発注書は国税関係書類です。
とても重要な書類であり、法的に決まった期間で保存しなければならない義務があります。
2022年1月からは電子帳簿保存法の改正により、一部に電子保存が義務付けられたうえ、2024年1月から新要件も追加される予定です。
ここでは、発注書の保存期間や改正電子帳簿保存法などについて、詳しく解説します。
発注書とは
発注書とは、注文する側が注文を受ける側へ発行する書類です。
どのような商品やサービスを注文したかを意思とともに明らかにするものであり、発注内容や条件が明記されています。
冒頭でも触れた通り、国税関係書類に該当する重要な書類ですが、法的な発行義務はありません。
そのため、企業間取引でも発注書なしの取引がありますし、逆に企業と個人、個人同士の取引でも発行する場合があります。
発注書の役割
発注書には、取引を円滑化して不安を解消するという役割があるため、双方どちらかが不安を抱くような場合は積極的に活用されるでしょう。
書類として残せば認識違いによるトラブルを予防できますし、発注内容と金額が明記されれば意思もはっきりします。
また、下請代金支払遅延防止法を遵守するためにも活用されるため、取引が下請代金支払遅延防止法の適用範囲に含まれる場合は必要が生じます。
範囲内かどうかは業務内容や資本金額によって決まりますので、適用範囲には注意しておきましょう。
注文書・契約書との違い
注文書という表現がなされることもありますが、法的にはどちらも同じものです。
役割も内容も同じですが、業界や企業の慣習で使い分けがされている場合もあります。
また、発注書は契約書とは異なり、一方的に発行されるものですので、そこも覚えておきましょう。
発注書の記載項目
発注書の記載項目は以下の通りです。
- 注文先名称
- 発注書発行日
- 発注番号
- 提出者会社名、住所、電話番号
- 合計金額
- 商品名
- 商品数量
- 商品単価
- 商品金額
- 消費税
- 備考
発注書の書き方に関する記事はこちら
発注書の保存期間
発注書には保存期間が定められています。
発注書は、国税関係帳簿書類ですので、法律で一定期間の保存が義務付けられており、法人や個人などによってそれぞれ取り決めがあります。
罰則はないものの、ペナルティがありますので注意してください。
法人:7年間
法人の場合、発注書は帳簿や帳簿に関わる取引関連の重要書類にあたり、確定申告書の提出期限の翌日から7年の保存が定められています。
青色申告書を提出した事業年度に欠損金が生じた場合及び青色申告書を提出しなかった事業年度に災害損失欠損金が生じた場合の保存期間は10年間です。
かなり長期にわたりますので、保管についてはあらかじめしっかりと体系だった管理計画を立てておきましょう。
個人事業主:5年間
個人事業主の場合は、発注書は5年保存することが義務付けられています。
赤字で所得税の確定申告を行わなかった事業年度の注文書や発注書も保存義務の対象になりますので注意しましょう。
法人ほどではありませんが、5年は決して短い期間ではありません。
どのように管理するかはあらかじめきちんと計画しておいてください。
保存しなかった場合
法人も個人も発注書の保存期間は決して短くありません。
最初はきちんとできていても、5~7年のうちに数が増えたり人員やオフィスが入れ替わったりすることで紛失しないとも限らないでしょう。
もしくは、もともと保存できていなかった場合もあり得ますが、その場合も罰則があるわけではありません。
ただし、規則違反であることは変わりなく、青色申告者であれば承認を取り消されるおそれがあります。
またそもそもの役割である取引証明において不十分な状況になるわけですから、トラブルが生じれば不利になるリスクがあります。
直接的な罰則はなくても十分なペナルティがあると考え、しっかり保管をしてください。
会社法との混同に注意
ちなみに、貸借対照表や損益計算書などの計算書類、帳簿や事業に関する重要書類は、会社法により10年の保存期間が定められています。
こちらは法人税法ではなく会社法ですので法律が異なり、違反すると過料に処される可能性がありますので、混同しないように注意してください。
損益計算書に関する記事はこちら
発注書の保存方法
発注書は計画的に保存すべき書類ですが、数が多くなったり年月が経ったりすると管理がずさんになるリスクがあります。
どのような保存方法が最適でしょうか。
紙で保存する場合
発注書の形にもよりますが、ペーパーレス化が進みつつある現在でも、まだ紙での発注書が大半を占めるのが現実でしょう。
この場合、紙の原本をそのまま保管するという方法が従来の方法です。
ただし、税務調査が入った場合は即時対応が必要ですので、取引先や年度ごとにファイリングし、すぐに取り出せるように整理するのが望ましい形です。
紙をスキャンして保存する場合
原本をそのまま保管することが最も間違いがないように感じられますが、実際には紙書類の保管にはかなりスペースを要します。
取引が増えれば増えるだけ年々かさばりますし、7年から10年もの間ファイルを保管するだけの場所を確保し続けるのはコストが高いです。
そのため、近年では国税庁もより効率的な発注書の保存のため、発注書の電子化を推進しています。
紙で送付受領した発注書は電子帳簿保存法(電帳法)の「スキャナ保存」要件を満たしたうえで、データ化して保存するのが良いでしょう。
ただし、スキャナ保存の要件は重要書類と一般書類で異なりますので、要件をしっかり確認する必要があります。
電子帳簿保存法のスキャナ保存制度とは?要件や改正のポイントを解説!電帳法におけるスキャナ保存の要件
発注書は一般書類にあたりますので、電帳法では2024年1月以降の要件として以下の要件を定めています。
- 200dpi相当以上の解像度
- 赤・緑・青の階調がそれぞれ256階調以上(グレースケールでも可)
- タイムスタンプの付与
- ヴァージョン管理
- 見読可能装置の備付け
- 速やかに出力すること
- 電子計算機処理システムの概要書等の備付け
- 検索機能の確保
電子取引の場合
発注書や注文書を電子的にやりとりした場合、その取引は電子取引に該当します。
電子取引でやりとりした内容のデータは電帳法の要件に従って保存が義務付けられ、2022年1月施行の改正ですべての事業者に義務付けられました。
この改正に伴い電子データで発行受領した発注書や注文書はデータのまま保存しなければならなくなり、2023年12月末で猶予期間も終わります。
2023年12月31日までに行う電子取引のみ、電子データの発注書をプリントして保存することも可能です。
また令和5年度税制改正では2つの改正が示されており、法人でも個人事業主でも関係なく、2024年以降は電子データで受領した領収書や請求書は電子データ保存が必須になります。
電帳法における電子データ保存の要件
電帳法で定めている電子データの保存要件は以下の通りです。
- 改ざん防止のための措置を採る
- 「日付・金額・取引先」で検索できるようにする
- ディスプレイやプリンタなどを備え付ける
改正電子帳簿保存法に関する記事はこちら
電帳法に対応!『建築・リフォーム業向け管理システム アイピア』
まとめ
発注書は、発注者側が交付する書類であり、国税関係書類に該当する大事な書類です。
法的にも保存期間が定められていますが、そもそも取引において間違いのないように取り交わすものであり、スムーズなビジネスの遂行には欠かせないものであることは言うまでもないでしょう。
法人でも個人事業主でも保存の義務があり、特に下請法の対象取引の場合は、親事業者が必ず発行しなければならないものです。
単に慣習で取り交わす形式的なものではなく、重要な書類であることを再認識する必要があるでしょう。
ペーパーレス化が進む現在ですが、紙の発注書の場合は要件に従ってスキャンして電子データ化することが必要ですし、電子取引においては同じく要件に沿う形でそのままの保存が必須です。
電子帳簿保存法をもう一度確認し、間違いのないように保存しましょう。