建築業において利益を確保していくうえでは、費用の計算が重要になります。
どんな経費がいくらかかるかを把握して経営戦略に活かしていく必要もあります。
この記事では、建築業における一般管理費について解説していきます。
建築業ではさまざまな費用が登場するため、現場管理費との違いや計算方法等を確認していきましょう。
建設業における一般管理費とは
一般管理費は企業の経営を維持、管理するための費用の総称で、工事現場にかかる費用とは区別されます。
本社や営業所などの運営や維持にかかる費用のことです。
しかし、一般管理費は、工事にかかる費用である工事価格に含まれます。
工事価格は、工事原価と一般管理費の合計を指します。
工事で利益を得るためには、現場に必要な費用だけでなく、本社等で必要な費用を考慮する必要があります。
そのため、工事価格を算出には、工事に必要となる費用に加えて、一般管理費も加算されます。
工事原価との違い
工事原価とは、請け負った特定の建築工事において、工事現場でかかる費用や建材や資材など現場で使うものの仕入費用の総額です。
工事原価は、直接工事費+現場管理費+共通仮設費で構成されます。
工事原価も建築現場や工事に直接関わる費用の総額なので、会社や営業所の維持管理に必要な一般管理費とは異なります。
現場管理費との違い
現場管理費と一般管理費の違いは何でしょうか。
現場管理費は、工事現場を維持、管理するために必要な費用です。
たとえば現場監督の給料や工事現場の事務所で使用する事務用品費、工事に関わる保険料などが該当します。
対して、一般管理費は、会社の維持に必要な費用です。
たとえば、本社の従業員の給料や、福利厚生費、ライフラインの料金などが該当します。
共通仮設費との違い
共通仮設費は現場の工事を進めるために必要となる仮設物等の費用をさします。
たとえば、工事用フェンスの施工費用や現場事務所、休憩所、仮設トイレの設置費用などが共通仮設費に含まれます。
共通仮設費も工事現場で発生する費用なので、会社や営業所の維持管理に関わる一般管理費とは異なります。
一般管理費に関連する記事はこちら
建設業における一般管理費の内訳
建設業における一般管理費は、さらに細かく項目が分けられます。
具体的にどのような費用が分類されるのか、内訳を見ていきましょう。
人件費に関する費用
一般管理費のひとつに、人件に関する費用が挙げられます。
本社や支店、営業所などで働く従業員の給与や社会保険料、福利厚生費などの人件費が該当します。
工事現場で働く現場作業員の人件費は含まれません。
物件にかかる費用
次に、物件に関する費用が挙げられます。
物件とは、本社や支店、営業所などの建物や本社などで所有している建設機械などのことです。
建物の家賃をはじめ、建物を維持管理、利用するために必要となる水道光熱費や通信料も含みます。
また、建設機械を工事現場で直接使用する費用ではなく、所有によって発生する減価償却費やメンテナンス費用が物件にかかる費用に該当します。
そのほか、建物などの火災保険料や車両の自動車保険料、その他の損害保険料なども物件にかかる費用です。
税金に関する費用
また、税金に関する費用も一般管理費に含まれます。
本社や支店、営業所などの土地や建物、設備などにかかる固定資産税や不動産取得税、道路占有料が該当します。
その他の費用
これらの人件や物件、税金にかかる費用に分類しない諸経費もあります。
例えば、広告宣伝費や交際費などは、その他の費用となります。
一般管理費に関連する記事はこちら
一般管理費率とは
一般管理費は、実際にかかる費用をひとつずつ積み上げて算出することができます。
しかし、国土交通省では、一般管理費を工事原価に対して一定の割合以上にしなくてはならないとルールを定めています。
この工事原価に対する一般管理費の割合を一般管理費率といいます。
なぜ、一般管理費率が定められているのでしょうか。
工事の受注においては、どのような規模の工事であっても、同業他社と価格競争が生じます。
多くの企業では、少しでも安い価格を表示して自社が選ばれるため、工事に直接関わる費用ではなく、一般管理費を削る企業が少なくありません。
しかし、実際に必要な金額以上に、一般管理費を削ってしまうと、従業員や会社の経営にも影響が生じます。
そのため、必要以上に一般管理費を削ることがないよう、工事原価に対する一般管理費率を守るように定められていますに。
一般管理費等率の変更
国土交通省によって工事原価に対する一般管理費等率は、2022年4月に変更されています。
工事原価が30億円超のとき、その上限は、7.47%から9.74%に改定されました。
工事原価が500万円以下のときは、上限が22.72%から23.57%に引き上げられました。
また、工事原価が500万円超~30億円以下の場合も、割合が引き上げられました。
Cp=工事原価(円)とするとき、これまで一般管理費率は -5.48972×Log(Cp)+59.4977でした。
しかし、2022年4月以降は、一般管理費率は-4.97802×Log(Cp)+56.92101となります。
一般管理費率は工事原価の金額によって3つに区分に分かれているため、正しい一般管理費率を確認するようにしましょう。
『建築業向け管理システム アイピア』
まとめ
建設業における一般管理費とは、会社の経営・維持のために必要な経費のことです。
工事原価に含まれる現場管理費と共通仮設費、直接工事費等は、一般管理費とは異なります。
建設業の一般管理費は、人件費に関する費用、物件にかかる費用、税金に関する費用、その他の費用で構成されます。
一般管理費は、工事原価の一定の割合以上にする必要があります。
2022年4月以降は、この一般管理費率の上限が工事原価毎に引き上げられているため、よく確認しましょう。
原価管理の基礎に関する記事
- 原価管理とは?メリットや効果的な管理方法をご紹介
- 原価計算とは?目的や計算方法を詳しく解説
- 原価管理をきちんと行うためのABC(活動基準原価計算)計算方法やメリットも解説
- 【リフォーム業界向け】原価計算書を作成して粗利率低下を防止