何事も全体のスケジュールを作ってからやらなければいけません。
スケジュールを作らないまま仕事に臨んでしまうと、行き当たりばったりになってしまって効率が悪くなってしまいます。
建物を作るのならばなおさらスケジュールは作っておきたいところですが、細かな作業の流れを記すだけでなく、おおまかな全体像をイメージするための総合工程表も作っておきたいところです。
総合工程表とは

建築における工程表は、細部工程表と総合工程表の2種類に分けられます。
細部工程表とはその名の通り、この建物のこの部分はこういったスケジュールで作るといった部分ごとのスケジュールです。そのため、細部工程表はいくつか作る必要があります。
それに対して、総合工程表は建築の全体の流れを統括するために作るスケジュールです。
総合工程表の種類
総合工程表はどう作っても構いません。
工事着手から工事完了までの流れが書かれてさえすれば総合工程表と呼べます。
とはいえ、あまりに自由に作りすぎると、工程表を見た作業員が理解できない代物になりかねません。
そのため、建築業界ではいくつか作り方に従いながら総合工程表を作っています。
ここからは、工程表の種類をご紹介しながら、それぞれのメリットやデメリットについても解説していきましょう。
ネットワーク工程表
ネットワーク工程表はいくつかのイベントを○印で囲み、そこに矢印を加えて行ってスケジュールを作る方法です。
ネットワーク工程表を採用するメリットはなんといっても視認性が高いところにあるでしょう。
このイベントをクリアしたら、次は矢印の先にあるこのイベントを行うといった具合にすぐに作業の流れが理解できるようになります。
一方で、ネットワーク工程表は詳細なイベント内容を説明するのには適していません。
口頭での説明とうまく組み合わせながら使用するようにしましょう。
バーチャート工程表
バーチャート工程表を作るにあたっては、まず左側の欄に作業を書き出していきます。
次に上の欄に日数を書き、それに従って、この作業は1日から3日まで、一方でこの作業は4日から6日まで、といった具合にスケジュールを書き込めば完了です。
バーチャート工程表のメリットは、作りやすいところにあります。
作業同士のつながりをいったん無視し、それぞれの作業はこの日からこの日まで行うという点にだけフォーカスすれば良いので、すぐにスケジュールを作ることができるでしょう。
フローチャート工程表
フローチャートは、実際のビジネスシーンでもよく使われる図解方法です。
作り方は簡単で、これをやったら次にこれをやるという作業の流れを記していくだけです。
フローチャートは、タスクだけにフォーカスするならば優秀なチャートなのですが、一方で日数などの細かい条件をかけないのがネックと言わざるを得ません。
建設などの日数との戦いを要求される仕事においては、あまり役に立たないでしょう。
総合工程表を作成する目的
スケジュール確認をするだけなら細部工程表だけでも問題ありません。
にもかかわらず、あわせて総合工程表を作る目的はどこにあるのでしょうか。
工事の流れを把握する
建設工事は全体の流れを意識しながら行うとスムーズに仕事が行われやすくなります。
この作業が終わったら次はこの作業、という流れを頭に入れるためには総合工程表が役に立つでしょう。
納期の厳守
工事をするにあたって必ず守らなければいけないのが納期です。
この工事はこの日までに終わらせなければいけない、と常に意識させるためにも総合工程表が欠かせません。
工期の短縮
一つひとつの作業だけに集中すると見逃しがちですが、タスク全体を見回してみると、これとこれを並行で作業できる、と気づく可能性もあります。
総合工程表を作ることで作業の効率が良くなり、結果として工期の短縮につながることもあるでしょう。
タスク管理
単にタスクを一つひとつ書き出すだけでは仕事はできません。
このタスクは先にやったほうが良く、一方で後でやったほうが良いといった具合に優先順位をつける必要があります。
総合工程表はこういったタスク管理において力を発揮するでしょう。
タスク管理ツールおすすめ8選を紹介、それぞれの特徴と料金を比較!安全管理
工事において何よりも優先すべきなのが安全管理です。
スケジュールに追われていると安全管理はままなりません。
余裕を持ったスケジュールを作るためにも総合工程表を作るようにしましょう。
施工管理で重要な安全管理とは?業務内容や資格・スキルをご紹介総合工程表の作成手順

総合工程表は工事全体の流れを見渡すために作られるものです。
そのため、作成するにもそれなりに労力がかかります。
ステップ1 施工範囲を確認する
まずは工事にあたってどこからどこまでを施工すべきなのかを確認しましょう。
ステップ2 大きな工事を拾い出す
次に施工範囲をおおまかに分割します。
これは必ずやらなくてはいけない、という大きな工事を書き出していきましょう。
ステップ3 設計図を確認する
工事を書き出す作業と並行して行ってほしいのが設計図の確認です。
設計図は工事の全体を統括する指令書といっても過言ではありません。
設計図を乱さないように工程表を作るようにしましょう。
ステップ4 現場状況を確認する
スケジュールが立派でも現場がそれに追いつけなければ机上の空論です。
現場にどれだけ人員がいるか、作業に適性のある人員は足りているか、などといったことも加味しながら総合工程表を仕上げていきましょう。
ステップ5 顧客・下請業者と打ち合わせをする
総合工程表があらかたできあがってもまだまだ完成というわけにはいきません。
それを顧客や下請業者に見せたうえで、問題点がないかを協議する必要があります。
顧客にとって納得のいくスケジュールなのか、下請業者にとって無理なく作業できるスケジュールなのかをここで確認しましょう。
ステップ6 工程表を周知する
工程表を作り、問題ないスケジュールだと確認が終わったら、後は現場監督や作業員たちに工程表を配ってください。
いわずもがな、こういったスケジュールが全員に行き渡っていないと、そもそも作業が順調に行われない可能性が否めません。
作成手順に関する記事はこちら
総合工程表の作成ツール
総合工程表は、紙と鉛筆で作れるものです。
とはいえ、作業内容が多かったり、工期が長かったりすると、いちいち書き出すのも大変になってしまうでしょう。
そこで、ここからは総合工程表を作るのに役立つツールをご紹介していきます。
エクセル
エクセルは基本的に会計や経理などに使われるソフトというイメージを持っている方もいるでしょう。
しかし、使い方によっては総合工程表のようなスケジュール作成にも役立てられるソフトです。
たとえば、バーチャート工程表のような軸を決めて作るタイプの工程表ならばエクセルでも十分でしょう。
建築業界(リフォーム・工務店向け)の【無料で使える!】工程表エクセルテンプレート集専用システム
建設を行ううえで役に立つ専用システムは多数リリースされていますが、総合工程表向けのシステムも存在します。
工程表作成ツールに関連する記事はこちら
総合工程表を作成する際のポイント

ここまでは、総合工程表の概要や作り方について解説してきました。
最後に、総合工程表を利用するうえで、ここに気を付ければもっと効果を高められるというポイントについて見ていきましょう。
総合工程表の共有を徹底する
総合工程表は、一度見ればそれで十分というものでもありません。
スケジュールは常に作業と並行しながら確認するべきものです。
そのため、1枚総合工程表を配るだけでなく、休憩室などに張り出して共有を徹底するようにしましょう。
それだけでなく、今はこの辺りまで進んでいるといった書き込みを行えば、なおさら作業員はスケジュールを意識しやすくなるでしょう。
マイルストーンを活用する
一見完璧に作ったかに見える総合工程表も、実際に作業を始めてみると不備が出てくるものです。
総合工程表に間違いはないはずだから見直す必要はなし、とタカを括っていると大きな失敗が起きかねません。
そのため、総合工程表を作る際にはマイルストーンを設置して全体のプロセスを見直す時間も設けるようにしましょう。
【建築業】工程表におけるマイルストーンとは?設定方法や注意点を解説工程表の作成が簡単!『建築業向け管理システム アイピア』
まとめ
総合工程表は、作業全体の流れを統括するには欠かせないものです。
総合工程表をずさんに作ってしまうと、作業の流れが滞ってしまいかねませんから、怠りなく作成するようにしましょう。
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