建築基準法とは?重要な規定や令和5年の改正内容を詳しく解説

建築基準法とは?重要な規定や令和5年の改正内容を詳しく解説

一戸建てやマンション、店舗などを建てる時には、皆が安心して過ごせる建築物になるように規定があります。

この記事では、建築基準法の概要や、単体規定、集団規定、形態規制について紹介していきます。
ほかにも、建築基準法における災害対策や令和5年の改正されたポイントについても解説していきます。

建築基準法とは

住宅や店舗など人が過ごす場所は、快適で安心安全でなければいけません。
そのために、詳しく建築の構造や整備、用途などに関して守らなければいけない規定を定めたものが建築基準法になります。

もし基準がない状態であれば、いざ何かあった時に住宅がすぐに壊れてしまう危険性もあります。
特に日本では地震が多いので、震度6クラスの揺れが来ても耐えられないと命に関わってくるかもしれません。
建築基準法では、大地震がいざ起きても大丈夫なように法律が制定されています。

建築基準法の目的

もし土地の所有者が自由に建物を建てたら、仮に大きな事故が起きてしまった場合、対応できない可能性があります。

特に建物を土地いっぱいに建ててしまうと、周りの日当たりが悪くなる、火事になった時延焼のリスクが高くなるなど問題が出てきます。
必ず火事が起きるわけではありませんが、万が一のために対策をしておかないと、いざ起こってしまった時に大変です。

このようなリスクを回避し、安心して安全に過ごすことができるようにと、建築基準法は制定されています。

建築基準法

建築基準法の内容

建築基準法では、人々が安心で安全に過ごせるように細かく内容が決まっています。
建築物の設備や構造、敷地や用途などに関するさまざまなルールがあります。

単体規定

建築物そのものが安全で安心して住めるかを見るための基準が決められているものを、単体規定と言います。
北海道から九州や沖縄まで全国共通の規定があり、しっかりと守らなければならないことになっています。

建築物の耐久性や耐震性、換気や電気設備などがしっかり確保されているかが、基準とされています。

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集団規定

単体規定に対して、建物の大きさに関しての規定が決められているのが、集団規定です。
皆が住み心地良い街づくりのための都市計画において、高さや面積など建物に関する大きさを規定しています。

敷地と道路に関する基準や容積率、高さ制限などが規定されています。

建築基準法の単体規定とは

建築基準法の中でも単体規定では、いくつかの最低ラインが設定されています。
どんな単体規定が設定されているのか、詳しく紹介していきます。

敷地の衛生・安全

建物の敷地は、もともと水田や海であった場所、山や岩盤であった場所などさまざまです。
中でも、水田などの水を利用していた土地は緩く、何もしないまま住宅を建ててしまったら大地震が来た時などに崩れやすくなります。
万が一土地が雨や大地震で緩んでしまった時にも耐えられるように、強固な地盤が必要です。

心配な地盤に住宅を建てる場合は、盛土や地盤改良を行わなければなりません。
安全が確認できたところで、初めて住宅が建てられるように規定されています。

ほかにも、雨水や汚水の排水などが問題なく行えるようにしなければならないなど、敷地の衛生や安全について規定が定められています。

構造耐力

建物がどんなに素敵な外観をしていても、いざ台風や地震が来た時にすぐ崩れてしまうようでは良くありません。

そのため、建物が地震や台風などの被害に遭ってしまったとしても耐えられるかという点も、建築基準法では見られます。
一定の基準を満たさなければならず、構造を計算して判定します。

さらに建物によっては、地階は除いた階数が4以上の建物や延面積が3,000mを超える場合などは、構造耐力はさらに厳しく見られているので覚えておきましょう。

防火・避難

もしも火事が発生してしまったら、建物の中にいる場合は、避難に時間がかかってしまう可能性もあります。
そのため、まずは火事が起きにくい建物や設備であること、避難しやすい環境が求められます。

万が一、火事が起きてしまった後もほかに延焼することがないように、屋根や外壁も防火素材を使用していなければなりません。

特殊建築物や電気設備に関しても規制があります。

【建築業】消防法とは?改正事項や危険物についても解説します

一般構造・設備

住宅などの建築物で過ごすにあたって安心して過ごせるように、ほかにも規制があります。
部屋に光がしっかりと入る家になるように採光や換気の規制、アスベストに関する規制などです。

建築材料も長く安心して住めるように、品質についても規制を行っています。

建築基準法の集団規定とは

土地を購入したからといって、自分たちが思うように好き勝手にして良いわけではありません。
こんな建物にしたいと理想はあるかもしれませんが、建築基準法にそぐわない家は建てられません。

ここからは、建築基準法の集団規定について紹介していきます。

接道規制

建築物を建てる場合、道路にも基準があります。
道路はすべて黒いコンクリートになっていれば対象なわけではなく、都市計画区域内にある幅員が4m以上のものと決まっています。

準都市計画内にあってもOKです。
4mかどうか測る時には、側溝や歩道も入れます。

さらに、敷地も道路に2m以上接していなければならない決まりがあり、守れなければ建築物を建てられません。
普通の土地であればこの条件をクリアしますが、旗竿地になると規定に達しないケースもあります。

万が一4mに道幅が満たない場合でも、道路の中心からセットバックさせて2mバックさせられれば特別に建物を建てられます。
この場合、道路のギリギリまで住宅を建てたいと思っても、道路が4mに満たないため、必ずバックさせて建てなければなりません。

用途規制

閑静な住宅街の中に工場ができてしまったら、騒音や空気の汚染などによって、住み心地が悪くなってしまいます。
街にも統一感がなくなってしまいますし、せっかく高いお金を出して新築住宅を購入したにもかかわらず引っ越さなければいけないような状況に陥ってしまかもしれません。

そのため、建てられる建物の用途に制限を設けることで、皆が快適に暮らせるように工夫を行っています。

用途地域は、大きく分けると3つに分かれますので、以下で詳しくご紹介していきます。

住居系

住居系もさまざまな地域に分かれ、どの地域になっているかで建てられる階数や店舗などが決まってきます。

住居系では、

  • 第1種低層住居専用地域
  • 第2種低層住居専用地域
  • 第1種中高層住居専用地域
  • 第2種中高層住居専用地域
  • 第1種住居地域
  • 第2種住居地域
  • 準住居地域

以上の7つに分けられます。

商業系

住宅として住むのではなく、商売をメインに考えている時には商業系の地域に店舗を構えなければいけません。
近隣商業地域、商業地域に分かれます。

工業系

何かを製造するための工場を作りたい時には、住宅系や商業系には建てられません。
準工業地域、工業地域、工業専用地域の中から目的に合わせて土地を選ぶ必要があります。

形態規制

建物の形態もなんでもOKにしてはいません。
安全で安心に暮らせるように、形態にも規制があります。

ここからは、どんな形態規制が行われているのか紹介していきます。

容積率

土地の大きさに対して、どの程度の面積であれば建てても良いかを決めたものを容積率と言います。
容積率の求め方は、延床面積(平方メートル) ÷ 敷地面積(平方メートル)×100で出てきます。

生活するうえで水や電気などのインフラは重要ですが、もし容積率を無視して好き勝手に住宅を建ててしまうと量が足りなくなり、皆がインフラを使えなくなり対処もできません。
事前にそうならないように、インフラを住んでいる人に届けられるように容積率があります。
建築物や公共施設とのバランスも確保します。

建蔽率(建ぺい率)

土地を購入したら自由に住宅を建てられると思ってしまうかもしれませんが、そんなことはありません。
建蔽率(建ぺい率)で購入した土地のどのくらいを使えるのか計算し、それにもとづいて住宅を建てなければなりません。

好き勝手に建ててしまうと、風通しや日当たりが悪く、いざ火事が起きた時すぐに延焼してしまうような住宅になってしまう危険性が出てきます。
防火地域や角地になると建蔽率(建ぺい率)が緩和されます。

高さ制限

建物がお互いに日当たりを遮らないように、高さにも制限があります
高さを5階建てにしたいと思っても、上限が決まっている地域ではそれ以上建てられません。

さらに、高さの制限には、絶対高さ制限のほか、道路斜線制限などさまざまあります。
特に第1種・第2種低層住居専用地域では、絶対高さ制限があり細かく決まっています。

道路斜線

建物が好き勝手に建ち、道路には光が当たらないようになったら大変です。
そのため、道路の明るさや環境確保のため、道路斜線が決まっています。

また勾配は、それぞれ用地地域によって変わります。

隣地斜線

住宅は隣り合って並ぶような場所も多く、お互いが快適に暮らせなければいけません。
そのため、隣地の日光の当たりや環境を守るために制限があります。

低層住宅専用地域では、別に絶対高さ制限があるため関係ありませんが、それ以外では地面から20mを超える部分から制限がかかります。

北側斜線

北側にもしっかりと日光が当たるようにと設けられている制限で、距離に応じて制限の高さが変わってきます。

日影規制

隣地の敷地に対して、冬至日を基準に、決められた時間以上の日影ができないようにするために決まっています。
もし規制がなければ、長い時間日陰になってしまい建物に日光が当たらなくなってしまう可能性が出てくるためです。

日影規制も、用途地域ごとに規定も変わってきます。

外壁の後退距離

外壁の後退距離は、建物外壁と敷地境界線までの距離を1.5mとしています。
適用される用途地域は、第1・2種低層住居専用地域、田園住居地域になります。

建築基準法における災害対策

日本では大地震も起きやすいですし、乾燥しやすい時期には火事がある時もあります。
そのため、事前に災害を防げるようにと、さまざまな災害対策を行っています。

防火地域

簡単に火事が起きないように、都市計画の中で火災を防止するために最も厳しい建築制限が設けられている地域があります。

たとえば、主要な駅周辺などはさまざまな人が利用する場所でもあるので、対象になっている場合がほとんどですし、繁華街と呼ばれる地域もこの防火地域に入っています。

準防火地域

防火地域ほど厳しくはありませんが、それでも次に厳しい基準が設けられている地域を準防火地域と呼びます。
準防火地域に関しては、駅周辺や繁華街から外側の広範囲です。

法22条区域

一番防火面においてはそこまで厳しくない地域を法22条区域と呼んでいます。
準防火地域よりもさらに外側にある地域が法22条区域にあたります。

令和5年の建築基準法改正のポイント

安全で安心に暮らせるようにと、日々建築物の規制制度は進化しています。
令和5年となる今までも、これまでのトラブルなども踏まえながら、改正しています。

今回の改正は、大阪市北区ビル火災を踏まえたものになっているのもポイントです。
今後何かトラブルが起きても悲惨な状態にならないように、技術的検証結果も踏まえた改正を行っています。

定期調査の指定可能対象範囲を拡大

今までよりも、定期的に防火対策などが採られているのか、定期的調査の指定の建物を拡大しています。

大阪市北区で発生したビル火災を契機に、これまで対象に入っていなかったビルや事務所などの建築物も対象です。
具体的には3階以上で延面積が200平方メートルを超える事務所等の建築物が定期調査報告の対象となります。

物流倉庫などに設けるひさし部分の建蔽率規制を合理化

これまでよりも、物流を効率化させるためにひさしの設置を容易にすると決まりました。
建蔽率規制の合理化を図るため、これまでよりも大規模なひさし設置を簡単に行えるようになります。

耐火性能に関する技術的基準を合理化

今までは階数に応じて要求される耐火性能基準が60分刻みで表されていたものを、30分刻みへ精緻化すると決まりました。
合理的に基準を細かくしたことで、より基準がわかりやすくなりました。

無窓居室の避難規制を合理化

無窓居室であっても、避難経路がしっかりと安全に処置が採られているのであれば、主要構造部(壁、柱等)を耐火構造などとしなくても良いされています。

さらに、地上につながる直通階段までの距離を延長すると決まっています。
窓がない部屋での避難方法も合理化されました。

建築業向け管理システム『アイピア』

建築業向け(リフォーム・工務店)管理システム アイピア

アイピアは建築業に特化した一元管理システムであり、顧客情報、見積情報、原価情報、発注情報など工事に関する情報を一括で管理できるため、情報集約の手間が削減されます。
さらに、アイピアはクラウドシステム。外出先からでも作成・変更・確認ができます。

まとめ

皆が安心して安全に生活できるように、建築基準法では細かくルールが決まっています。
特に急に起きる地震や家事にも対応できるように、災害対策がされている場合や皆が快適に住めるように用途規制なども行われています。

建築基準法があるからこそ、皆が安全で安心して生活できる建物が建っているといっても良いでしょう。

過去の教訓を活かし、令和5年にも建築基準法が改正されていますので、こちらも一緒にチェックしておくと良いでしょう。

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