収支管理は、建築工事の健全な遂行や企業の持続的成長、安定した経営のために重要な役割を果たしています。
この記事では、収支管理とはどんなことをするのか、進め方、適切かつスムーズに行うためのポイントをご紹介していきます。
収支管理とは
収支管理とは、収入と支出というお金の出入りや流れを管理することです。
実際の収支の把握はもとより、過去の実績や内部要因、外部要因に基づき将来予測を立てながら、企業経営に支障が出ないように管理することが求められます。
収支管理は大きく売上管理、予算管理、原価管理に分けることができます。
以下で詳しく見ていきましょう。
売上管理
売上管理は、売上額や売上案件の管理を行うものです。
建設業であれば、建築工事の受注案件と工事請負額や下請受注額などを記録、管理していきます。
案件名、取引先名、契約日や施工期間、工事総額や単価、数量などのデータを記録して集計していきます。
その事業年度の収益の計算などに用いるだけでなく、蓄積された前年、前々年の売上から今期や来期の売上予測を立てることも重要です。
売上実績に加えて、資材などの価格変動や人件費の値上がり、燃料費の値上がり、建築需要の動向なども踏まえ売上予測を立てます。
新年度や中長期で売上目標を立て、目標を達成できるように管理していくことも大切です。
予算管理
予算管理とは、売上予測に対して、どのくらいの予算を投下するかの管理をすることです。
決められた予算の範囲で、売上目標を達成するために戦略を練らなくてはなりません。
広告宣伝費用や営業費用などをいくらかけるか、付随費用をいかに抑えるかをはじめ、予算オーバーにならないように管理することが求められます。
実行予算とは?積算との違いについても解説原価管理
原価管理とは、決められた予算内で売上目標を達成するために重要となるコストの管理になります。
資材や建材、設備などの仕入コストや人件費、燃料費など、工事に関わるあらゆるコストを洗い出し、予算内に収められるように管理しなくてはなりません。
特に建設業では、工事原価は工事ごとに積算して求めていくので、高い技術や経験などが求められます。
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収支管理はなぜ重要?
収支管理はなぜ重要なのでしょうか。
それは、企業が持続的成長や安定成長を遂げ、経営の維持、向上を図っていく必要があるためです。
コストを抑えて予算の範囲内で事業を実行し、利益を上げていかなければ、赤字となり倒産してしまうかもしれません。
特に建設業は、請負金額も大きい一方で、資材費や運搬費、人件費など多くのコストもかさむので、緻密に収支管理を行っていかないと、赤字工事につながるリスクがあります。
収支管理を実施するメリット
では、収支管理をしっかり実施していくメリットはどんな点にあるのでしょうか。
企業の経営維持、持続的成長につながるだけでなく、以下のようなメリットがあります。
利益向上につながる
収支管理では、売上だけでなく原価や予算も踏まえて管理していきます。
もし売上だけを管理すると、必ずしも利益向上にはつながりません。
売上額や契約件数だけを目標にして、売上管理だけを行った場合、採算度外視で請け負ってしまう場合や予算オーバーになっているのに気付かず、赤字工事をしてしまうおそれがあります。
売上・予算・原価の収支管理をすることで、ただ売上を上げるのではなく、コストのコントロールや予算内に収めることを意識でき、黒字工事を行うことが可能です。
その結果、企業の利益向上につながり、成長していくことができます。
従業員の当事者意識向上につながる
ただ、契約件数を上げろ、大型案件を受注しろと発破をかけても意味がありません。
他社ではなく、自社に依頼してもらえるよう、採算度外視で赤字工事を請け負えば、利益が得られず、やがて事業の継続にも影響することも少なくありません。
売上を上げるだけでなく、適切なコストのもとで利益を上げていくことを意識させることで、利益状態が改善します。
利益が上がれば、従業員も給与やボーナスがアップするので、売上アップやコスト削減に対する意識が向上します。
収支管理の進め方・ポイント
収支管理の進め方・ポイントは、PDCAサイクルに従うこと、KGI・KPIを考慮すること、収支管理ツールを活用することです。
以下で詳しく見ていきましょう。
PDCAサイクルに従う
「PDCAサイクル」とは計画→実行→検証→修正のサイクルを繰り返しながら、業務プロセスやその質をアップしていくことです。
STEP①
P:Plan(計画)
売上予測や予算の立案、コストのコントロールなどをいかに行うか、計画を立てましょう。
STEP②
D:Do(実行)
計画にもとづき、実際に収支管理を行っていきます。
STEP③
C:Check(検証)
工事が終わったら、コストを予算内に収められたか、売上目標が達成できたかを振り返ります。
予算オーバーになった場合や目標が達成できていない場合にはその原因を究明します。
STEP④
A:Action(修正)
究明した原因や問題点、改善できる点を明確化して、改善する対策を考えましょう。
そのうえで、次のサイクルでは、その点を修正して実行していきます。
KGI・KPIを考慮する
KGIとは最終目標のことで、KPIはその過程で達成すべき中間目標です。
工期が長い場合をはじめ、いきなり最終目標を目指すより、中間目標を設けることで目標に向けての対策が採りやすくなり、実現しやすくなります。
KPIを順にクリアしていくと、最終的なKGIに到達するイメージです。
収支管理ツールを活用する
エクセルなどを使ってアナログで管理すると、管理者のみが属人的に管理する形になりやすいです。
収支管理ツールを活用することで、より正確な売上予測や予算管理、原価の積み上げができるだけでなく、経営陣や管理職、その他権限を付与された人などもリアルタイムで確認できるようになります。
瞬時に視覚化されることで、PDCAサイクルが回しやすくなり、素早く方向転換や改善策の実行など、適切な経営判断ができるようになります。
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まとめ
収支管理とは、収入と支出というお金の流れを管理することです。
大きく売上管理、予算管理、原価管理に分けられます。
収支管理はなぜ重要かは、企業はコストを抑え予算の範囲内で事業を実行し利益を上げないと、存続していけないためです。
実施するメリットは利益向上につながること、従業員の当事者意識向上につながることです。
進め方・ポイントとして、「PDCAサイクル」に従うこと、KGI・KPIを考慮することが必要になります。
また、収支管理ツールを活用することで、収支管理をスムーズかつ的確に進められます。
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