安全衛生経費とは?適切な確保の方法について解説します

安全衛生経費とは?適切な確保の方法について解説します

工事は時に危険を伴うものです。
できれば、こうした危険は未然に取り除いたほうが良いでしょう。
作業員全員が安全に工事を行えるような環境を整えるためのかける費用として、安全衛生経費があります。
今回は、この安全衛生経費とは何かを詳しく解説していきます。

安全衛生経費とは?

工事を行ううえではさまざまな費用がかかります。
工事に必要な木材や鉄材を揃えるための材料費や作業員や警備員に支払うための人件費などはもちろん必須でしょう。
そのほか、トラックを動かすためのガソリン代は輸送費に含まれるでしょうし、作業期間中の光熱費なども用意しなければいけません。
このように、工事は何かとお金がかかりますが、それ以上に重要なのは作業員の安全を守るためにかけるコストです。

誰もが危険な環境では働きたくないでしょう。
安心して働ける環境でこそ仕事のクオリティは高まり、良い工事ができるようになります。
このような工事の安全を確保するためにかける経費のことを安全衛生経費と言います。

安全衛生経費の重要性

工事を行う過程で事故が起きてしまう例は後を絶ちません。
事故の結果、作業員がケガを負う場合や最悪の場合なくなってしまうケースは毎日のように起きています。
この際、治療費を払ったり、遺族に賠償金を支払ったりといった具合に責任を取るのは工事を行った会社の役割です。

中には防ぎようがない事故もあるでしょうが、きっちりと対策を立てれば防げる事故が多いのも事実です。
安全の確保を怠ったら会社は重大な損失を負ってしまいます。
もしこうした事故が未然に防げるならどうでしょうか。
もちろん、安全衛生経費を確保するにはそれなりの予算が必要です。
とはいえ、あらかじめお金をかけることで将来の損失を防げるならば、長期的に利益になることは間違いないでしょう。
この意味で、安全衛生経費を予算に組み込むことは大切です。

主な内訳

安全衛生経費は、大まかに言って直接工事費間接工事費に分けられます。

直接工事費とは作業員の安全を確保するためにかけるコストのことです。
土留めを作って地下水の浸入を防いだり、作業構台を建設して作業スペースを確保したりすることは直接工事費に含まれます。

一方で、間接工事費とは備品の調達や工事現場外の安全を守るためにかけるコストのことです。
防塵マスクを人数分用意したり、バリケードを作って関係者以外の立ち入りができないようにしたりすることは間接工事費に含まれます。
このほか、作業員の健康診断をすることも間接工事費の一部といって良いでしょう。

安全衛生経費を確保するために

ここまで、安全衛生経費とはなんなのか、それがいかに重要なのか、ということを解説してきました。
工事をするにあたっては必ず確保すべき安全衛生経費ではありますが、お金にまつわることですから、無条件に高額の予算をかけることはできません。
具体的な交渉の中で、いかに安全とコストのバランスを模索していくことが大切です。
ここからは、安全衛生経費を確保するための交渉のプロセスを見ていきましょう。

元請負人による見積条件の提示

工事を行うにあたっては、まず元請負人が見積りを提示します。
この工事には、どれくらいの予算が与えられているか、誰が費用を負担しているのかといったことを明確にしなければいけません。
ここが明確でないと元請負人としては工事の全容がイメージしづらくなり、仕事がしづらくなってしまうでしょう。

下請負人による安全衛生経費の見積り・提示

続いて、元請け側から提示された見積りをもとに、下請負人が安全衛生経費の見積りを出していきます。
先ほども述べたように、安全衛生経費の項目は多岐にわたるものです。
事が作業員の安全に関わることですから、漏れがないように注意しながら作成するようにしましょう。
過去の工事ではどれくらいの経費がかかったか、この工事ではどのような経費が新たにかかるかなどを吟味する必要があります。

対等な立場での契約交渉

安全衛生経費を確保するケースに限った話ではありませんが、元請けと下請けが交渉する際は対等な条件で話し合うよう法律で義務付けられています。

たとえば、元請けが無理な条件を提示し、下請けが十分な安全衛生経費を確保できなかったとしたら、どのような事態が起きるでしょうか。
安全が確保されないまま、危険な状況の中で工事が行われて、事故が起きる可能性は高くなってしまうでしょう。
そのような事態を防ぐ意味でも、安全衛生経費の交渉はフェアな条件で行わなければなりません。

契約書上での明確化

予算の中でどれくらいの安全衛生経費をかけるか、どちらが経費を負担するか、といったことは書面に残すようにしましょう。

適切な支払い

契約を結び終えたら工事に移っていきますが、当然ながら経費は額面通りきっちりと支払うようにしましょう。

たとえば、この項目は高くなってしまったが削れるかもしれない、などという理由で適切な額が支払われなかったらどういう事態が予想されるでしょうか。
必要な備品が行き渡らない場合や安全確保のための工事が不十分になってしまいかねません。

不適切な対応は建設業法違反に

厳密にいえば安全衛生経費を確保することは、法律で義務付けられているわけではありません。
もっとも、だからといって作業員を危険にさらしたまま工事をさせるようなことは、明確に法令に違反してしまいます。
そのため、安全衛生経費を確保したうえで作業員が安全な環境で労働できるようにすることは実質的な義務と言えるでしょう。

また、建築業界で働くうえでは建設業法を順守しなければいけませんが、こちらの法律でもさまざまな形で安全の確保が現場で行われるように配慮されています。
最近ではさまざまな業界でパワハラが問題になっていますが、パワハラが起きないような環境を作ることは建築業界においても必須です。
実は、こうしたパワハラを防止するための対策のコストも安全衛生経費に含まれることがあります。
パワハラを通報できるような体制を整えたり、作業員のメンタルヘルスをケアしたり、といったことは健康に関わるので衛生部門に含まれます。
こういった方面の対策を疎かにしたまま経費を見積ると、不適切な対応とみなされ、場合によっては建設業法に違反したとみなされてしまうので注意しましょう。

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まとめ

建築業界は大きな工事を扱うことも多いので、必然的に多額のお金が動きやすいです。
それらを一つひとつ処理するのが大変なのは間違いありません。
とはいえ、事故なく工事を進めるためにも、安全衛生経費をはじめとしたコストがどういったものなのかをしっかりと理解することは欠かせません。

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