企業の経営を維持するためには、適切な見積管理が欠かせません。
見積管理の方法は手計算やエクセルなど企業によって様々ですが、システムを活用することで、より効率的な見積管理を実現できます。
今回は、見積システムを導入するメリットや必要な機能、選び方などを詳しく解説します。
おすすめの見積システムもご紹介しますので、システムの導入を検討している方は、ぜひご参照ください。
見積システムとは
見積システムとは、見積管理や見積書の作成を行うシステムです。
過去の見積書を参照することができ、正確な見積書を簡単に作成することができます。
見積管理や見積書作成のツールとして、エクセルを活用している方も多いのではないでしょうか。
無料で使用でき、関数を使って計算をすることも可能であるため、手書きより効率的に見積業務を行うことができます。
しかし、
- 入力ミスが発生しやすい
- 属人化する可能性がある
- リアルタイムで共有することができない
など使いづらい部分もあります。
これらの課題を解決するのが、見積システムです。
以下では、見積管理の概要やエクセルでの見積管理の課題について、より詳しく確認しましょう。
見積管理とは
見積管理とは、見積内容や見積価格を管理し、適切な価格の見積を作成することです。
顧客に対しミスのない正確な見積書を提出するためには、非常に重要な業務だといえます。
見積管理の主な業務は、以下の通りです。
- 見積書の作成
- 見積書の申請・承認
- 適切な見積価格の割り出し
- 見積業務のルール・フローの共有
エクセルでの見積管理の課題
取引きを成功させ受注率を上げるためには、適切な見積管理が欠かせません。
以下では、エクセルで見積管理を行う場合に注意が必要な点について解説します。
リアルタイムでの共有が困難
エクセルで見積管理を行う場合、データをリアルタイムで共有することが困難です。
他の人が作業中の見積を開けない、保存し忘れる、などのトラブルが発生する可能性があります。
手書きよりは格段に効率的ですが、リアルタイムで共有できる見積システムに比べるとやや不便です。
エクセルで見積管理を行う場合は、こまめに保存し、作業後は迅速に共有するようにしましょう。
見積情報の一元管理が困難
営業担当ごとに見積を作成・管理すると、見積情報が断片化してしまいます。
過去に作成した見積や、別の担当者の案件のデータなどが参照できず、案件ごとに一から見積を作成することになってしまいます。
エクセルで担当者ごとに管理する場合は、見積情報の管理方法に工夫が必要です。
関連する見積情報を簡単に探し出せるような状態を整えておくとよいでしょう。
自動化やデータベース化が困難
エクセルは、OSやパソコンのバージョンに依存します。
そのため、入力や出力を自動化したり、データベース化したりすることが困難です。
また、エクセルを使いこなせるスキルのある人に業務が集中することも予想されます。
担当の引き継ぎやフォーマットの統一が難しい点もデメリットといえるでしょう。
エクセルでの見積管理に関する記事はこちら
見積システムのメリット
これまで、見積管理の主な業務や、エクセルでの見積管理の注意点について確認してきました。
誰もが簡単に、かつ効率的に見積業務を行うためには、見積システムを導入するのがおすすめです。
以下では、見積システムを導入するメリットを紹介します。
ペーパーレス化
見積システムを導入することで、見積書をメールで送付することができるようになります。
作成した見積書を印刷し、郵送したりFAXで送信する必要がなく、ペーパーレス化を実現できます。
見積書の保存や管理もシステム上で行うことができるので、紙の書類がかさばることもありません。
見積書を電子化するメリット!電子化する際のポイントも徹底解説効率化
見積システムは、入力項目があらかじめ設定されています。
そのため、エクセルで管理するときのように見積書のフォーマットを整えたり、テンプレートをダウンロードする必要がありません。
また、以前使用したデータを自動反映させる機能のあるシステムであれば、データ入力の手間が省けます。
作成した見積はリアルタイムで共有することができるため、効率的に見積業務を行うことができます。
正確な見積作成
見積システムは、データベースを利用するため、複数人で作業を行う場合でもデータの整合性を心配する必要がありません。
確認作業も容易になり、ミスを発見しやすくなります。
より正確な見積書を作成できるため、顧客からの信頼を得られるでしょう。
一元管理
見積システムは、過去に作成した見積書をデータで保存しておくことが可能です。
原価から粗利を算出できる機能が搭載されているシステムであれば、見積作成後の成約率や利益率なども分析することができます。
また、一元管理システムを導入すると、見積業務や利益分析に加え、顧客情報や原価情報、各種書類などをまとめて管理することができます。
問い合わせから受注までの動向を正確に把握することができ、受注率アップのために改善すべき点が明確になります。
見積システムに必要な機能
これまでに紹介した見積システムのメリットを十分に得るためには、それなりの機能が必要です。
以下では、見積システムに必要な機能を確認しましょう。
①見積書作成機能
見積書作成機能は、見積システムの基本機能であり、不可欠な機能です。
あらかじめ設定された基本項目にデータを入力するだけで、見積書を作成できます。
入力ミスや重複入力を探知するアシスト機能が搭載されたシステムであれば、確認の手間も省けます。
また、過去の見積内容を取り込んだり、エクセルデータをコピーして見積書を作成できるシステムもあります。
作成した見積書は、ワンクリックでPDF化でき、そのまま顧客に送付することが可能です。
見積書に記載が必要な項目は企業や取引内容によって異なりますが、一般的には以下の項目をおさえておくことが必要です。
- タイトル
- 見積番号
- 見積作成日
- 自社情報
- 担当者
- 宛名
- 見積合計金額(税抜/税額/税込み)
- 件名・取引内容
- 支払条件
- 見積有効期限
- 備考
- 見積明細
建築業の見積書
建築業の見積書には、以下の項目も付け加えると良いでしょう。
- 工事場所
- 予定工期
- 階層表示ができる見積明細
階層表示とは、見積明細をカテゴリごとに分類することです。
特に、規模の大きな見積の場合、どれがどの工事に関する明細なのか分からなくなります。
工事ごとに階層化することで、顧客が理解しやすい見積書が完成します。
【建築業】リフォーム工事の見積書の書き方を徹底解説!②承認フロー機能
作成した見積書は、決裁者の承認を得るのが一般的です。
クラウド型の見積システムを利用することで、場所や時間に関係なく承認業務を行うことができます。
役職や金額などに応じて承認フローを作成することもでき、承認作業をスムーズに行えるようになります。
③見積書保管機能
国税庁は、帳簿書類の保存期間について、以下のように定めています。
「法人は、帳簿を備え付けてその取引を記録するとともに、その帳簿と取引等に関して作成または受領した書類を、その事業年度の確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存しなければなりません。」
引用元:国税庁「帳簿書類等の保存期間」
また、電子帳簿保存法では、見積書の電子データを送付・受領した場合、その電子データを一定の要件を満たした形で保存することが義務付けられています。
保存要件に沿って、見積書を保管するようにしましょう。
多くの見積システムでは、作成した見積書は自動的にシステム上に保管されます。
印刷して紙でファイリングする必要がないため、保管のために必要なスペースや紙代を削減することができます。
④情報共有機能
見積システムの情報共有機能により、見積情報の共有がスムーズに行えます。
案件担当者が外出中であったり、退職した場合でも、別の社員による顧客対応が可能です。
また、見積に関するノウハウを社員同士で共有できるため、属人化が回避され、全体的なスキルアップにもつながります。
⑤マスタ管理
多くの見積システムには、マスタ管理の機能が搭載されています。
商品の分類や組み合わせを設定する商品マスタや、取引先の情報やランクを設定する取引先マスタなどのデータを一元で管理することができます。
各マスタから必要な情報を検索して見積書を作成できるため、入力ミスや重複入力を防ぐことが可能です。
⑥連携機能
見積システムには、顧客管理システムや営業支援ツールなどと連携可能な機能が搭載されています。
原価管理機能と連携できるシステムであれば、粗利分析が可能で、経営判断を下す際に役立てることができます。
また、顧客管理機能と連携することで、問い合わせから受注までの動向が明確になります。
見積書に関する記事はこちら
見積システムの種類
これまで見積システムの機能について確認してきました。
見積システムにはいくつかの種類があり、それぞれに特徴があります。
以下では、
- 専用型
- 販売管理・ERP一体型
- 建設業特化型
のそれぞれの概要をご紹介します。
専用型
専用型は、見積書作成に特化した見積システムです。
機能がシンプルで、簡単に操作できるため、ITツールに不慣れな場合でも気負わず利用できます。
販売管理・EPR型
販売管理・EPR一体型の場合、見積作成のほかに出荷管理や請求管理など部門間のやり取りを自動で行えます。
部門間の連携をスムーズにしたい場合におすすめの見積システムです。
建設業特化型
建築業特化型の見積システムは、積算業務を行うことが可能です。
積算とは、資材や人件費などを合計し、工事全体にかかる費用を算出することです。
システムによっては、見積書に現場写真や図面などの資料を紐づけたり、材料ごとの粗利率を算出したりできます。
EPRに関する記事はこちら
見積システムを選ぶポイント
ここまで、見積システムの機能や種類を確認してきました。
実際にシステムの導入を検討する際、何を基準に選ぶべきか迷う方も多いのではないでしょうか。
以下では、どのような点を重視して見積システムを導入するべきか、その基準を見ていきましょう。
クラウド型・インストール型
見積システムを導入する際、まず注意したいのがシステムの提供形態です。
見積システムに限らず、システムの提供形態には、
- クラウド型
- インストール型(オンプレミス型)
の2種類があります。
それぞれの特徴を確認し、自社に合う形態を選ぶようにしましょう。
CASE1
クラウド型
クラウド型は、インターネットがつながる環境であればいつでもどこでも利用できるのが特徴です。
データは外部サーバーに保存されるため、パソコンが故障してもデータが紛失することはありません。
しかし、毎月利用料を支払う必要があるため、ランニングコストを抑えたい企業にとってはデメリットといえるでしょう。
CASE2
インストール型
インストール型は、見積システムをパソコンにインストールして利用するタイプです。
ネット環境に影響を受けずに利用できるため、データ量の多い見積であっても処理速度が落ちにくいのが特徴です。
クラウド型のように、外出先やスマートフォンなどの別の端末からアクセスすることができません。
月額費用は発生しませんが、初期費用が高額で、ソフトのバージョンアップの際にも費用が発生します。
必要な機能が備わっているか
見積システムを選ぶ際は、自社に必要な機能が搭載されているか、という点にも注目すると良いでしょう。
自社に必要な機能を見極めるには、まず、自社の課題や効率化したい業務を明確にすることが重要です。
また、多機能であれば良いというわけでもありません。
実際には使わない機能が多いあまり操作が複雑になってしまい、うまく使いこなせないという可能性も考えられます。
自社の要望とシステム導入によって実現できることを比較し、適当なシステムを選びましょう。
カスタマイズ可能性
自社に適したシステムを選んだ場合でも、業務改善を図るなかで別システムとの連携や新機能の追加が必要になることがあります。
自由にカスタマイズできるシステムであれば、このような状況でもスムーズに対応できます。
また、帳票のカスタマイズができるかどうかも重要です。
見積書の書式は、提出先によってさまざまに異なります。
あらかじめ設定された書式をカスタマイズできるシステムを選ぶと良いでしょう。
セキュリティ機能
見積に関するあらゆる情報を管理するため、セキュリティ面にも注意が必要です。
見積システムに必要なセキュリティ機能は、主に以下の3つです。
- ログイン管理:パスワードポリシーの設定や、退社処理時のログイン制御が可能
- セッションタイムアウト:一定時間の操作がなければ自動的にログアウト状態になる
- 権限管理:ログインや操作の権限設定が可能
情報処理推進機構が掲載している「情報セキュリティ対策」に則した機能を搭載するシステムであれば、セキュリティ面は安心です。
情報処理推進機構「情報セキュリティ対策」インボイス制度への対応
インボイス制度に対応しているかどうかという点にも注意しましょう。
インボイス制度とは、2025年10月1日か導入予定の制度であり、適格請求書を交付、保存することで仕入額控除を受けられる仕組みです。
B to B 事業者や一人親方などの免税事業者の多い建築業者には、特に大きな影響を及ぼします。
インボイス制度に直接関係するのは見積書ではなく請求書ですが、一元管理システムの導入を検討する場合にはインボイス制度対応のシステムを選ぶようにしましょう。
インボイス制度に関する記事はこちら
おすすめの見積システム
以下では、おすすめの見積システムを5つご紹介します。 見積システムの機能や選ぶポイントとあわせて、システム導入時のご参考となりましたら幸いです。
アイピア
アイピアは、建築業・リフォーム業向けの一元管理システムです。
見積作成のほかにも、顧客情報や原価情報など工事に関する情報を一括で管理することができます。
建築業に必要な各種書類の作成が可能で、インボイス制度にも対応しています。
クラウド型のシステムなので、インターネットが利用できる環境であれば場所やデバイスを選ばずにアクセスすることができます。
特徴
- 様々な見積に対応
アイピアの見積は5階層まで対応しています。
このため、規模を問わずさまざまな工事の見積を作成することができます。 - 過去の見積を取り込める
過去に作成した見積を取り込んで、新たな見積書を作成することができます。
過去の見積は、案件名やキーワードなどで検索可能です。 - エクセルデータをコピーして見積作成可能
エクセルデータをコピーして見積を登録することができます。
また、CADからエクスポートしたエクセルなどでも対応可能です。 - 社内で単価を統一できる
アイピアでは、見積の単価をテンプレートとして作成することが可能です。
単価が統一されるため、担当者によって見積の単価が異なるといった事態を防ぐことができます。 - 使わない機能を非表示にできる
アイピアは、システムの操作感にもこだわっています。
使わない機能を非表示にできるため、画面が整理され、ストレスフリーに操作できます。 - カスタマイズに対応
アイピアは、集計データの作成や帳票カスタマイズなど、要望に合わせたカスタマイズに対応しています。
また、サポート体制も充実しているので、システム導入後も安心して利用することができます。
提供形態 | クラウド |
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参考価格 | ライトプラン:初期導入費用 120,000円、月額 10,000円 ベーシックプラン:初期導入費用 360,000円、月額 20,000円 プロフェッショナルプラン:初期導入費用 450,000円、月額 30,000円 (月額は5ユーザーまでの料金です) |
体験版 | 無料デモあり |
Sales Quote Assistant
Sales Quote Assistant は、あらゆる業種・業態で利用できる見積書作成WEBシステムです。
Sales Force Assistant シリーズと連携することで、より効率的に業務を行えます。
特徴
- 四則演算の設定が可能
- AI機能搭載により見積業務の精度アップ
- 作成した見積書を受注伝票に変換できる
- 過去の見積書の流用可能
- 言語の切り替え、タイムゾーンの設定が可能
提供形態 | インストール・クラウド |
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参考価格 | クラウド型:初期導入費用 50,000円、月額 580円(1ユーザー) インストール型:150,000円~(5ユーザー) |
体験版 | 無料体験あり(30日間) |
見積Rich
見積りRichは、見積書に加え、納品書や請求書の発行も可能なクラウドサービスです。
受注実績を分析し、受注見込みや受注率を割り出すなど、営業管理としても活用できます。
特徴
- 過去の見積書やテンプレートを流用できる
- 操作画面がシンプル
- 承認フローを実務に合わせて構築できる
- 商品・顧客マスタ機能が充実
- データベースを暗号化して管理
提供形態 | クラウド |
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参考価格 | 月額5,000円(5ユーザー)~ |
体験版 | 無料体験あり(2カ月間) |
ジョブカン見積/請求書
ジョブカン見積/請求書は、見積書・請求書をはじめ各種書類を作成できるクラウドサービスです。
会計や勤怠管理など、他のジョブカンシリーズとの連携が可能です。
特徴
- 見積書とは別に概算見積書の作成が可能
- 請求残高を期間ごと、企業ごとにレポートできる
- 各種書類のステータス管理が可能
- 電子帳簿保存法やインボイス制度に対応
- 契約後も無料でサポート
提供形態 | クラウド |
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参考価格 | 月額500円(1ユーザー)~ |
体験版 | 無料体験あり(30日間) |
スマイルワークス
スマイルワークスは、財務会計・販売管理・給与計算などのシステムを統合管理するクラウドEPRです。
様々な規模の販売管理に対応しています。
特徴
- 操作画面がわかりやすい
- 案件別の利益管理が可能
- EDI機能搭載
- 電子帳簿保存法に対応
- 販売管理機能のデータを財務会計機能に簡単に取り込める
提供形態 | クラウド |
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参考価格 | 初期導入費用 30,000円(5ユーザー) 販売ワークス、会計ワークス、給与ワークスそれぞれ月額10,000円~ |
体験版 | 申込の当月末まで無料 |
まとめ
本記事では、見積システムに必要な機能や選ぶポイントについてご紹介しました。
見積システムを導入することで、見積情報の一元管理が可能になり、正確な見積書を効率よく作成することができます。
今回紹介した5つのほかにも、見積システムは幅広く展開されており、搭載機能や費用、サポート体制は様々に異なります。
見積システムを導入する際は、自社の課題や要望を明確にし、適当な製品を選ぶようにしましょう。
弊社が提供する『アイピア』は、建築業・リフォーム業に特化した一元管理システムです。
見積管理はもちろん、顧客管理や工程管理など、建築業に必要な業務を効率的に行うことができます。
見積システムの導入をお考えの方は、ぜひ一度ご検討ください。
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