工事に携わる人々は常に危険を避けながら、安全に対する意識を持って仕事に臨まなければいけません。
小さな油断が大きな事故を招く可能性があります。こうした事態を防ぐには訓練が必要でしょう。
一朝一夕で安全意識が身につくとは限りません。
そのため、工事を行う前に適切な安全教育を行うことが必要になります。
新規入場時等教育実施報告書とは?
工事を行うにあたっては元請業者だけでは人員は足らないことが多々あります。
そのため、下請業者と連携しながら人材を補わなければいけません。
しかし元請業者の間で決められている約束事をすぐに下請業者が理解できるとは限りません。
特に安全に関するルールはしっかりと周知する必要があります。
こうしたことを踏まえて、日本では工事を行う際に元請業者は下請業者に対して安全教育を行わなければいけないという義務が定められています。
とはいえ、ただ単に安全教育を行えば良いというものでもないです。
この作業員は事前に安全教育を受けましたという証明書がなければ工事は行えません。
もしこうした証明書を作らないまま工事を行ってしまうと、場合によっては安全教育を受けていない人が現場に紛れ込んでしまいかねないでしょう。
そうなると事故のリスクは高まってしまいます。
そして、こうした証明書のことを新規入場時等教育実施報告書と言います。
新規入場時等教育実施報告書の記入方法
新規入場時等教育実施報告書の概略についてはわかったものの、いざ現場で使うとなったらどう作れば良いのかわからない人もいるかもしれません。
そこで、ここからはどのように新規入場時等教育実施報告書を記載していけば良いかを説明していきます。
欄外部の記入項目
新規入場時等教育実施報告書については、法律などで決められたフォーマットはありません。
もっとも、全国建設業協会ではどの会社もすぐに書類を作れるようにとフォーマットを配布しています。
今回はそのフォーマットに従って記入方法を見ていくことにしましょう。
フォーマットでは欄外部の項目と欄内部の項目に分けられています。
まずは欄外部について確認していきます。
日付
どんな書類においても日付は欠かせません。
もっとも、ここで書くべき日付については間違えてはいけません。
安全教育を行った日だったり、書類を作成した日を書いてしまうケースが良く見られます。
正しくは提出日なのでくれぐれも注意しましょう。
事業所名
ここで、書く事業所についても迷ってしまうでしょう。
ここでは工事の結果できる建物の名前を書きます。
安全教育を実施した会社や安全教育を受けた会社の名前の記載は間違いであるため、注意しましょう。
たとえば、Aという会社の社屋を作るならばA社社屋工事と書かなければいけません。
所長名
所長についても、誰を書けば良いのかややこしいところです。
結論から言うと、工事現場の所長の名前を書くようにしましょう。
発注会社の社長や下請会社の社長の名前を書いてはいけません。
会社名
ここで書くべきなのは下請会社の名前です。
現場代理人
工事現場においては、発注者との交渉を行いながら作業を進めるケースがあります。
とはいえ、元請業者の社長や下請会社の社長がその都度現場を訪れるのは合理的ではありません。
現場のことは現場に常に携わっている人間のほうが詳しいです。
発注者との交渉も現場の責任者が行ったほうが良いでしょう。
こうした会社の経営者に代わって現場の監督や交渉を行う人のことを現場代理人と呼びます。
一般的には元請会社側の責任者が現場代理人を務めることが多いです。
欄内部分の記入項目
欄内部分については、安全教育をいつ行ったのか、どのように行ったのか、といったことを記入していきます。
教育の種類
全国建設業協会のフォーマットでは3つ、もしくは4つの項目が用意されています。
どれか一つに丸を付けなければいけませんが、下請けの作業員に教育を施す場合は「新規入場時」に丸を付けるのが望ましいです。
実施日時
ここでは、安全教育を実施した日付といつからいつまでに終わらせたかといった時間を書かなければいけません。
月日だけでなく何年に実施したかも忘れずに記載しましょう。
実施場所
実施した場所を詳しく書くようにしましょう。
漠然と「自社」などと書くのではなく、会議室で行ったのか、それとも教育室で行ったのか、といったことを詳細に書かなければいけません。
教育方法
安全教育と一口にいってもいろいろな方法があります。
書籍を使って教育する場合もあれば、映像などを見せて教育する場合もあるでしょう。
ここには、どんな教材を使って教育したかを記入してください。
教育内容
どんな教育を行ったかを一つひとつ書いていく項目です。
「安全規則の確認を行った」「安全意識を高めるためにこのようなことを確認した」等の内容を書いていきましょう。
教育意識の高さを問われる項目ですから、書き漏らさないようにすべて記入しなければいけません。
講師
教育を担当した講師の名前を書く項目です。
もっとも、所長名や現場代理人などと違って、名前だけで良いというものではありません。
所属している会社の名前やどんな仕事を担当しているか、といったことまで細かく書くようにしましょう。
受講者氏名
受講者の名前を全員分記載する項目です。
もしここで、受講生の名前を一人でも書き漏らしてしまうと問題になりかねません。
もっとも、工事の規模によっては枠をはみ出してしまうほどの数になってしまうケースも多々あります。
その場合は、もう1枚用紙を設けてそこに受講者の名前をすべて書きましょう。
資料
実際に安全教育で教材として用いた資料の名前を記入する項目です。
「書籍」や「DVD」などと漠然と書くのではなく、書籍の名前やDVDの名前などを正確に記入しなくてはいけません。
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まとめ
安全意識を高めるためには、日々の積み重ねが大切になります。
日頃から細かな作業を綿密に行うことで注意力が養われ、人的ミスが減るようになるでしょう。
新規入場時等教育実施報告書の作成もその一つです。
新規入場時等教育報告書の記載すべき項目は多岐にわたるので、ついつい面倒くさがって疎かにしてしまいがちです。
もっとも、ここで一つひとつの項目をミスなく書くことで安全意識の向上につながっていきます。