価格変動に備えるため

建築業界では資材の価格や燃料費などの価格変動が意外に激しいです。

単価がわずかに上昇しただけでも、1回あたりの工事で使用する数量が多ければ、工事にかかる費用が大きく変動してしまいます。

また、近年では人材不足の影響で人件費も高騰傾向にあります。
回答が遅く、施工時期が遅くなった時期に人手不足で人材が集まらなければ、賃金を上げて人材を募らなければならないおそれも少なくありません。

近年では世界的な情勢の影響で、木材や鋼材の価格が高騰し、石油価格が高騰し、重機や車両を動かす燃料費なども高騰傾向にあります。
こうした変動が激しい時代においては、顧客が検討する期間に配慮したうえで、有効期限は短めに設定することも必要です。

有効期限を設定することで価格変動のリスクを抑え、赤字受注の回避が可能です。
なお、見積書に有効期限を設定すると、民法の規定により、作成者が自由に撤回できなくなります。
逆に有効期限が切れた見積書は効力を失い、その後に相手方が先の金額で契約したいといっても拒否することができ、赤字受注の回避が可能です。

見積書の有効期限はどれくらい?

業種や工事内容にもよりますが、2週間から6ヶ月程度が一般的です。
同業者からの依頼か、法人顧客か、個人か、どのような工事でどのくらいの規模かにもよります。

個人客で、リフォームなど少額の契約であれば、1ヶ月など余裕を持たせても良いでしょう。
一方、価格変動要因があり、金額の規模が大きな場合には、短めに設定するなどリスク対策も欠かせません。

有効期限を過ぎた場合

有効期限を過ぎても回答を得られなかった場合、その見積書は効力を失います。

その時点で、顧客から断りがなく、引き続き検討したいと希望された場合、見積書を作成し直さなくてはなりません。
相手方に対して、前回と同様の条件で見積を作成して良いかを確認してください。
また、原材料などの価格変動に伴い、同じ内容でお見積額が変更となる可能性があることを事前に了解を得ることが大切です。

事前に確認を取らないと、同じ内容なのに金額を上げられたと気分を害する場合や信頼できない会社だと、いわれのない批判を受けることになりかねません。

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まとめ

見積書とは契約を締結して工事を発注するかの判断材料となる、重要な資料です。

見積書の記載事項には金額の合計だけでなく、内訳や有効期限、作成者名などを明記します。

有効期限を記載する目的は顧客に契約を促すためと、価格変動に備えるための大きく2つです。

見積書の有効期限は2週間から6ヶ月が一般的ですが、経済情勢や工事の規模などを踏まえて調整するなど、リスク対策をしましょう。
有効期限を過ぎた場合は見積書の効力が失われます。
顧客が希望する場合、金額変更の可能性を伝えたうえで、再度新たに有効期限を設定し、新しい見積書を発行することが必要です。

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