現場管理の仕事を行うにあたって、必須となる資格はありません。
建設は難しい業務ではありますが、資格を持っていなくても現場監督のポジションに就くことは可能です。
ただし、資格を持っていたほうがより高いレベルの仕事を行えます。また企業側が「持っていてほしい」という資格もあります。
ここでは、現場監督の仕事内容と将来的に持っておくべき資格を5選紹介します。
現場管理には資格が必要?
現場管理をおこなう上で、資格は必要ありません。
現場管理は工事現場における非常に重要な役割の一つですが、資格がなくても採用されます。 実際、近年では現場の高齢化を補うため、他業種から転職してきた未経験者などの採用が進んでいます。
では、法律上はどうなっているのでしょう。建設業法第26条では、以下のように記載されています。
第二十六条 建設業者は、その請け負つた建設工事を施工するときは、当該建設工事に関し第七条第二号イ、ロ又はハに該当する者で当該工事現場における建設工事の施工の技術上の管理をつかさどるもの(以下「主任技術者」という。)を置かなければならない。
引用元:建設業法第26条(主任技術者及び監理技術者の設置等)
建設業者が工事を行う際、立場や金額の大小にかかわらず現場に技術者を配置する義務があります。そのため、『主任技術者』はすべての工事現場に、『監理技術者』は特定建設業許可を必要とする工事現場に配置しなければなりません。
しかし、これらの資格は現場の全員が持ってる必要はありません。そのため、現場は「見習いとして勉強できる場」でもあります。
資格の取得がおすすめな理由
現場管理の仕事をする際、資格は必須ではありませんが、できれば取得するのがおすすめです。理由は「資格を推奨している企業が多い」と「さまざまな現場で求められる人材になれる」の二つです。詳しく解説します。
資格を推奨している企業が多い
人手不足や高齢化が進んでいる中、多くの企業が若い未経験人材を雇用して自社内で育成する方針へ転換しました。
もちろん企業側としては、最初は資格を持っていなくても業務の中で経験を積み、将来的には資格取得してもらいたいと考えています。
そのため、研修などを実施し、積極的に社員の資格取得を推進している企業は少なくありません。
さまざまな現場で求められる人材になれる
現在の建築業界では、「人手不足」に加えて「インフラ整備の需要が増加」しています。そのため、複数の現場を担当する技術者も増えていく傾向にあります。
資格を取得して専門的な技術者となれば、同時にさまざまな現場から求められる市場価値の高い人材となるでしょう。
現場管理の役割とは?
現場管理は、現場レベルで工事の安全確保や能率維持などの役割を担っており、仕事内容は大きく「現場監督」と「施工管理」との二つに分けられます。
また、似たような言葉で『現場監理』という業務がありますが、こちらは建築士資格を持つ人の独占業務です。 工事を設計図と照合する仕事なので、こちらとは混同しないようにしましょう。
現場監督の仕事
現場監督は、工事現場で作業する人員に適切に指示を出し進捗を管理する仕事です。
さまざまな指揮を執りますが、基本的に自身が作業に従事することはありません。
あらゆる作業知識がなければ適切な指示を出すことはできないため、豊富な現場経験や技術を持つ人材でなければ務まらないでしょう。
もちろん工期を守ることも大切ですが、それ以上に安全・品質管理が重要で「現場環境を適切に維持すること」が求められます。 そのため、現場に関わる多くの人と円滑にコミュニケーションを取ることも必要です。
現場監督は、「現場の安全を守る」という重要な責任があります。指示を出すときも、安全に配慮したものでなければなりません。
現場管理とは?施工管理との違いや仕事内容を紹介施工管理の仕事
施工管理の仕事は、デスクワークも多いのが特徴です。
施工計画や工事予算など、工事に関するあらゆる計画がスケジュール通りに進んでいるかを管理します。
書類作成業務も多く、スケジュールを組み立て、資機材のコストを計算し、人員配置にも頭を使うことが必要です。
スケジュールは全体工程だけでなく、月間工程、週間工程など段階的な詳細スケジュールを組みます。また、工程会議を適時行って差異のないようチェックします。
それでもスケジュール通りに進む現場は、残念ながらほとんどありません。
そのため、随時必要な材料や機材の調達、作業員の調整などを行い「タイムロスやトラブルを抑えること」が施行管理の重要な仕事です。
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現場管理におすすめの資格5選
技術者の仕事は非常に専門的なため、一人の人がたくさんの資格を取得することは簡単ではありません。
スキルアップ、キャリアアップのために資格取得に臨む場合には、自身がどのような業務に携わりたいか、どのような仕事をしたいかを考え、目標を絞ることが重要です。
ここでは現場管理として働く際に、取得すべき5つのオススメ資格について紹介します。
建築士
建築士は、建築士法で定められている国家資格です。
業務独占資格であり、「設計図書の作成」や「工事監理」はこの資格を持つ人だけが行えます。
試験級
建築士の試験級は、『一級建築士』『二級建築士』『木造建築士』の3つに分かれています。
- 一級建築士
国土交通大臣の免許です。高さ13m又は軒の高さ9mを超えるものや鉄筋コンクリート造、鉄骨造等で延べ面積が300平方メートルを超えるものにはこの資格が必要です。 - 二級建築士
都道府県知事の免許です。鉄筋コンクリート造、鉄骨造等で延べ面積が30平方メートルを超え300平方メートル以内のものを扱えます。 - 木造建築士
都道府県知事の免許です。1.2階建までの木造建築物で延べ面積が100平方メートルを超え300平方メートル以内のものを取り扱えます。
試験科目
『一級建築士』の学科試験は、「計画、環境・設備、法規、構造、施工」です。
『二級建築士』『木造建築士』の学科試験は、「建築計画、建築法規、建築構造、建築施工」です。
実技試験はいずれも設計製図の試験で、あらかじめ公表される課題の建築物について、設計図書を作成します。
難易度
一級建築士は非常に難しく、合格率は例年10%前後です。
令和3年 | 【合格率】学科:15.2% 製図:35.9% 総合合格率:9.9% |
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令和2年 | 【合格率】学科:20.7% 製図:34.4% 総合合格率:10.6% |
令和元年 | 【合格率】学科:22.8% 製図:35.2% 総合合格率:12.0% |
令和3年の結果は設計製図で35.9%の合格率だったものの、学科が15.2%ですので、まず学科試験を突破するのが簡単ではありません。
そのため、一発合格するような資格ではなく、数年かけて取得を目指す資格です。
これに比べて、二級建築士は例年合格率は20%台で、令和4年は25.0%でした。こちらも決して安心できる数字ではありませんが、一級に比べれば希望はあります。
また、令和2年に大幅な法改正があり、受験資格に実務経験がなくなりハードルが少し下がりました。(※試験合格後に実務経験期間があります)
木造建築士の合格率は、例年30%台で、令和4年は35.5%です。
二級建築士とは?資格と改正法について簡単に解説建築施工管理士
建築施工管理士は、建設業法にもとづき国土交通大臣指定機関が実施する国家試験です。
『主任技術者』『監理技術者』の任に就くことが認められます。
試験級
建築施工管理士の試験級には、1級と2級とがあります。
- 1級
特定建設業の『営業所ごとに置く専任の技術者』及び『監理技術者』に認められます。 - 2級
『営業所ごとに配置する専任の技術者』及び『建設工事における主任技術者』として認められます。
ただし令和3年4月から、第一次検定に合格した時点で『技士補』の資格を取得できるようになりました。
試験科目
第一次検定と第二次検定の二つがあります。それぞれ、第一次検定は学科、第二次検定は実地です。
学科は建築学等、施工管理法、法規の3分野、実地は施工管理法となっています。
試験では、施工の管理を行うために必要な知識や、工事現場で設計図書にもとづき施工計画や施工図を作成できる能力が問われます。
難易度
1級の合格率は令和3年で学科36.0%、実地52.4%でした。
2級の合格率は令和3年で学科48.8%、実地52.9%でした。
この結果を見ると極端に難しいとは言えませんが、やはり簡単な試験ではありません。
学科の出題範囲が広いことが難易度を上げています。
建設機械管理技士
建設機械管理技士は、国家資格の施工管理技士資格の一つです。
建設機械のスペシャリストで、種建設機械を使って施工する際の管理者として認められます。
試験級
建設機械管理技士の試験級は、1級と2級があります。
- 1級
実務経験3年以上及び1年以上の現場管理経験を有する者に受験資格があります。 - 2級
実務経験6ヶ月以上で受験が可能ですが、いずれも最終学歴によって受験資格は変わります。
試験科目
第1次検定と第2次検定とがあり、第1次検定は学科、第2次検定は記述と所定コース内での操作施工です。
学科は、土木工学・建設機械原動機・石油燃料・潤滑剤・法規・建設機械施工法の6分野から共通問題と種別問題に分けて出題されます。
実技は試験会場に用意された建設機械を使います。
難易度
1級合格率は、令和3年の第一次検定が26.6%、第二次検定64.9%でした。
2級合格率は、令和3年の第一次検定が42.3%、第二次検定が83.8%でした。
学科さえクリアすれば難しい試験ではありませんが、どうしてもペーパーテストの数値が厳しくなっています。
建設機械施工管理技士とは?資格取得のメリット・難易度などについて解説土木施工管理技士
土木施工管理技士は、建設業法にもとづき国土交通大臣指定機関が実施する国家試験です。
「河川、道路、ダム、トンネル、港湾、鉄道、上下水道、災害復旧」などで施工管理を行います。 令和3年度試験から技士補が創設されました。
試験級
1級と2級に分けられています。
基本的な役割は変わらず、従事できる仕事の範囲が異なります。
試験科目
第一次検定と第二次検定があり、第一次検定が学科、第二次検定が実地試験です。
これまで学科では知識のみを、実地では能力のみを出題していましたが、令和3年度からは学科でも能力を、実地でも知識が出題されるようになりました。
学科は土木工学等、施工管理法(能力)、法規となっており、実地は施工管理能力を必要知識と能力で問われます。
難易度
1級合格率は、令和3年の学科で60.6%、実地で36.6%でした。
2級合格率は、令和3年の学科で73.6%、実地で35.7%でした。
学科よりも実地の合格率が低いのは、令和3年度から従来学科試験で出ていた知識問題の一部が、実地に移行された経緯もあるかもしれません。
土木施工管理技士とは?仕事内容・資格取得のメリット・難易度などを紹介電気工事施工管理技士
電気工事施工管理技士は、建設業法にもとづく国家資格です。
資格を取得すると、照明設備や変電設備、発電設備工事のほか、送配電線工事や構内電気設備工事、非常用電源設備工事などに携われます。
試験級
電気工事施工管理技士の試験級には、1級と2級とがあります。それぞれ、担当できる業務や現場範囲に違いがあります。しかし令和3年度から、1級の受験資格が以下のように緩和されました。
- 1級の受験資格は、2級合格者が1級を受験する場合に限り不要。
- 実務試験の受験資格は、合格後5年以上の実務経験が必要だったが、緩和後は2級合格の翌年から1級の第一次試験が受験可能。
また、第一次検定の合格者には技士補が付与されます。
ただし、学科に能力問題が、実地に知識問題が追加されるなどの変更もありました。
試験科目
第一次検定と第二次検定があり、第一次検定が学科、第二次検定が実地試験です。
学科は電気工学等、施工管理法、法規で、実地は施工管理法の応用能力を問われます。
電気設備等の性能を確保するため設計図を理解し、電気設備の施工図を作成し必要機材を選定、配置するなどの試験になります。
難易度
1級の合格率は、令和3年で第一検定が53.3%、第二次検定が58.8%でした。
国家試験としては非常に高い数字ですが、令和3年は例年に比べ、学科がかなり高く、実地がかなり落ちている状況です。
この点は、試験の内容が令和3年度から変更になった影響があるかもしれません。
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まとめ
現場管理で重視されるのは、『安全』『品質』『予算』『工程』の4大管理です。
計画通り事業を進めるために欠かせない要素であり、それを知識と技術で遂行する責任を負うのが現場監督や施工管理です。
はじめから必要な資格はなく、無資格でも未経験者でも働くことができますが、スキルアップやキャリアアップのためには取得すべき資格があります。
もちろんコミュニケーション能力や統率力も必要ですが、積極的に育成を進めている企業も増えましたので、是非現場で勉強しながら資格取得を目指してください。