労務安全書類とは?保存期間や種類も知っておこう!

労務安全書類とは?保存期間や種類も知っておこう!

建設現場では危険な作業もあり、可能な限り安全な環境に整えるため、労務安全書類を作成しています。
簡単な書類ではなく、何枚もあり内容も複雑です。
初めて書類を記入する時には、わからない点も出てきて苦労するかもしれません。
こちらの記事では、労務安全書類について保存期間やどんな種類の書類があるのかなどを詳しく解説していきます。

労務安全書類とは

労務安全書類とはグリーンファイルとも呼ばれている書類で、安全に作業を行うためにも必須の書類です。
事前に工事の体制をどう進めていくのか、作業員の情報、作業内容の詳細を把握するために作られています。

労務安全書類を作成し、事前に綿密な計画を立て細かく把握することで、責任の所在を明確にすることができます。
また、管理者と作業員の関係性を書類へ記すことで、実際作業をしてくれる方の安全も守れます。

施工管理者になった場合は、現場に行くごとに労務安全書類が必要です。

労務安全書類作成の目的

労務安全書類作成の一番の目的は、作業員のミスによる事故防止です。
建設現場では簡単な作業ばかりではなく、大変で危険な場合もあります。
施工管理者には、こうした危険性から作業員を守り、安全に作業を進められる環境を整える義務があります。

作業現場員は様々であり、新人でこれから技術を覚える方と長年の経験がありベテランと言われるような方もいます。
特に新人の頃は、当たり前とされていることも、慣れていないためわからないケースもある為、そういった方も安全に作業できるようにしなければなりません。
またベテラン作業員の場合、慣れから思わぬミスが発生し、大きな事故につながることも考えられます。

これらのケースを事前に予防する為、周知のルールを労務安全書類に記載し可視化させることで、作業員に再認識させることが目的です。

労務安全書類の書式

労務安全書類は、必ずこの書式で書かなければいけないというような決まりはありません。
そのため、施工管理者になり現場へ行くと、その地域ごとに書き方が違うためとまどうこともあるでしょう。
書き慣れない労務安全書類の場合、すべて書き終わるのに時間がかかってしまうかもしれません。
特に独自の書式に書いてほしいと言ってくる現場でなければ、全国建設協会から出されている『全建統一様式』を利用しましょう。
必要な事項はすべて記載できますし、書き方に慣れたら徐々に早く作成できます。
しかし独自の労務安全書類が準備されている場合は、そこの元請企業の指示に従います。

ほかにも安全書類を電子化することも可能で、作成だけでなく、提出や管理もできるサイトがあります。
普段から用紙に自分の文字で記載していると、最初はすぐにパソコンだけで作成することに抵抗を感じてしまうかもしれません。
使い慣れないと、まずはサイトに利用方法から覚える手間もあります。
しかし、実際に使ってサイトの様式に慣れていくと、用紙に記入するよりも楽に感じてくるでしょう。
わざわざ帳票をパソコンに入力しなければならない手間もかかりません。

安全書類を電子化できるサイトを、『グリーンサイト』と呼びます。
下請会社も元請会社もパソコン上で、すべてのやりとりを迅速にできます。 書類の確認を行うだけでなく受領も可能です。
さらに、漏れがないのか自動でチェックしてくれる機能もあります。

最近では、地球のために資源を大切にしようという動きが企業でも高まっていますが、用紙を使わずにすべてパソコンの中で行うため、ペーパーレス化にも貢献できます。
会社としても用紙の費用を削減できますし、膨大な書類もコンパクトに管理が可能です。

一般社団法人 全国建設業協会HP

労務安全書類の保存期間

作業が終わったらからといって、労務安全書類はすぐに破棄してはいけません。
建設業法第31条の中でも、必要に応じて工事の状況や帳簿、物件の立ち入り検査ができることと定めています。
そのため、何かがあり書類を見せてほしいと言われた時にすぐ提出できるようにしておかなければなりません。

保管する期間も建設業法第40条の3で義務付けられていて、原則5年間となっています。 すべて5年間ではなく、書類によってはそれ以上の保管が必要なものもあります。
施工体系図や完成図書などは10年の保管が必要です。
労務安全書類を決められた年数保存していなかった場合は罰則もあります。
まずは保存しなければいけない期間を書類ごとに確認をし、見せてほしいと言われたらすぐに出せるようにしておきましょう。

労務安全書類の種類

労務安全書類の書類には、さまざまものがあり最初は把握するのが大変かもしれません。
しかし書類の種類が多いのは、危険な現場でも安全に作業をするためです。
安全を意識することが、作業員の命を守ることにつながります。
ここからは、どんな書類があるのか紹介していきます。

工事安全衛生計画書

工事の中には難しく危険な作業もあるため、綿密な計画が大切です。 工事安全衛生計画書は、どのような心がけをして作業を進めていくのか作成したものです。 事前に工事期間中どんなリスクがあるのか考え、どんな風に対策を採っていくのかすべての作業員に周知していきます。
何も考えなしに行動していたら、本来予測していたら防げた事故が起こってしまうかもしれません。
あらゆる危険を防ぐために、安全に向けての指導実施計画も行います。

新規入場時等教育実施報告書

現場にはさまざまな作業員が出入りしますので、新しく入場する一人ひとりに、安全衛生教育をする必要があります。
下請業者の作業員の中にも経験が豊富そうな方もいますが、現場ごとに環境は違うため、必ず新規入場時には説明をしましょう。
教育の機会がなかったため自己流で動かれてしまうと、大事故の原因になるかもしれません。
大変に感じてしまうかもしれませんが、説明をし理解しましたということで、作業員の直筆サインも必要になります。

安全ミーティング報告書

現場では大きな機械を使い重たい材料を動かしたり使用したりする必要があるため、危険と隣り合わせです。
危険だとわかりやすい部分だけでなく、あらゆる危険をな作業を洗い出しておかなければなりません。
万が一事故が起きてしまった場合にも、安全ミーティング報告書が証明書になります。 事前に危険を予知して、事故を起こさないことは重要です。

安全ミーティング報告書とは?記載方法を項目ごと徹底解説!

持込機械等(移動式クレーン/車両建設機械等)使用届

移動式クレーンなどは現場の作業で必要なものですが、無断で使用せず管理する使用届も必要です。
万が一のことが起こった時にもすぐ確認できるように、移動式クレーンは誰が運転するのか、氏名や必要な免許、資格なども細かく記入します。
本当に動かせる免許や資格を取得済みか確認も必要で、資格証のコピーをもらっておくと安心です。

持込機械等(電気工具/電気溶接機)使用届

持ち込みの機械だけでなく、使用する電気工具や電気溶接機も使用届が必要です。
使用届を出すことで、不備などもなく安全に使えると証明できます。
安全性を管理するためにも、必ず必要な書類です。

証明があることで、定期的に点検などをしていることも証明できます。
書類がない状態では勝手に使えないため、使用するとわかったら使用届を出しましょう。

工事・通勤用車両届

現場にはさまざまなものが運ばれてくるため、出入りする車両も多いです。
そのため、トラックや生コン車はもちろんですが、ほかにも通勤用の車なども記載する必要が出てくる場合もあります。
通勤用の車に関しては、現場によって要求が変わってきます。
書類に記載してほしいとあれば、すべて記載が必要です。
実際現場で仕事を行う際には、ある時間にだけ集中しないよう出入りする車を管理します。

火気使用届

工事現場では溶接も行うため火を利用しますが、使う時には申請を出します。
現場はどこでどのような種類の火気を利用するのかを記入して届け出をしなければなりません。
火災などにつながれば大変ですので、火気使用届は重要な書類です。
元請けも、いつ火を使った作業をしなければならないのか把握しなければならないため、必ず作業日なども記入して使います。

有機溶剤・特定化学物質等持込使用届

危険物や有害物を使用する時にも安全に考慮しなければならないため、届け出の提出が必要です。
どんな材料を使用するのか、有機溶剤・特定化学物質などの材料名を申請します。
申請をした日であればいつでも使えるとは限らず、作業の時間が決められているケースも多いです。
作業をする前にチェックしておきましょう。

施工体制台帳関係

建設業ではさまざまな企業が出入りし、作業員も多数います。
工事を行う会社の構成を管理するために、施工体制台帳関係の安全書類を作成する必要があります。

施工体制台帳作成通知書

工事を請け負ってくれる1次下請けの企業に対して、施工体制台帳作成通知書を元請けの企業が作成します。
必ずしもすべての建設工事で作成しなければならないわけではありませんが、施工体制台帳作成通知書が必要な場合は交付しなければなりません。
決まりとして、公共工事や下請下請負契約の総額が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上の工事の場合は、施工体制台帳作成通知書が必要です。

施工体制台帳

特定の工事が決まり、そこに携わる元請けから下請業者すべての会社の情報をまとめた書類を施工体制台帳と言います。
何かあった時にも工事に関わるすべての会社の情報が必要になります。
ある会社については情報を把握していて、別の会社についてはよくわかっていないでは済まされません。
関わった会社の情報を調べなければならない時も、施工体制台帳があれば一発でわかります。
用紙の左側に元請業者の情報、右側には下請会社の情報を載せます。

下請負業者編成表

建設現場では、さまざまな工事が行われています。
工事をどこの会社が請け負っているのか、しっかりと把握していくのも重要です。
そのため、事前に下請業者編成表を作成して明確にします。
用紙はA4用紙縦1枚を使って、下請業者の情報を記載していきます。

施工体系図

現場ではさまざまな箇所をそれぞれ違う下請負人が担当するため、把握しておかなければなりません。
何かがあって確かめたい時にも、事前に下請負人がどの施工部分を担当するのかわかっておくと便利です。
わざわざ別の書類から誰が担当したのか調べなくても、施工体系図があればすぐに確認できます。
様式はA3用紙横1枚で、施工分担関係をまとめます。

再下請通知書(変更届)

元請けから1次下請だけで作業が終わる時ばかりではありません。
中には、1次下請からさらに下請けを申請しなければいけない時もあります。
勝手に頼んでいて、後からトラブルがあった時に把握していないでは混乱してしまいます。
事前に1次下請がさらに下請けへと仕事を頼んでいる場合は、その事実を把握して再下請通知書(変更届)を作らなければなりません。
しっかりと確認しておき、さらに下請けの別の会社に頼む場合は申告してもらい情報を記載しておきましょう。
用紙はA3用紙横1枚を使います。
左側には自社の情報、右側には下請会社の情報を載せます。

外国人建設就労者現場入場届書

現場仕事では、日本人ばかりが働いているわけではありません。
外国人建設就労者も増えていますので、現場で働いてくれる外国人を管理するための安全書類も必要となります。
一見外国人を管理するだけの書類にも見えますが、下請けとなった会社も外国人労働者の受け入れ体制が整っているのかどうかも確認できます。
こちらも外国人が安全に働いてもらうため、必ず必要な書類です。
用紙はA4用紙縦1枚を使い、情報を書いていきます。

作業員名簿

安全に作業を行うため、作業員がどんな人でいつ現場に入っているのか把握することが重要です。
そこで、安全書類でもある作業員名簿を使います。
記入する項目も多く、正直慣れないと大変な作業に感じてしまうでしょう。
いつ誰がどこで働くのか、作業員の氏名だけでなく住所も把握記載しなければなりません。
必要に応じては本当のその機械を扱っても良い人物なのか、資格証明書を提出してもらいコピーも必要となります。
用紙はA3用紙横1枚を使い、作業員の情報を漏れなくしっかりと記載していきます。

建設業向けシステム「アイピア」

建築業向け(リフォーム・工務店)管理システム アイピア

アイピアは建築業に特化した一元管理システムであり、顧客情報、見積情報、原価情報、発注情報など工事に関する情報を一括で管理できるため、情報集約の手間が削減されます。
さらに、アイピアはクラウドシステム。外出先からでも作成・変更・確認ができます。

まとめ

労務安全書類を作成しなければならないと思うと大変かもしれませんが、作業員が安全に事故なく働くために重要な書類です。
簡単な用紙ではなく、施工関係や労務関係などあらゆる書類があり記入するのは大変です。
さらに、機械を使用する度に何をいつ使うのか提出も必要で、手間に感じるでしょう。
しかし、万が一何かあった時にも、しっかりと安全対策をしていたという証拠にもなります。
安全書類の書式は決まったものはないのですが、元請けの会社によっては準備されている場合もあります。
何もなければ、ペーパーレスで便利なグリーンサイトもおすすめです。

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