「将来は土木工事関係の仕事に就きたい」、「土木工事に携わっていてキャリアアップを目指したい」と考えているなら土木施工管理技士の資格を取得するのがおすすめです。
資格を取得することで仕事の幅が広がりますし、より責任の大きな仕事に携わることができるからです。
では、土木施工管理技士になることでどのようなメリットがあるのでしょうか。
また、土木施工管理技士になるにはどうしたら良いのでしょうか。
ここでは、土木施工管理技士について詳しく解説していきます。
土木施工管理技士とは
土木施工管理技士は、国土交通省の管轄する国家資格であり、電気工事・建築・管工事といった施工管理技士国家資格の中の一つです。
資格には1級と2級があり、1級資格を取得した者は監理技術者もしくは主任技術者として、2級を取得した者は主任技術者として土木工事の現場における管理者として働くことができます。
土木施工管理技士に関する記事はこちら
土木施工管理技士の仕事内容
土木施工管理技士には、1級と2級があることはすでに述べた通りですが、それぞれに従事できる仕事の内容が異なります。
1級の資格を取得した者は、あらゆる土木工事において監理技術者として従事することができます。
土木工事には河川工事や道路工事、橋梁工事、港湾工事、トンネル工事、上下水道工事などがありますが、そのような工事現場で作業が円滑に進むようにスケジュールを管理したり、求められている品質を満たしているかをチェックしたりするのが主な仕事です。
また、工事現場で作業員が安全に作業できるように安全管理を行うのも1級土木施工管理技士の大切な仕事になります。
一方、2級土木施工管理技士の場合は監理技術者ではなく主任技術者として仕事に従事することになります。
また、従事できる仕事は「土木」「薬液注入」「鋼構造物塗装」に限定され、1級土木施工管理技士のようにあらゆる現場を担当できるわけではありません。
なお、1級土木施工管理技士も主任技術者として土木工事に携わることができます。
2級土木施工管理技士が主任技術者になることができるのは、工事発注額が4,000万円未満の工事現場に限られますが、1級土木施工管理技士の場合は4,000万円を超える工事現場でも主任技術者になることが可能です。
土木施工管理技術検定の概要
土木施工管理技術検定は、一般財団法人全国建設研修センターによって1年に2回実施されています。
1級土木施工管理技士になるためには1級の検定を、2級土木施工管理技士になるためには2級の検定を受検して合格しなければなりません。
1級・2級ともに第一次検定・第二次検定があります。
受験手数料は、1級が第一次検定・第二次検定ともに10,500円、2級は第一次検定・第二次検定ともに5,250円です。
2021年度の試験から「技士補」という新しい資格が付与されるようになりました。
これは、第一次検定には合格したものの第二次検定に不合格となってしまった者に対して付与される資格であり、技士補を取得した者は次回から回数に制限なく第二次検定から受験をすることが可能になります。
1級土木施工管理技術検定
1級土木施工管理技術検定は第一次検定(学科)と第二次検定(実地)に分かれています。
第一次検定の受験者数は2021年度が37,726人で合格者が22,851人(合格率60.6%)、2020年が受験者29,745人に対して合格者が17,885人(合格率60.1%)となっています。
直近5年間を見てみると、受験者数が3万人前後で合格者が2万人前後、合格率は60%前後で推移していて大きな変化はありません。
第二次検定は2021年度が26,558人で合格者が9,732人(合格率36.6%)、2020年が受験者24,204人に対して合格者が7,499人(合格率31.0%)となっています。
こちらの直近5年間の合格率は30~45%、平均35%ほどです。
受験資格
受験資格は第一次検定と第二次検定で異なります。
CHECK01
第一次検定の受験資格
次のイ、ロ、ハ、ニのいずれかに該当する者
(イ)
- 大学または専門学校(「高度専門士」に限る)を卒業し、卒業後に指定学科における土木施工の実務経験が3年以上、もしくは指定以外の学科での実務経験が4年6ヶ月以上あること。
- 短期大学卒業者、高等専門学校卒業者、専門学校卒業者(「専門士」に限る)で、卒業後に指定学科における土木施工の実務経験が5年以上、もしくは指定以外の学科での実務経験が7年6ヶ月以上あること。
- 高等学校・中等教育学校卒業者、専門学校卒業者(「高度専門士」「専門士」を除く)で、卒業後に指定学科における土木施工の実務経験が10年以上、もしくは指定以外の学科での実務経験が11年6ヶ月以上あること。
- 上記以外の学歴の場合は実務経験が15年以上あること。
(ロ)高等学校卒業者、中等教育学校卒業者、専修学校の専門課程卒業者で卒業後8年以上の実務経験(その実務経験に指導監督的実務経験を含み、かつ、5年以上の実務経験の後専任の監理技術者による指導を受けた実務経験2年以上を含む)があること。
(ハ)専任の主任技術者の実務経験が1年以上ある者、高等学校卒業者、中等教育学校卒業者、専修学校の専門課程卒業者で卒業後に指定学科における土木施工の実務経験が8年以上、もしくは指定以外の学科での実務経験が9年6ヶ月以上あること。
その他の者で実務経験が13年以上あること。
(ニ)2級合格者
CHECK02
第二次検定の受験資格
次のイ、ロ、ハのいずれかに該当する者
(イ)1級土木施工管理技術検定・第一次検定の合格者
(ロ)1級土木施工管理技術検定・第一次検定において、(1)ニに該当する者として受検した合格者のうち(1)イ、ロ、ハ又は次のいずれかに該当する者
- 2級合格後3年以上の者で合格後1年以上の指導監督的実務経験及び専任の監理技術者による指導を受けた実務経験2年以上を含む3年以上土木施工に関する実務経験があること。
- 2級合格後5年以上の者で合格後5年以上土木施工に関する実務経験があること。
- 2級合格後5年未満の高等学校卒業者、中等教育学校卒業者、専修学校の専門課程卒業者で、卒業後に指定学科における土木施工の実務経験が9年以上、もしくは指定以外の学科での実務経験が10年6ヶ月以上あること。
- その他の者で土木施工に関する実務経験が14年以上あること。
- 専任の主任技術者の実務経験が1年以上ある2級合格者で合格後3年未満の者、かつ短期大学卒業者、高等専門学校卒業者、専門学校卒業者(「専門士」に限る)を卒業後7年以上指定学科以外での土木施工に関する実務経験があること。
もしくは高等学校卒業者、中等教育学校卒業者、専修学校の専門課程卒業者で卒業後に指定学科における土木施工の実務経験が7年以上、もしくは指定以外の学科での実務経験が8年6ヶ月以上あること。
(ハ)第一次検定免除者
試験科目・試験内容
第一次検定の試験科目は土木一般・専門土木・法規・共通工学・施工管理法で、すべて四肢択一のマークシート方式で行われます。
共通工学20問と施工管理法15問は必須問題、土木一般は15問中12問、専門土木は34問中10問、法規は12問中8問に回答する選択問題です。
第二次検定は必須問題3問、選択問題4問の合計7問をすべて記述式で回答します。
必須問題は施工管理経験、コンクリート、施工計画の3分野、選択問題は土工・品質管理・安全管理・建設副産物など8問の中から4問を回答します。
試験日
第一次検定:令和4年7月3日(日)
第二次検定:令和4年10月2日(日)
2級土木施工管理技術検定
2級土木施工管理技術検定も第一次検定(学科)と第二次検定(実地)に分かれています。
第一次検定の受験者数は、2021年度が30,160人で合格者が21,876人(合格率72.5%)、2020年が受験者33,625人に対して合格者が23,562人(合格率70.1%)です。
試験制度変更の影響により合格率は上昇傾向にあります。
第二次検定は2021年度が29,112人で合格者が11,838人(合格率40.7%)、2020年が受験者29,640人に対して合格者が13,014人(合格率43.9%)となっています。
直近5年間の合格率は35~45%ほどです。
受験資格
(1) 2級土木施工管理技術検定・第一次検定
令和4年度の末日における年齢が17歳以上の者(平成18年4月1日以前に生まれた者)
(2) 2級土木施工管理技術検定・第二次検定
次のイ、ロのいずれかに該当する者
(イ)2級土木施工管理技術検定・第一次検定の合格者で、次のいずれかに該当する者
- 大学または専門学校(「高度専門士」に限る)を卒業し、卒業後に指定学科における土木施工の実務経験が1年以上、もしくは指定以外の学科での実務経験が1年6ヶ月以上あること。
- 短期大学卒業者、高等専門学校卒業者、専門学校卒業者(「専門士」に限る)で、卒業後に指定学科における土木施工の実務経験が2年以上、もしくは指定以外の学科での実務経験が3年以上あること。
- 高等学校・中等教育学校卒業者、専門学校卒業者(「高度専門士」「専門士」を除く)で、卒業後に指定学科における土木施工の実務経験が3年以上、もしくは指定以外の学科での実務経験が4年6ヶ月以上あること。
- 上記以外の学歴の場合は実務経験が8年以上あること。
(ロ)第一次検定免除者
試験科目・試験内容
第一次検定の試験科目は土木一般・専門土木・法規・共通工学・施工管理法、すべて四肢択一のマークシート方式で行われます。
共通工学4問と施工管理法15問は必須問題、土木一般は11問中9問、専門土木20は問中6問、法規は11問中6問に回答する選択問題です。
第二次検定は必須問題5問、選択問題2問の合計7問をすべて記述式で回答します。
必須問題は施工管理経験1問、コンクリート2問、土木関係2問となっています。
選択問題は施工計画法4問の中から2問を回答します。
試験日
前期(第一次検定・種別は土木のみ):令和4年6月5日(日)
後期(第一次検定・第二次検定):令和5年1月13日(金)
資格取得のメリット
土木施工管理技士に合格することで、土木工事の作業現場における管理者としての能力が公的に認められることになります。
これによって具体的に次のようなメリットが生まれます。
キャリアアップにつながる
すでに説明したように、1級資格を取得すれば監理技術者として、2級資格を取得すれば監理技術者として仕事に従事することが可能になります。
現場のスケジュール管理や安全管理といった業務は、一般の作業員では行うことができないことですから責任は大きなものになりますが、貴重な経験を通じて社内での存在感を高めることができます。
もちろん、昇給や昇進などキャリアアップにも直結するでしょう。
大規模な工事に関われる
建設業法では、発注者から直接請け負った建設工事を施工するために請け負った代金の額の合計が4,000万円未満の場合には主任技術者を、代金の額の合計が4,000万円(建築一式工事の場合は6,000万円)以上となる場合には、主任技術者に代えて監理技術者を配置しなければなりません。
主任技術者や監理技術者になるためには、土木施工管理技士の資格が必要となりますから、資格を取得することで大規模な工事に関わることができるようになります。
建築業の資格に関する記事はこちら
施工管理システムなら『建築業向け管理システム アイピア』
まとめ
土木施工管理技士は受験資格が複雑でわかりにくいですが、資格を取得することでキャリアアップにつながりますし、活躍のフィールドも大きく広がります。
1級の第二次検定は合格率が30%台ですから決して簡単に取得できる資格ではありませんが、メリットを考えれば十分に挑戦するに値する資格です。
可能ならば専門学校なども利用して効率的に資格取得を目指してみましょう。