施工管理技士は建設現場全体を指揮する重要な仕事ですが、建設業界の慢性的な人材不足の影響もあって施工管理技士の数も不足しており、業界内でキャリアアップを目指す方にとって非常に有効な資格の一つと言えるでしょう。
ここでは2級施工管理技士の仕事内容に加えて、資格試験の詳しい内容や近年の変更点などについて詳しく紹介していきます。
2級施工管理技士とは
2級施工管理技士は、建設業法第27条にもとづいて、国土交通省から指定を受けた一般財団法人・建設業振興基金の実施する検定試験に合格することで与えられる国家資格です。
技術の高度化・専門家が顕著な建設業界において、工事を予定通り円滑に安全に行うためには現場管理者にも高度で専門的な知識が求められるようになりました。
2級施工管理技士を取得することで、建設現場における施工計画の作成や安全管理を的確に行うことができる知識や技術を有していることの証明となります。
実は施工管理技士資格には7つの種類があり、今回紹介している建築施工管理技士は7つ検定の中の一つです。
ほかに「管工事施工管理技士」「電気工事施工管理技士」「土木施工管理技士」「造園施工管理技士」「電気通信工事施工管理技士」があり、すべての検定に1級・2級の区分があります。
なお、検定によって実施する試験機関が異なるため、試験に申し込む際には注意が必要です。
2級施工管理技士の役割
既述の通り、建築施工管理技士には1級・2級の区分があります。
基本的に両者の仕事内容に大きな違いはありませんが、その役割には明確な違いがあるのです。
1級建築施工管理技士は建築現場で「監理技術者」としての役割を果たします。
建築業界では受けた仕事を下請けに負わせることがよくありますが、下請契約の請負代金総額が4,000万円以上(建築一式工事は6,000万円以上)になる場合に工事現場に監理技術者を配置しなければなりません。
つまり、公共施設や大型ショッピングモール、超高層マンションなど大規模な工事の現場責任者として、働くためには1級建築施工管理技士を取得して監理技術者になることが必要です。
一方、2級建築施工管理技士は監理技術者になることはできず、建設現場での役割は「専任技術者」「主任技術者」となります。
上記の請負代金を超えないような規模のあまり大きくない建設現場を管理することができます。
仕事内容
2級建築施工管理技士は建設現場での作業が滞りなく進むように工事の工程を管理・監督するのが主な仕事内容です。
具体的には以下の4つの仕事が挙げられます。
原価管理
2級施工管理技士の重要な仕事の一つが原価の管理です。
決められた予算の中で工事を完了することができるように人件費や建材費などを常にチェックし、無駄なコストがあれば削ることや必要に応じて外注先や建材の変更などを行うことで黒字化を実現します。
工程管理
工期を守って予定内で工事が終わるようにスケジュール管理を行うことも重要な仕事です。
納期が遅れてしまえば、その分人件費や機材のレンタル料金なども余計にかかって利益を圧縮してしまうことになりますし、何よりもお客様からの信用を失ってしまうことになります。
事前に何をいつまでに作れば良いのかということを計画し、進捗状況に問題があれば調整・改善することで作業工程を遵守する能力が求められます。
安全管理
建設現場では大きな機材や重い建材を使った作業、高い場所での作業も多いため、小さなミスが大きな事故につながる可能性があります。
万が一大きな事故が起こってしまった場合や大きな事故こそなくても小さな事故が頻発してしまえば、その都度作業がストップしてしまうため作業を予定通りに進めることができなくなってしまいます。
こういったことを避けるためにも、安全管理は欠かすことができません。
作業員の健康を常に管理し、出入り業者の作業員には新規入場者教育を施すなどして危険な作業や場所について共通の認識を持たせることも重要な仕事になります。
品質管理
予算や納期を守るために作業の品質を落としてしまっては意味がありません。
現場の状況と設計図・仕様図などを見比べて、建築物のデザインや強度、機能などについてお客様の求める品質を満たしているかこまめにチェックすることも大切な仕事の一つです。
また、工期途中の仕様変更などにも対応できるようにお客様や設計者、作業員と常にコミュニケーションを取ることも大切なことです。
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令和4年度 2級建築施工管理技士 試験情報
2級建築施工管理技士の試験は一般財団法人 建設業振興基金によって実施されています。
試験は第一次検定と第二次検定があり、第一次検定は年に2回受験することが可能です。
ここからは、令和4年度に実施される2級建築施工管理技士の試験情報について詳しく見ていきましょう。
受験資格
第一次検定と第二次検定の受験資格を紹介します。
第一次検定
2級建築施工管理技士の第一次検定の受験資格は、試験が実施される年度において満17歳以上であることです。
令和4年に実施される試験の場合は、平成18年の4月1日以前に生まれた方が対象となります。
学歴や実務経験などは一切不問です。
年齢さえ条件を満たしていれば誰でも受験することができます。
第二次検定
第二次検定については、第一次検定と同日に受験する場合と第二次検定だけを受験する場合で条件が異なります。
第一次検定と第二次検定を同日に受験する場合(同日受験)
建設工事の施工管理業務に従事した実務経験が必要です。必要な実務経験は以下の通りです
- 最終学歴が大学、専門学校の「高度専門士」:卒業後1年以上(指定学科以外は1年6ヶ月以上)
- 短大、5年制専門学校、専門学校の「専門士」:卒業後2年以上(指定学科以外は3年以上)
- 高等学校、専門学校の「専門課程」:卒業後3年以上(指定学科以外は4年6ヶ月以上)
- その他:8年以上
第二次検定のみを受験する場合
- 建築士法による一級建築士試験の合格者
- 令和2年度までの2級建築施工管理技術検定試験の「学科試験のみ」受検の合格者で有効期間内の者
- 令和3年度以降の2級建築施工管理技術検定の「第一次検定」合格者
第一次検定の試験内容
第一次検定はマークシートによる四肢択一式で、試験時間は2時間30分です。
問題は必須問題と選択問題合わせて50題で、そのうち40問に回答します。
建設学・法規・施工管理法などから幅広く出題され、どちらかというと広く浅い知識を問われる問題となっています。
配点は一問1点で満点が40点、24点以上(60%以上)の得点で合格です。
第二次検定の試験内容
第二次検定は令和2年度までは全問記述式でしたが、令和3年度からは記述式が3問、四肢択一式が2問の計5問という形に変わりました。
試験時間は2時間で、「施工経験記述」「施工用語」「工程管理」「法規」のそれぞれの範囲から1題ずつの出題、さらに「躯体」「仕上げ」「建築」の中から1題の出題となります。
「躯体」とは主に建築物の構造に関することで、土工事や基礎工事、鉄筋工事、鉄筋コンクリート工事、鉄骨工事などについての問題が出題されます。
「仕上げ」は建築物の内装や外装に関することで、左官や板金、防水、内装仕上、熱絶縁などが出題範囲です。
「建築」では「躯体」「仕上げ」を含む建築一式の幅広い知識が問われます。
第一次検定同様に60%以上の得点で合格となります。
合格率・難易度
試験制度が変更された令和3年度以降の試験データを紹介します。
・令和3年度第一次検定
前期:受験者数13,074名 合格者数4,952名 合格率37.9%
後期:受験者数13,391名 合格者数6,533名 合格率48.8%
・令和3年度第二次検定
受験者数15,507名 合格者数8,205名 合格率52.9%
・令和4年度第一次検定
前期:受験者数13,474名 合格者数6,834名 合格率50.7%
まだ1年のみのデータですが、前制度での第二次検定の合格率は例年30%前後だったので試験の難易度は若干下がっている可能性もあります。
2級建築施工管理技術検定の概要
2級建築施工管理技術検定の概要はこちらになります。
願書配布期間 | 令和4年6月21日(火)~7月19日(火) |
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申込受付期間 | (インターネット申込)令和4年6月21日(火)~7月19日(火) (書面申込)令和4年7月5日(火)~7月19日(火) |
試験日 | 令和4年11月13日(日) |
試験場所 | 札幌・青森・仙台・東京・新潟・金沢・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・鹿児島・沖縄 |
合格発表日 | (一次のみ)令和5年1月20日(金) (二次のみ、一次・二次同日受験)令和5年1月27日(金) |
受験料 | (一次のみ)5,400円 (二次のみ)5,400円(一次・二次同日受験)10,800円 |
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2021年度からの変更点
2級建築施工管理技士試験は令和3年度から新しい制度に変更されました。
具体的な変更点は以下の通りです。
2級合格後の翌年には1級受験が可能に
以前の試験制度では2級合格者が1級を受験するためには5年間の実務経験が必要でしたが、新しい制度では実務経験が不問となり、2級に合格した翌年に1級を受験することも可能になりました。
第一次検定合格の有効期限
以前の試験制度では第一次検定に合格した場合でも有効期限内に2回しか第二次検定を受けることができませんでした。
新制度では有効期限や回数制限がなくなり、第一次検定を合格した者は施工管理技士補となって何度でも第二次検定を受けることが可能です。
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まとめ
2級施工管理技士は建設業界でステップアップを目指す者にとって非常に有意義な資格であり、昇給や昇格にもつながりやすい資格です。
以前は難易度が高く取得の難しい資格でもありましたが、令和3年の新試験制度への移行によって受験資格や難易度が緩和され、しっかりと対策を行えば確実に取得できる資格となりました。
建設業界でキャリアアップを目指すなら注目の資格と言えるでしょう。