見積書に消費税の記載は必要?法的根拠を解説

見積書に消費税の記載は必要?法的根拠を解説

見積書は正式な文書であり、提供予定である製品やサービスの価値や範囲、条件などを発注者に提示するために作成し、取引初期段階で取り交わすものです。
あらゆる業種業態で必要不可欠のものですが、ここで気になるのが消費税の記載です。

2021年4月1日から価格表示や広告において、消費税額を含めた総額表示が義務化されましたが、この定義に見積書は含まれるのでしょうか。
ここでは、見積書に消費税の記載が必要か不要か、正しい法的根拠をもって解説します。

見積書に消費税を記載する義務はない

結論から言えば、見積書に消費税を記載する義務はありません
法的に義務化されているのは、冒頭でも触れた通り総額表示についての義務です。

総額表示義務とは

そもそも総額表示義務とは、「事業者が消費者に対してあらかじめ価格を表示する場合に、消費税額(地方消費税額を含む。)を含めた価格(税込価格)を表示することを義務付けるもの」です。

国税庁「『総額表示』の義務付け」

たとえば、消費者が買い物をする際に、価格表示に消費税額が含まれていない場合、会計時に最終的にいくら支払えば良いのかがわかりにくくなります。

見積書は総額表示義務の対象ではない

以前は、表示は事業者によって税抜表示と税込表示とが混在し、余計に混乱する事態になっていました。
このことから、総額表示は2004年4月1日から税込表示に義務化され、移行時の特例措置も2021年3月で失効したことで、現在は原則に従い税込価格表示が全事業者の義務になっています。

ですが、見積書については、この義務に該当しません
総額表示の義務は、「不特定かつ多数の」消費者に対する場合であり、特定の取引相手に提示する見積書や契約書、請求書などは含まれません。

もちろん、そうした場合でも税込価格の表示が必要であれば記載すべきですし、少なくとも齟齬がないよう税込・税別の明記は必要でしょう。

総額表示の対象とは?

それでは、法的に見た場合の「総額表示義務の対象」を改めてまとめておきましょう。
国税庁によると、総額表示の義務付けは、「事業者が消費者に対してあらかじめ表示する価格」が対象です。
つまり、そもそも価格表示のない場合は税込価格の表示義務はありません

また、口頭で伝える場合にも総額表示義務の対象とはなりません。
不特定多数の消費者に発信する情報の場合は、それがどのような媒体でも対象となります。

たとえば、店頭表示だけでなくチラシ広告や新聞・テレビ広告、インターネット広告などを含み、すべての表示に対して総額表示の義務が生じることは覚えておきましょう。

見積書への消費税の書き方

前述した通り、見積書には消費税の記載義務はありません。
ただ、見積書は文書である以上、作成者の手元を離れた後に一人歩きするものです。
どの時点でどんな第三者が目にした場合でも齟齬のない内容とするためにも、見積書へ金額を記載する際には税込・税別の明記はしておくことをおすすめします。

また、取引内容によっては、あえて見積書に消費税を記載すべき場合もありますので、その際は明確にわかりやすく記載することが重要です。
見積書に消費税を加える場合の書き方としては、個別項目の単価と金額をすべて合計した小計欄を設け、その下に消費税欄を加えたのちにすべての合計金額を記載すると良いでしょう。

下記のような書き方が一般的です。

  • 小 計 ○○,○○○
  • 消費税 ○,○○○
  • 合 計 ○○,○○○

見積書作成時に注意すべきポイント

それでは見積書を作成する際に注意すべきポイントをまとめます。
見積書は取引で重要となる正式な文書であり、当然のことながら安易に取り交わして良いものではありません。

タイトルや宛先、発行日や提出者など重要な情報のほか、件名の明記や通し番号の掲載など細かな注意点が多々あります。
ここでは、中でも特に重要なものについて解説します。

有効期限を記載する

見積書で重要となるのが有効期限です。
そもそも、見積書自体がビジネスにおいてトラブルを避ける目的で取り交わす文書ですが、ここに有効期限の設定がないことが大きな問題に発展するおそれがあります。

たとえば、何年も前に提示した見積書を持ち出され、この金額で仕事を請け負えと言われても承諾できないケースはいくらでも想定できるでしょう。
特に現在は物価の変動が著しく、コストが大きく上がれば数日前の提示金額ですら赤字受注に陥るリスクがあります。

時期によってはそもそも稼働リソースが確保できなくなる可能性も考えられるため、見積書には「有効期限:○年○月○日まで」といった具体的な日付を書くのが一般的です。

備考欄を活用し前提条件を明記する

多くの見積書フォーマットには備考欄が設けられていますが、こちらはぜひ有効活用してください。
提供予定の商品やサービスに関連する前提条件を書くのが一般的ですが、多くの場合はトラブルを避けるために釘を刺す役割になります。

内容は案件によって実にさまざまですが、納期や納品先に関するもの、見積書の金額と請求金額に差額が出る可能性のあるケースなどは重要です。

また、振込手数料の負担がどちらかになるか、入金がいつまでに必要かなど支払いに関する事項も多く記載されます。
いずれにしても、取り交わす相手と齟齬のないよう、記載内容は綿密にチェックしてください。

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まとめ

見積書に消費税の記載は原則不要です。
国税庁のホームページに掲載されている総額表示義務対象を確認しても対象にはなっていません。

ただ、取引によって必要な場合はもちろん明記すべきですし、そうでない場合も取引先と齟齬のないよう、合計金額に税込・税抜の表示はしておくことをおすすめします。
何より重要なのは、ビジネスにおいてトラブルを回避することですので、見積書の作成には十分に注意を払ってください。

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