適格返還請求書とは?記載項目や注意点をご紹介

適格返還請求書とは? 記載項目や注意点をご紹介

2023年にインボイス制度が実施されて以降、新たにさまざまな書類を処理する必要が出てきました。
今回は、そのうちの一つである適格返還請求書について解説していきます。
適格返還請求書とはなぜ発行する必要があるのか、似たような適格請求書とまとめて処理しても良いのか、どのように書けば良いのかなどの疑問があるでしょう。
今回は、それらの疑問を解決していきます。

適格返還請求書とは

インボイス制度が施行されて以降、商品やサービスを販売する時には適格請求書を発行しなければいけません。
一方で、中には事前に用意された適格請求書の値段よりも商品が値引きされたり、そもそもの商品が返品されたりする時もあるでしょう。
この時、業者は適格請求書とは別に、適格返還請求書というものを発行しなければいけません。

適格返還請求書とは、簡単に言えば、売上金の一部ないし全部を買い手に返還しました、ということを証明する書類です。 ちなみに、適格返還請求書が必要となるケースとして、返品や割引などのほかにも販売奨励金や事業分量配当金などが挙げられます。 発行すべきケースがたくさんあって悩ましいところですが、ともかく買い手にお金を返した時に発行するものと覚えておけば間違いはありません。

仕入税額控除を受けるために必要

この適格返還請求書は買い手も必ず保存しなければいけません。
買い手にとってこの書類はどんな局面で役に立つのでしょうか。

まず、適格返還請求書は仕入税額を計算するにあたって欠かせません。
消費税は売上の分から仕入額を差し引いて計算するものです。
この仕入れの段階でどれだけお金がかかったかを明らかにするためにも、適格返還請求書がなくてはなりません。

仮に適格返還請求書がなかったとしたら、正確な仕入額がわからなくなり、控除が受けられない可能性さえ出てきてしまいます。
こうしたことを防ぐためにも、もらった書類や電子データなどはすぐに保存するよう心がけましょう。

適格返還請求書が不要な場合

まず押さえておかなければいけないのは、適格返還請求書を発行するのは売り手の義務ということです。

ただし、中には発行しなくても良いケースもあります。
まずは売上から差し引いた金額が税込で1万円以下だった場合です。
少額の返還にいちいち請求書を発行していると業務が煩雑になってしまいます。
それを防ぐために、こうした例外が設けられるようになりました。

また、電車や新幹線の切符を買った場合や自動販売機などで商品を買った場合も、3万円以下であれば適格返還請求書の発行は不要です。

適格返還請求書の記載項目

適格返還請求書は先程も見たように、消費税の控除を受けるにあたって欠かせない書類となります。
そのため、発行する側は正確に記載をしなければいけません。
ここからは、適格返還請求書を発行するために必ず記載しなければいけない項目について、一つひとつ解説していきます。

適格請求書発行事業者の氏名または名称

どの事業者が適格返還請求書を発行したかは必ず銘記しなければいけません。
これが書かれていなければ、請求書の信憑性が定かでなくなってしまいます。
事業者の名前についても、株式会社や有限会社など、正確な名称で記すようにしましょう。

適格請求書発行事業者の登録番号

インボイス制度が施行されて以降は、事業者は国税庁に登録したうえで登録番号を受け取らなくてはいけません。
そして、適格返還請求書や返還請求書には必ずこの登録番号を記載する必要があります。
登録番号はTから始まる13桁の番号なのですが、もしも忘れてしまった場合は国税庁のサイトで確認するようにしましょう。

対価の返還等を行う年月日

割引や返金を行った日を正確に記しましょう。
この項目が間違えていたら書類そのものに信用がなくなるので確実に記載しなくてはいけません。

対価の返還等のもととなった取引を行った年月日

たとえば、返品をもとに適格返還請求書を発行する場合、返品された商品を売った時の日付もさかのぼって記載しなくてはいけません。
この項目を書くことによって、なぜ適格返還請求書を発行しなければならなくなったのか、という整合性が取れるようになります。

対価の返還等の取引内容

そもそもなぜ適格返還請求書を発行するのか、という理由を記す欄です。
返品が原因の取引なのか、割引が原因の取引なのかを記載しましょう。

税率ごとに区分して合計した対価の返還等の金額

ここでは、返還した金額のうち、税抜きの金額を記さなくてはいけません。
ちなみに、日本では消費税が10%の品目と8%の品目に分けられているので、商品ごとに細かく税率を分けて書かなくてはいけません。
たとえば、税抜き500円の食品と税抜き1,000円のお酒をそれぞれ買い手が返品してきたとしましょう。
この場合は、8%の対象となる分は500円、10%の対象となる分は1,000円と2つの項目を書かなければいけません。

対価の返還等の金額に係る消費税額等又は適用税率

返還した金額のうち消費税がどのくらい含まれているかをここで記載します。
先ほどの食品とお酒の例であれば、8%の分は40円、10%の分は100円が消費税額です。

適格返還請求書の注意点

ここまで、適格返還請求書の概略とその書き方について見てきました。
一つひとつの作業自体は煩雑ですが、処理に慣れれば誰でも簡単に発行できる書類と言えるでしょう。
これらの要点を踏まえたうえで、最後に適格返還請求書を取り扱ううえで注意しておきたいポイントについて解説していきます。

適格請求書と適格返還請求書を一つにまとめることができる

今回は適格返還請求書にフォーカスしながら話を進めていますが、一方でインボイス制度においては適格請求書もなくてはならないものです。
これら2枚の請求書を逐一発行しなければいけないのはやや手間でしょう。
返品のように、適格請求書の発行と適格返還請求書の発行の間にラグがあるならともかく、割引や販売奨励金のように、一度に取り扱える取引の場合はこの手間を省略できそうなものです。
実は、適格請求書と適格返還請求書は一括にできます。

とはいえ、一枚の書類にまとめるにしてもそれぞれのルールはしっかりと守るようにしましょう。
最初に、2種類の請求書のそれぞれに必要な項目は必ず記す必要があります。
そして、どの部分が適格請求書の項目で、どの部分が適格返還請求書の項目かははっきりと区分けしなくてはいけません。
こうした処理を行っていないと、適格返還請求書が発行されていないなどと買い手との間でトラブルになる可能性もあるのでしっかりと記入するようにしましょう。

保存期間と保存形式を確認する

先ほど、買い手はもらった適格返還請求書を保存する義務があるという話をしました。
一方で、こうした取引に関する書類には必ずいつまでに保存するべきという期間と、こういった形で保存しなければいけないという形式があります。
適格返還請求書の保存期間と保存形式はどのように定められているのでしょうか。

まず保存期間については7年間とされています。 開始日は少しややこしく、課税期間の末日から2ヶ月と1日経った日です。
一例として、2025年に作られた請求書を個人事業主が保存するとしましょう。
この場合、課税期間の末日は同年の12月31日ですから、2026年2月が保存期間の開始日です。
そして、2033年1月31日に保存期間が終わり、以降は処分しても問題ありません。

次に保存形式についてですが、従来通り紙媒体だけでなく、近年の流れに合わせて電子形式での保存も可能となっています。
これ以外の保存形式については違反となりますので注意しましょう。

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まとめ

インボイス制度が開始して以来、事業者は新しい事務に対応するよう迫られています。
もちろん手間が増えるのは面倒に違いありませんが、一方でこうした書類を的確に処理することでメリットもあるのは間違いありません。
まずは一つひとつの取引を丁寧にこなしながら、適格返還請求書の作り方について慣れていくようにしましょう。

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