施工体系図とは?書き方と作成のポイントについて徹底解説

施工体系図とは?書き方と作成のポイントについて徹底解説

発注者から工事を請け負った特定建設業者は、施工体制台帳と合わせて施工体系図を作成することで、各下請負人の施工分担関係が一目でわかるようにすることが建設業法により義務付けられています。
今回は、この施工体系図を作成する際の書き方やポイントについて解説していきます。

施工体系図とは

施工体系図とは、作成された施工体制台帳や再下請負通知書にもとづき、各下請負人の施工分担関係が一目でわかるようにした図を指しており、元請業者(発注者から直接建設工事を請け負った建設業者)によって作成されています。
施工体系図を見ることによって、工事に関わるすべての関係者の施工分担関係を把握することができるようになっています。

施工体系図の目的

施工体系図を作成するのは、以下の3つのような目的があります。

  • 下請業者も含めたすべての工事関係者が建設工事の施工体制を把握するため
  • 建設工事の施工に対する責任の所在と工事現場における役割分担を明確にするため
  • 主任技術者、専門技術者の適切な配置を確認するため

作成義務はあるのか

施工体系図はすべての工事において作成する必要があるのですが、それは法で定められた義務にあたるのでしょうか。
実は施工体系図の作成義務があるのは、建築業法によって定められた以下のケースのみ義務があります。

  • 発注者から直接民間工事を請け負った特定建設業者が当該工事に関して締結した下請金額の総額が4,000万円(建築一式工事6,000万円)以上となる場合
  • 公共工事発注者から平成27年4月1日以降に直接建設工事を請け負った建設業者が当該工事に関して、下請契約を締結した場合

以上のケースに該当する工事の場合は、作成の義務がありますので必ず作成しなければなりません。
公共工事については、基本的に現時点ではすべての公共工事において作成の義務があるということになります。
万が一作成を怠ったという場合は、法律違反で罰則を受ける可能性もありますので注意しましょう。

施工体系図の書き方

施行体系図は、どのように作成していけば良いのでしょうか。

施行体系図とは、1次、2次下請けまでを含めて工事に関わるすべての建設業者がどのような役割分担で施工をするのかを一目でわかるようなものにしなければならないことから、樹形図を使って作成されていきます。
また、施行体系図は再下請負通知書や下請負業者編成表と記載内容がほとんど同じであることから、それらをすでに作成してあるという場合は参考にして作成していくという方法もおすすめです。
さらに、施工体系図は建設業法において特に様式が定められているということはありませんが、記載する内容については一部建設業法によって定められた記載事項があります。

ここでは、一般的に用いられる施工体系図の書き方についてご紹介していきましょう。
施工体系図は、大きく分類して現場に関する項目、元請けに関する項目、下請けに関する項目に分けられ、記載していきます。

現場に関する項目

まず、施工体系図の上部に記載する現場に関する項目について解説していきます。

工事の名称

元請業者が担当する工事名称を記載します。

発注者名

工事の発注者の名称を記載します。

工期

作成建設業者が発注者と締結した契約書に記載されている工期を記載します。
この時、「自」の欄には工事開始日を記載し、「至」の欄には工事完了日を記載していきます。

元請に関する項目

次に、施工体系図における元請けに関する項目について解説していきます。

元請業者名

工事を担当する元請業者名を記載します。
また、建設キャリアアップシステムに登録している場合は、事業者IDもあわせて記載しましょう。

監督員名

発注者から通知された監督員名をフルネームで記載していきます。

主任技術者・監理技術者名

主任技術者と監理技術者の名前をフルネームで記載します。
下請負人が建設業の許可を受けていない場合は、下請負人に関する主任技術者について記載する必要はありません。

専門技術者名・担当工事内容

自社が担当する工事に携わる際に、内容によっては別の専門工事が発生して自社で直接施工しなければならないケースもあります。
このような場合に現場ごと、担当する業種ごとで専門技術者を配置する必要があるのです。
この専門技術者は、主任技術者の条件を満たしている必要があります。
下請負人が建設業の許可を受けていない場合は記載の必要はありません。
担当工事内容は発生した専門工事の内容を記載します。

下請に関する項目

施行体系図における下請に関する項目について解説していきます。

下請業者名

こちらには下請業者名を記載します。

工事名

工事の名称を記載します。

工期

自社の工事内容に必要となる工期を記載していきます。

主任技術者

主任技術者の名前を記載します。
主任技術者は、現場の技術的管理を担当する人物であり、一定の条件を満たしている必要があるのです。
公共性のある重要な工事において、元請けとの契約額が3,500万円以上(建築一式工事の場合は7,000万円以上)の場合は専任として現場に常駐する必要があります。

元方安全衛生管理者

元方安全衛生責任者の名前をフルネームで記載します。
元方安全衛生責任者は、統括安全衛生責任者が選任される事務所に置かれ、技術的事項の管理や統括安全衛生責任者の補佐を担う者を指します。

会長:統括安全衛生責任者

元請業者の統括安全衛生責任者の名前を記載します。
統括安全衛生責任者とは、下請業者を含めて労働者が常時50人以上就労する作業所において、元請業者が選任するものです。

副会長

元請業者以外の下請けから選出された人の名前をフルネームで記載します。
共同企業体では、企業体を形成している事業者の名前を記載します。

掲示方法

施工体系図は、建設業法でも定められているように、工事期間中は施行体系図を作成して見やすい場所に必ず掲示しておかなければならないと定められています。

第一項の特定建設業者は、国土交通省令で定めるところにより、当該建設工事における各下請負人の施工の分担関係を表示した施工体系図を作成し、これを当該工事現場の見やすい場所に掲げなければならない。

引用元:建設業法第二十四条の八

そのため、工事現場では施行体系図が掲示されているのをご覧になったことがある方もいらっしゃることでしょう。

現場に掲示する施工体系図についてはあらゆる掲示方法がありますが、一般的には、専用のケースを仮囲いやその仮囲いに作っている掲示板に貼り付けたり、エクセルなどで作成した施工体系図をプリントアウトして掲示したり、専用のケースに入れて掲示する方法があります。
新たに下請業者を追加する場合や別の下請業者に変更する場合など下請業者に何かしら変更があった場合は、相違がないように速やかに施工体系図の表示を変更しなければなりません。

掲示場所

施工体系図の掲示場所については、工事が民間工事であるか公共工事であるかによって場所が異なります。
まず民間工事については、工事関係者が見やすい場所に掲示しなければならないと建設業法第24条の7第4項により定められているのです。
また、公共工事の場合は現場の工事関係者が見やすい場所および公衆が見やすい場所に掲示しなければならないことが、公共工事入札契約適正化法第15条第1項において定められています。

保管期間

建設業界において発生する書類は、ほとんどの書類が建設業法により保存期間が定められています。
建設業法では、「国土交通大臣と都道府県知事は、必要に応じて建設業者の財産、工事の状況、帳簿書類、その他の物件を検査させることができる」と定められていますので、もしこの際に書類が用意できないと罰金などの罰則を受ける可能性があるのです。

施行体系図は、完成図や工事内容に関する発注者との打ち合わせ記録と同じ「営業に関する図書」であり、営業所ごとに引き渡しから10年間の保存をすることが、建設業法施行規則第26条第5項にて義務付けられています。
そのため、工事が終わったからといってすぐに処分してしまうのではなく、10年間は必ず大切に保管しておくように注意しましょう。

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まとめ

このように、施工体系図は工事に関わる関係者の施工役割分担を明確にし、施工体制を把握することができるものです。
民間工事においては義務でない場合もほとんどのケースで作成されます。
今回ご紹介した書き方でもうまく作成できない場合でも、近年はインターネット上で施工体系図のテンプレートが提供されていることもありますので、こういったものを活用されて作成されるのも良いでしょう。

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