2020年により猛威を振るい始めた新型コロナウイルス感染症が世界で拡大している影響によって、私たちの生活だけでなく木材流通価格に対しても多大なる影響を与えています。
そこで今回は、深刻なウッドショックについてご紹介していきます。
ウッドショックとは
ウッドショックとは、世界的規模で起きている木材流通価格の高騰を指しています。
1970年代に起こった原油価格上昇のオイルショックになぞらえていると言われています。
ウッドショックは、これまで度々問題となってきました。
たとえば、1990年代は絶滅危惧種のフクロウを保護する目的で森林伐採による規制が強化されたことが影響し、アメリカを中心として木材の供給が不足したことで第一次ウッドショックが起こりました。
また、2008年のリーマンショック直前の好景気の最中も急激な住宅建設の需要が急増したことで第二次ウッドショックが起こっています。
そして、2021年から起こっているのが、第三次ウッドショックです。
ウッドショックに関連する記事はこちら
ウッドショックの原因
では、第三次ウッドショックの原因はどこから起因しているのでしょうか。
新型コロナウイルスの影響のほかにも多数の原因が絡み合っていると言われています。
新型コロナウイルスの影響
2020年度から世界中で猛威を振るい始めた新型コロナウイルス感染症が大きく影響を及ぼしているのは明らかです。
ただし、この新型コロナウイルス感染症だけが原因というわけではなく、複雑かつ複合的な原因が絡み合っていると考えられています。
アメリカでの新築住宅・リフォームの需要
新型コロナウイルス感染症がさらに2021年より大きく拡大したことによって、アメリカではコロナ禍によりテレワークを行う企業が急増し、さらに米国内ではコロナ対策として金融緩和策が敷かれ、住宅ローンの引き下げが行われました。
これにより、アメリカでは住宅需要が急増し、木材の需要が急激にアップしたのです。
この住宅需要がアメリカのみならず日本や世界にも大きな影響を与えました。
【リフォーム業界】課題は?今後は?生き残るための経営ポイントコンテナ不足
また、新型コロナウイルス感染症が拡大したことによって、2020年春にはすでに世界中の貿易が停止していました。
ところが、その後状況が変わった途端に、輸送量が急激に拡大したことで、海上輸送用コンテナが大幅に不足する事態となったのです。
そのため、輸送コストまで急騰するまでになってしまいました。
ロシアによるウクライナ侵攻
そして、新型コロナウイルス感染拡大の中、巻き起こったロシアによるウクライナ侵攻も大きな影響を与えていると考えられています。
ロシアは、もともと世界における木材の輸出量の2割を占めるほどの森林資源大国として知られていました。
ロシアに対し、欧米諸国が集まって経済制裁を行ったことで供給量が激減したのです。
そして、ウクライナも木材輸出国の一つだったのですが、ウクライナ侵攻をして戦争が始まったことで、双方の国からの木材の供給がストップしてしまうことになりました。
日本はロシアからの木材の輸入にさほど頼っているわけではないのですが、世界的に今後も木材の供給が滞ることで影響を受ける可能性は少なからずあるでしょう。
日本に及ぼす影響
では、第三次ウッドショックにより日本に及ぼす影響はどのようなものがあるのでしょうか。
工期の遅れ
恐らく皆さんの周辺の新築工事を見ていても工事が滞っている住宅もあるのではないでしょうか。
なかなか建設が進まないのは、まさにこのウッドショックによる影響で資材の手配がうまくいっていないためです。
そのため、工期の遅延が発生してしまいます。
神谷コーポレーション湘南株式会社の調査によるウッドショックの影響に関するアンケートでは、ウッドショック発生の前は88.4%の物件が工務店から見積もりが入り、3ヶ月以内に注文があったと答えられていますが、ウッドショック後は37.7%にまで激減し、3ヶ月以内の注文は5割まで減少しています。
つまり、50%を超える新築工事に遅延が発生しているといった現状がわかりました。
国産材の高騰
日本は国土の67%、およそ3分の2が森林であるため、国内で自給できるのではないかと考えられる方も多いことでしょう。
確かに、かつての日本は木材自給率が100%に迫っているほどでありましたが、現在では40%程度に減少しています。
実は、国内の森林面積の半数は「保安林」と呼ばれるものであり、土砂災害防止などの目的で指定された森林であることから伐採制限がかけられています。
世界的な木材供給不足の影響から、国産材も同時に高騰しており、丸太価格は急騰ののち横ばいになりました。
農林水産省:木材価格統計調査ウッドショックはいつまで続くのか?
ウッドショックは、そもそも木材の資源自体が枯渇している状態なのではなく、これまでご紹介してきた通り、需要と供給のバランスがうまく取れていないことから起因しているものです。
そのため、ウッドショックは永遠に続くということはなく、いつかは正常な供給量に戻ることが考えられます。
ただし、まだ2022年度以降も当面は木材価格の高騰やウッドショックは継続するのではないかと言われています。
つまり、第三次ウッドショックは、従来のウッドショックに比べて長期化することは否めません。
新型コロナウイルス感染拡大の影響のみならず、2022年2月~のロシアのウクライナ侵攻による供給不安もあり、さらに輸入材や国産材の価格は上昇傾向になっているためです。
ウッドショックが長期化することで、事前に顧客への十分な説明や合意書を作成することは必須と言えるでしょう。
また、ウッドショックにより木材価格が高騰したことで、住宅着工が難しい場合や事業資金で賄っていくことが困難な方もいらっしゃいます。
そんな企業のために、国土交通省からウッドショックによる資金繰りの悪化に対し、日本政策金融公庫へ相談をするように案内が出されました。
融資を受けるまでにはある程度日数がかかるものですから、資金繰りに不安を持っている企業はいち早く相談することが大切になってきます。
リフォーム工事に関する記事はこちら
契約書作成・管理なら建築業向け業務管理システム『アイピア』
まとめ
ウッドショックは、今後も長期化する可能性があると懸念されていますが、事業に大きな影響を受けないように早め早めに対策を打つことが必要です。
今後のキーワードにもなっている新型コロナウイルス感染拡大やロシア・ウクライナの情勢が落ち着いてきたとしても、すぐにウッドショックの影響が収まるわけではありません。
ただ、世界の情勢に今後も注目し、いち早く木材供給が回復することを願うばかりです。