施工体制台帳とは?書き方も含めて解説!

施工体制台帳とは?書き方も含めて解説!

施工体制台帳がとても重要な書類だということは、すでにご存知でしょう。
元請業者の情報はもちろんのこと、基本的に工事に関わるすべての請負業者の名称、施工範囲、担当技術者氏名などが記載された書類です。

大きな工事ではたくさんの会社が協同し、それぞれ責任の範疇があるため、あらかじめ関係性は明確にしておかなければなりません。
そのために欠かせないグリーンファイル=安全確認書類の一つが施工体制台帳です。

施工体制台帳にはさまざまなフォーマットがありますが、ここでは代表的なフォーマットである『全建統一様式 第3号』を基準として詳しく解説していきます。

施工体制台帳とは

施工体制台帳は、グリーンファイルの一つです。
基本的にすべての工事で必要とされる書類であり、元請業者はもちろん、工事に関わる下請けまですべての会社の情報と関係性が記されている必要があります。
作成するのは元請業者ですが、下請けにも情報提供のための提出書類があるため、内容は把握しておきましょう。
また、台帳には保存期間が定められており、施工物を発注者に引き渡してから5年間保存と決められています。
いかなる工事でも作成は必須ですが、すべての工事になんらかの提出義務があるわけではありません。
提出義務が定められているのは公共工事のみであり、そのほかは発注者から請求があれば提示するという形になっています。

目的

施工体制台帳がどうして必要かといえば、あらゆる工事において施工責任がどこにあるかをハッキリさせるために尽きます。
あってはならないことですが、万が一、工事において何かのトラブルが発生した際、どういった業者のどういった工事に要因があるかは明確にしなければなりません。
施工体制台帳を見れば、工事に関わるすべての業者がわかりますし、施工範囲も責任者名も一目でわかります。
こうしたことで、建設業法違反が起こらないようにする防止策にもなるでしょう。

この責任は、施工物を発注者に引き渡した後にも継続するため、保管義務があります。
この書類があれば、万が一引き渡し後になんらかの不具合が見つかった場合でも、責任がどこにあるかをすぐに把握することが可能だからです。
公共工事はもちろんですが、民間工事でも責任体制の徹底は欠かせません。
社会保険への加入状況なども記載されますので、現場で働く人たちを守る機能もあると言えるでしょう。

施工体制台帳が必要な工事

施工体制台帳はすべての工事で作らなければならない書類であり、そのことは建設業法 第24条の8に定めがあります。
ただし、公共工事と民間工事とでは少々内容が異なるため、その点を把握しておきましょう。

公共工事に関する定め

施工体制台帳は必ず作成し、発注者へ写しを提出する義務があります。
提出のタイミングは、元請が施工に下請契約を締結したタイミングとなります。
保管義務は、引き渡し後5年間です。

民間工事(公共工事以外)の建設工事に関する定め

工事の規模によって義務が生じます。
元請が施工総額4,000万円(建築一式工事は6,000万円)以上の施工に下請契約を締結した場合は、作成義務が発生します。
ただし、公共工事のような発注者への提出義務はなく、発注者側から請求があった時に閲覧できる状態にしておく義務があるのみです。
保管義務に関しては公共工事と同じく、引き渡し後5年間です。

施工体制台帳の書き方

それでは、施工体制台帳の具体的な書き方について解説します。
ここでは一般的に広く使われている、国土交通省のフォーマット『全建統一様式 第3号』を基準として見ていきましょう。
記入すべき項目は全部で13あり、間違いのないよう記入していくのはなかなか大変です。
また、指定の添付書類も用意しなければなりませんので、一つひとつ見ていきます。

記入項目

作成するのは元請ですので、必要な情報や書類は下請けから再下請負通知書を提出してもらい、それを見ながら間違いのないように記入してください。
名称や住所、責任者氏名などに誤字脱字のないよう注意が必要です。

会社名・事業所名

ここに記入する会社や事業所は、元請負人と下請負人の両方です。
略称ではなく正式名称で書きましょう。
住所や連絡先は所在となりますので、間違いなく明示してください。

工事名・工事内容・工期

該当する工事がどの工事かを明確にします。

特に注意が必要なのは工事名で、普段の会話で使っている仮称や呼称などを書いてしまわないようにしてください。
請負契約書を見て、誤字脱字のないよう、正式名称を記入します。
工事内容は責任範疇になるため、正確に書くことが重要です。

ここでいう工期は、着工から竣工までとなります。
こちらも契約書に明示されているものを間違いなく記入しましょう。
添付する再下請負通知書に記載する工期は、工事着手時期と工事完成時期となります。

建設業の許可

建設業の許可は、元請がその時点で持っているすべての建設業許可について記入する必要があります。
該当する工事に関係するものだけで良いのではと勘違いしがちですが、関係がないとしてもすべて記入しましょう。
ただし、ここに関しては略語でも問題はありません。
添付する再下請負通知書には、許可番号も併記します。
特定建設業許可と一般建設業許可とに分けて書くことも忘れないようにしましょう。

発注者

発注者の項目には、該当する工事の発注元の氏名と住所を記入します。
基本的に、請負契約書を見ながらそのまま記入すれば間違いはないでしょう。
こちらは公共工事でも民間工事でも同じです。

商号と住所、担当者の氏名なども記載しますが、個人事業主の場合は代表者氏名だけあれば、屋号はなくて構いません。
添付する再下請負通知書では、発注者ではなく注文者という表記になります。

契約営業所

契約営業所は、実際に工事をする営業所と理解しましょう。
支店や営業所が複数の箇所にある元請の場合、工事を請け負うところと工事を実施するところが変わるケースがあるため、この項目が設けられています。

たとえば、本部が工事を請け負い、実際の工事は現場に近い各エリアの営業所が行うというケースもあるでしょう。
もちろんそれは問題ありませんが、契約の形としては、工事を実施する営業所が本部の下請けに入ることになるため、その関係性を明確にするための項目です。
本部と営業所とで下請契約を締結することになるため、契約日と契約営業所名を間違いなく記入しましょう。

発注者の監督員名・権限

発注者側の情報ですので、発注者から情報を受け取って間違いのないように記入が必要です。
監督員名はフルネームで記入します。
権限は工事請負契約書に載っていますので、記載条文番号を記入すれば問題ありません。

現場代理人名・権限

現場代理人は元請が現場に置く代表者ですが、このポストの選任は民間工事の場合、法的規制はなく任意です。
ただし、公共工事では必須です。
民間工事では建設現場ごとに現場代理人を配置する義務はありませんが、置く場合はその人員の氏名をフルネームで記入してください。

配置しない場合は配置なし、もしくは空欄のままで構いません。
権限及び意見申し出方法の項目には、請負契約書の条項の通りであるということを記入するのが一般的です。

監督員名・権限

監督員というのは、元請が下請けに対して配置する人員です。
こちらも現場代理人同様、民間工事では配置する義務はなく任意です。
公共工事の場合は必須となります。
配置する場合はフルネームで、配置しない場合は配置なし、または空欄のままで問題ありません。
権限及び意見申し出方法の項目には、請負契約書の条項の通りであるということを記入するというのが一般的です。

監理技術者・主任技術者名

主任技術者は施工の技術監督で、建設業法で配置が義務付けられています。
監理技術者は、請負金額4,000万円以上(建築一式工事6,000万円以上)の工事の場合、主任技術者に代わって配置が義務付けられています。
該当する人員のフルネームを間違いなく記入してください。
また、工事の規模に応じて有資格者を選任し、保有資格と専任・非専任も明記します。

専門技術者名・担当工事の内容

専門技術者は、専門工事が500万円以上の工事に対し、元請が現場ごと・担当業種ごとに配置する義務があります。
ただ、専門技術者は主任技術者の条件を満たす必要があるため、元請の監理技術者や主任技術者が該当するなら兼任することも可能です。
配置が必要な工事であれば、担当者氏名と保有資格、担当工事の内容を記入してください。

問題は自社で人員を確保できない場合ですが、その際は、その専門工事について建設業許可を受けている専門工事業者に下請けに出すことになります。
いずれにせよ建設業法で定めがありますので、該当する工事があれば漏れなく記入してください。

資格の種類

現場に配置が義務付けられている責任者については必要な資格があります。
前の項目でもありましたが、監理技術者や主任技術者、専門技術者の資格の種類は、建設業法に基づき定められていますので、該当する資格を明記しましょう。

  • 監理技術者:指定建設業7業種の1級国家資格
  • 主任技術者:技能検定1級または技術検定2級、学歴、実務経験・指導監督的実務経験の両方

資格が経験年数によるものである場合の書き方は、「高校卒(土木学科)5年以上の実務経験」などという書き方で問題ありません。

外国人技能実習生・建設就労者の状況

外国人技能実習生や建設就労者は、該当する施工に関係する予定があるかどうかで記入します。
元請だけでなく下請けに関係する場合にも必要な項目で、施工に関わる予定があるなら有、予定がないなら無に丸を付けてください。
また、ここで言う外国人建設就労者には以下のパターンがあります。

  • 国内で建設技能実習を修了し、引き続き国内に在留する者
  • 国内で建設技能実習を修了し、一旦本国へ帰国した後で、再入国する者
  • 一号特定技能外国人

一号特定技能外国人は、特定の産業分野で専門知識や経験を持つことで、在留資格を与えられた外国人のことです。
該当する施工に関係する予定があるか、こちらも有・無のどちらかを丸で囲んでください。

健康保険などの加入状況

施工において、労働環境を守り作業員を保護するために必要な項目です。
この項目は、公共工事では発注者となる自治体が元請の管理責任をチェックするためにも設けられています。
健康保険・厚生年金保険・雇用保険について、事業所整理番号と事業所番号を記入してください。

添付書類

施工体制台帳には、たくさんの添付書類が必要です。
この添付書類も建設業法できちんと定められている重要書類ですので、漏れのないようにしましょう。
二次以下の下請業者を入れる際には、再下請通知書と再下請業者との契約書の写しが必要です。
また、主な添付書類は、工事担当技術者台帳、請負契約書の写し、元請業者と請負業者の契約書の写しなどのほか資格を証明する書類などもあり、非常に機密性の高いものです。

個人情報としても非常に高度なため、下請けなどから提出を受けた際にも、取り扱いには十分に注意してください。
主任技術者や監理技術者を配置する場合、各人員が元請に雇用されていることを証明するために、健康保険証の写しも必要となります。

作成ツール

施工体制台帳は非常に重要な書類であり項目も多いですが、間違いがあってはなりません。
個人情報や機密情報を含むため、作成にも管理にも十分に注意が必要です。
どのようなツールで作成すれば良いでしょうか。

エクセル

エクセル形式の書式がダウンロードできるサイトなどもありますが、全建統一様式は法令の変更に伴い、定期的に様式が改訂や補訂されている場合があります。
法令に準拠されたものになっているか注意が必要ですし、すべて作成した後から出し直しなどにならないよう細心の注意を払いましょう。

システム

グリーンファイル全般を電子化して効率化しているシステムが提供されています。
全建統一様式の書式を採用し、最新の法令にも準拠しているので安心ですし、使い勝手もエクセルと同じ感覚で直感的に利用可能です。
こうしたシステムは多くの元請業者がすでに導入し、現場でスムーズに活用されています。
施工体制台帳の作成だけでなく、グリーンファイル全般の作成に手間を取られているなら、ぜひ一度検討してみてください。

施工系台帳にも対応!『建築業向け施工管理システム アイピア』

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まとめ

施工体制台帳は、いかなる建設工事でも必須となる重要書類です。
規模や発注者で規定が変わる場合はありますが、国土交通省のテンプレートや各自治体の指示通り作成し、添付書類も揃える必要があります。
管理する立場にある人は、間違いのない工事を行うために施工体制台帳の正しい作成法をしっかりマスターし、適切に業務を行いましょう。
便利に使えるシステムがおすすめです。

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