建設業界におけるグロス金額とは?ネット金額との違いやポイントを解説

建設業界におけるグロス金額とは?ネット金額との違いやポイントを解説

建築工事の見積書には、グロス金額やネット金額といった言葉が使われることがあります。
見比べると明らかに金額に差があり、これはどちらがどういう意味なのかと問われることもあるでしょう。
取引先から、結局最終的に支払うのはどの金額なのかと質問されることもあります。

工事費用の見積書で大切になるグロス金額について、ネット金額との違いも踏まえて詳しく解説します。

グロス金額とは

グロス金額は、工事費用に諸経費や消費税などを加えた総額を指すのが一般的です。
厳密な定義がないため解釈が異なる場合もありますが、『グロス(gross)』という言葉には『総量・総計』という意味があります。

そのため、通常は『支払総額』になるはずなのですが、建設業界ではそうはなりません。
建設業界には建設業界特有の言葉の使われ方があり、発注者が最終的に支払う金額はグロス金額ではなく『ネット金額』のほうになります。

ネット金額との違い

『ネット(NET)』には『正味』という意味があり、本来であれば諸経費や利益、消費税などを含まない金額がネット金額になります。
ただ、建設業界では慣例的に値引き後の金額を示す項目になりつつあり、発注者が最終的に支払う金額を意味します。

本来であればネット金額が正味の金額で、そこに利益や経費、税などを加えてグロス金額を出し、それが最終支払金額になるはずです。

しかし、建設業界では値引きの概念が先に立ち、場合によっては値引きに応じられる最低ラインを示す金額となっています。
これは建築現場の状況が常に変動することに深く関係しています。

たとえば、いざ工事を始めたら天候が悪変し、予定した工事日数に達しなかったり、手配した人員に変動が出たりすることは珍しくありません。

こうしたイレギュラーに都度対応し、逐一お金を計算し直すことは現実問題として無理があります。
そのため、見積段階でそうしたイレギュラーは見込んでおいて、最初からリスクも込みで金額提示することが慣習となりました。

つまり、建設業界におけるネット金額は、工事を請け負う側のリスク見込みやサービスが含まれた金額です。
単なる原価としての意味合いではないため、ほかの業界とは言葉の意味が異なるのがポイントです。

グロス計算の例

グロス計算する場合は、設計図を確認し、指定されている実数をそのまま計算します。
たとえば、測量10測点、測点単価50,000円の場合、

10×50,000=500,000

このほか、必要とされる経費や税金などがあれば加えて見積書を作成します。

ネット計算の例

ネット計算する場合は、必ずしも設計図の指定通りではなく、経験則から想定した内容で計算します。

たとえば、10測点のうち実質8測点以下になると予測し、測点単価50,000円とした場合、

10×50,000-値引き100,000=400,000

このほか、必要とされる経費や税金などがあれば加えて見積書を作成します。

この値引き金額は実際に減らせると、予測した2測点の分を差し引いただけなので、施工側として損失は一切ありません。
実際に減らせるかどうかは現場が始まってみなければわかりませんが、予測を盛り込むのがネット金額の計算方法です。

広告業界での使われ方

グロス金額とネット金額という言葉は建設業界のみで使われるものではなく、ほかに頻繁に登場する業界として広告業界があります。
ただし、広告業界では言葉の使われ方が建設業界とまったく異なり、勘違いするとトラブルのもとです。

一般的に広告業界で言うグロス金額は、広告費の原価と広告代理店の手数料の合計を意味します。
これに対して、ネット金額は広告費の原価だけを指し、あまり単体で使われることはありません。

ざっくりとした関係性は以下の通りです。

グロス金額-広告代理店手数料=ネット金額

広告業界でグロス金額は売価でありネット金額は原価ですが、広告主は広告代理店を介さずに広告を出すことはそもそもできません。
そのため、交渉の場では売価であるグロス金額のほうに焦点があたるのが一般的です。

一般の広告主にとって広告費=グロス金額であり、最終的に広告代理店に支払う総額になります。

マージンとは

マージン(margin)は利ざやの意味になりますが、通常は販売価格から原価を差し引いた金額になります。
ただし、広告業界の場合、マージンの計算方法にもグロス建てとネット建ての2種類があり、マージン率のかけ方で広告代理店の収入が変わってきます。

たとえば、広告原価100万円、マージン率20%の場合、グロス金額は120万円という計算になりますが、これをもとに手数料を計算すると、

ネット建て
1,000,000×20%=200,000

グロス建て
1,200,000×20%=240,000

以上のように広告代理店の収入が変化することになります。

建設業界での使われ方

建設業界でグロス金額やネット金額という言葉が登場する場合、往々にして値引き交渉の材料に使われます。
本来の意味は異なるのですが、ここには長年建設業界で使われてきた慣例や事情があると言えるでしょう。

工事の進行にはどうしても天候など自然環境が関係しますし、着工前にすべての状況を予測しきることは事実上不可能です。
常に変動する現場で、都度かかる金額を計算し直し依頼主に提示することができない以上、契約時の提示額は見込みにならざるを得ません。

もちろん、大きな差異が出ないよう適切な金額を提示する必要はありますが、実数とは異なる金額で契約し、その内容で最後まで工事を進行するのが最も妥当です。
この実稼働に即してはいない見込み金額を、建設業界ではネット金額と呼んでいます。
見積もる側からすれば、ネット金額の算出は非常に難しいと言えるでしょう。

たとえば、工事30日分のグロス金額を25日分のネット金額で契約した時、実際に20日で済めば5日分の利益ですが、計画通り30日かかってしまえば5日分の損失です。
工事工程とネット金額とは密接な関係にあり、より多い経験則と豊富な知識なくして、利益を生む見積をすることはできません。

ネット価格によって見積を安く見せる方法

経験の深い工事担当者が建設業界のネット価格交渉の慣習を踏まえれば、依頼主に対して見積をより安く見せることは可能です。
前述した測量10測点、測点単価50,000円の場合を見ればわかりますが、最初から測点は8以下に減らせると算段し、その分大きく値引きしたように表示することができます。

実際にかかるであろう工事の内容や金額、実施数や材料の必要量などがより明確に予測できれば、その分を値引きとして見積に明示し、アピールすることができるでしょう。
グロス金額はネット金額をより引き立たせるために利用することが可能です。

ただしこれは、実際の工事がどのように進むかを理解しているからこそできる技です。
この例で言えば、測点が減らせれば減らせるほど利益が増えますが、8より多ければ損失になります。

設計時点では念のため余裕を持って指定されている場合も多いため、多少の値引き余地があることは事実でしょう。
ただ、実際のところは工事がスタートしてみないことにはわからないことの多いため、予想とは違う方向へ進むリスクは常にあります。
やみくもな値引きはトラブルの火種になるため、見積は慎重に行うことが重要です。

グロスかネットか確認が必要

ここまで工事を請け負う側の視点で見てきましたが、見積を取る側に立った場合の注意についてもまとめておきましょう。

当然ながら提示された金額がグロスなのかネットなのかは確認を要しますが、単に言葉だけ聞いて納得するのはリスクです。
グロスに関してはあまり差異はありませんが、ネットの捉え方は同じ建設業界でも企業によって解釈が異なる場合も存在します。
言葉だけに惑わされず、どの金額が何を示すのか、最終的に支払う金額はいくらになるかを確実に把握してください。

また、無暗な値引き交渉を持ち掛けるのではなく、数字の裏付けを持ったうえで理論的に交渉を行うのが最も安全な策です。
原価はいくらか、手数料はいくらか、不明な点は意味を質問し、価格交渉へ臨みましょう。

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まとめ

グロス金額やネット金額といった言葉は、建設業界だけでなくマーケティング業界などでも頻繁に使われています。

ただ、それぞれの業界で特有の使われ方をしてきた経緯があり、企業によっても言葉の解釈が大きく異なる場合があります。

見積を提出する側も見積を提示される側も、単に言葉に振り回されるのではなく、どの金額が何を示しているのか理解することが重要です。
また、その金額の根拠を明確にしておく必要があります。

特に見積もりする側であれば、安易な値引きは企業の損失を招きかねません。
実際にどのような工事が可能か進行を予見しつつ、適正で利益の出せるネット金額を提示しましょう。

見積書の作成に時間がかかる場合、エクセル感覚で見積書を作成できるテンプレートが有効活用できます。
また、より適切な数字を得るためには過去の見積を検索し、取り込むことで作成時間を大幅に短縮することも可能です。


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