ITやオンラインサービスの普及が進む中、住宅業界でもDXが求められています。
現場仕事が基本なのにDXと思われるかもしれませんが、住宅業界でもDXが求められる時代になりました。
住宅業界のDXが求められる背景や住宅業界のDXを推進するメリットを解説するとともに、住宅業界のDXを成功させるポイントについて5つの事例をご紹介します。
目次
DXとは?
DXはITなどの最新のデジタル技術を導入することで、業務改革や働き方改革を図り、業務の効率化や生産性アップ、人材の有効活用などを行い、業績アップや事業の存続、持続的成長を図っていくために行われます。
国をあげてDXの取り組みが推進されていますが、住宅業界ではどのようになっているのでしょうか。
住宅業界のDXの現状
2022年に住宅・不動産業界向けにアンケート調査を実施した結果によれば、全社レベルでDX化に取り組み、成果が出ていると回答した企業は、16.7%ほどにとどまっています。
また、DXに全く取り組んでいないと回答した企業も、4分の1ほど存在しています。
大手企業は積極的に取り組んでいるのに対し、中小企業では取り組みがほとんど行われていないケースが目立つのが現状です。
住宅業界のDXが求められる背景
まだまだDX化が進んでいない住宅業界において、DXが求められるようになったのは、どのような背景があるのでしょうか。
インターネット・SNSの普及
まず、インターネットやSNSの飛躍的な普及が挙げられます。
住宅を建てたい、購入したいと考える人たちは、まずインターネット検索を行います。
ハウスメーカーや工務店を検索したり、新築マンションなどの情報を調べたりし、気になるところがあれば、問い合わせや資料請求などを行う方も少なくありません。
そもそもホームページがない、オンラインで相談できないとなると、ライバルから取り残されます。
わざわざモデルルームに行かなくても、オンラインで動画が見られるなど、バーチャル展示場などを設けている企業が出てくると、そちらにニーズが取られてしまいます。
企業の中には公式SNSで情報発信を行い、ファンを増やすことや知名度を上げ、問い合わせや依頼を増やすケースも出てきました。
また、SNSを通じて口コミや評価が拡散され、依頼につながるケースもあります。
コロナ禍における働き方の変化
住宅業界は現場での仕事が基本というのが、これまでの常識でしたが、コロナ禍により、これまでの働き方ができなくなるという状態が生じました。
それでも、事業を止めるわけにはいかず、想定外の事態に合わせてリモートワークを導入することやオンライン商談やカメラを使った現場管理など、リモートでできる業務を増やす必要も生じました。
原材料費の高騰
コロナ禍やロシアによるウクライナ侵攻などに伴い、物流が停滞することや世界の経済に影響が生じ、原材料費が高騰しています。
建築資材や重機を動かす燃料などは輸入されているものも多く、大幅な円安の進行も原材料費高騰に拍車をかけました。
住宅業界では契約をしてから、原材料を準備して完成させるためにタイムラグがあり、上乗せされた費用を顧客に転嫁できなければ赤字となります。
こうした原材料費の高騰を踏まえ、別の部分でコスト削減が迫られています。
DXにより業務の効率化や生産性アップを図り、コストカットできないかの取り組みが必要になりました。
コロナ・ウクライナ情勢における建築業への影響はこちら
住宅業界のDXを推進するメリット
住宅業界のDXを推進するメリットを確認していきましょう。
業務効率化
スマホアプリやタブレット、システムなどを用いることで、これまでの業務がスピードアップすることや現場と事務所を行き来しなくてもできることが増え、業務効率化が図れます。
人材不足の解消
システム導入により、電話対応や経理などのスタッフを減らせることや営業職員を減らせるなど、人材不足の解消にもつながります。
顧客満足度の向上
ライフスタイルの変化やインターネットの普及により、対面ではなく、いつでも気軽に相談することや確認がしたい顧客に対して、オンライン商談や画像や動画での報告ができるようになれば、顧客満足度の向上も図れます。
属人化の回避
属人化とは、その人の技術や経験に依存してしまうことです。
技術やノウハウが継承されないと、人材の育成にもつながりません。
DXを通じて情報共有や事例の共有を図ることで、属人化の回避が可能です。
インサイドセールスに効果的
モデルルームへの来場や顧客への訪問営業による対面営業が基本であった住宅業界において、オンライン商談やメルマガやDMなどを用いた非対面のインサイドセールスにシフトすることができます。
忙しくて時間が取りにくい顧客や他社と比較検討中の顧客を取り込むことが可能です。
建築業の顧客管理・業務改善に関する記事はこちら
住宅業界のDXを成功させるポイント
住宅業界のDXを成功させるポイントをご紹介します。
スモールスタート
最初から大々的に行おうとせず、取り組みやすいことから始めるのがおすすめです。
ITシステムなどに慣れていないスタッフが戸惑わないよう、徐々に慣れてもらい、便利さや良さに気づいたところで、取り組みを進行していくことが成功させるポイントです。
自社に最適な方法を検討し続ける
他社の成功事例が、そのまま自社にもマッチするとは限りません。
自社の規模や事業内容、スタッフのITリテラシーなどを踏まえながら、自社にとって最適な方法を検討し続けることが大切です。
属人化を防止し、社員全員が主体的に取り組む
DXの推進にあたっても、一部の担当者のみに任せてしまうのではなく、経営者から社員まで全員が主体的に取り組むようにすることが成功させるポイントです。
DX推進担当者がいなくなっても、誰もが使いこなせ、活用できるように全社的な取り組みを行いましょう。
住宅業界のDX活用事例5選
住宅業界のDX活用事例として5選をご紹介します。
自社に最適な方法は何か、スモールスタートをするうえで何から始めるべきかの参考にしてください。
現地調査のデジタル化
これまでは担当者が現地調査に行き、プランや見積書を文書作成ソフトや表計算ソフトなどで作成して、紙で提供するのが基本でした。
どんなプランを提供したのかが属人的に管理されるなど、社内で共有できていませんでした。
現地調査のデジタル化を図ることで、システムやアプリを通じて、社内の関係者が情報共有を図ることができます。
担当の技術者だけでなく、ほかの技術者がアイディアを出すことや解決法を提案するなど、より顧客満足につながるプランニングが可能となりました。
蓄積したプランや現地調査の結果と対応事例などを検索し、今後の事例に活用することも可能です。
集客・商談管理
ホームページからの資料請求や商談申込などを通じて、顧客情報を得てサポートメールなどを送ることやSNSでの情報発信による顧客獲得、スマホアプリを使って気軽に相談できる体制を構築しました。
これにより、一度問い合わせが来た見込み客を成約につなげるようになります。
商談の内容もシステムで記録、管理することで、営業担当者以外の現場技術者なども含めて、顧客のニーズや解決したいことを知ることができ、顧客満足度アップにもつながります。
共有データベース
営業部門や新築部門、リフォーム部門など、部門ごとに独立していたシステムとデータベースを統合・再構築しました。
顧客情報の一元管理や事例の共有などが図られ、タイムリーな業務の提供ができるようになり、コストダウンと生産性アップに成功しました。
現場遠隔管理
現場監督が現場を巡回し、事務所に戻って報告書を作成するといった移動や手間を省き、現場の遠隔管理を可能としました。
現場に設置したカメラ画像による確認、現場から送られてくる進捗画像などを見ながら管理を行うことや現場とのビデオ通話などを通じて、現場管理の効率化が図られています。
電子確認申請
押印の廃止が認められることや確認検査業務規程の改訂に伴い、申請者の電子署名の付与は不要となったことを受け、電子確認申請率を上げるよう取り組みを進めている事例です。
申請関連業務の時間の短縮や手間の削減によって、余裕ができた時間を顧客サービスに振り向けることで、成約向上や顧客満足度アップに役立て、企業業績アップを目指しています。
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まとめ
住宅業界のDXが求められる背景はインターネット・SNSの普及、コロナ禍における働き方の変化、原材料費の高騰などが挙げられます。
DXを推進するメリットとして業務効率化、人材不足の解消、顧客満足度の向上、属人化の回避、インサイドセールスに効果的といった点があります。
成功させるポイントはスモールスタート、自社に最適な方法を検討し続ける、属人化を防止し、社員全員が主体的に取り組むことが大切です。
DX活用事例5選として、現地調査のデジタル化、集客・商談管理、共有データベース、現場遠隔管理、電子確認申請の事例をご紹介しました。
ぜひ住宅業界のDXを成功させるための参考にしてください。
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