工事は、時に専門的な技術を使いながら行わなければいけません。
そのため、この工事箇所はこういった性能を持っています、と説明するために仕様書を作る必要があります。
加えて、この仕様書には2種類あります。
標準仕様書と特記仕様書がありますが、これらはどんな違いがあるのでしょうか。
今回は、特記仕様書に焦点を当てて説明していきます。
特記仕様書とは
特記仕様書は、工事の内容に関してより詳しく説明するために書く仕様書です。
一つの建物を作るためには複数の工事が組み合わされます。
たとえば、ビルを作るなら土台を作り、柱を作るといった具合です。
特記仕様書では、全体ではなく部分的な工事に焦点を当てて、この工事はこういった性能を持たせるために行いました、と説明していきます。
標準仕様書との違い
標準仕様書は特記仕様書とは違って、工事の全体をおおまかに説明するために作られます。
この工事はどのくらいの大きさの建物を作るのか、どういった工法を採用するのか、といったことを記入しなくてはいけません。
設計図書の優先順位
工事を行う際には図面を作らなければいけません。
計画がなければ行き当たりばったりの工事になってしまうので、あらかじめイメージ図を書いておかなければいけないのです。
これを、専門的には設計図書と呼んでいるのですが、設計図書にはおおまかに分けて5種類があります。
標準仕様書と特記仕様書も設計図書に含まれ、そのほかには質問回答書や設計図、そして現場説明書があります。
実はこれらの設計図書には優先順位があり、工事を進める中で何かしらのトラブルがあった際はこの書類から参照すべきだというものを決めなくてはいけません。
設計図書の優先順位:
質問回答書 → 現場説明書 → 特記仕様書 → 設計図 → 標準仕様書
特記仕様書の記載項目
特記仕様書の概要について理解したところで、次は何を書けば良いかについて学んでいきましょう。
特記仕様書には6つの記載項目が設けられています。
記載項目① 工事の目的
この工事はそもそもどういった目的で行われるのか、といったことを明確にしておかなければいけません。
目的は標準仕様書でも書かれるものではありますが、確認の意味も込めて繰り返し書いておいたほうが良いでしょう。
記載項目② 工事の範囲
この工事は全体の中でどの部分に手をつけるのか、といった範囲を書く項目です。
工事が大きくなればなるほど、この特記仕様書はどの部分の工事を説明しているのか、といったことをはっきりしておく必要があります。
忘れないで記入するようにしましょう。
記載項目③ 工程
どういった順番で工事を進めていくかを記載する項目です。
工事を行う前に段取りを決めておくのは欠かせません。
もっとも、段取り通りに工事が進むとは限らないので、天候の影響や人員不足によって工事が中止になってしまった場合の対処についても考慮しておく必要があります。
【建築】工程管理とは?目的や手順、方法まで解説!記載項目④ 使用材料名・数量
どのような材料を使って工事を進めていくかを書く項目です。
工事が大規模になればなるほど、この項目はより詳細に書いていかなければいけません。
木材をどのくらい使うのか、あるいは鉄材をどのくらい使うのか、などといったことを細かく書いていきましょう。
記載項目⑤ 事前協議の概要
工事を行う前には依頼者と事前協議が行われます。
そこでどのようなことが話し合われたのか、その内容を踏まえてどのような工事計画が練られたのかを書いていかなければいけません。
記載項目⑥ 重要度の高い情報
特記仕様書では、標準仕様書では書けないような情報も書かなければいけません。
たとえば、図面ではわかりづらいがここはこのように工事する予定です、といった細かい説明もあわせて書くと良いでしょう。
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特記仕様書を書く際のポイント
ここまで見てきたように、特記仕様書はたくさんの記載項目が用意されています。
一つひとつの記載項目を丁寧に書いていくのも大事ですが、あまり詳細に書きすぎると読みづらい書類になってしまいかねません。
そこでここからは、このように書けばよりわかりやすい特記仕様書ができる、というポイントについてレクチャーしていきます。
標準仕様書にも記載する
特記仕様書はたくさんの項目があるため煩雑になりがちです。
読む人がどこを読むべきなのか、あらかじめわかるようなものを付けておいたほうが良いでしょう。
たとえば、標準仕様書に、ここの箇所の工事は特記仕様書に詳しく書いています、といったマークを付けておくと読み手にとって優しくなります。
単位や表記を統一する
こういった設計図書では、単位や表記を統一したほうが読みやすいです。
逆に、単位や表記が統一されていないとどうなるでしょうか。
たとえば、片方ではセンチメートルを使っているのに、もう一方ではミリメートルと表記している、となってしまっては読み手の頭が混乱してしまうでしょう。
そのほか、漢字の表記、数字は半角にするか全角にするかもしっかりとまとめなくてはいけません。
フォントに気を付ける
普段ソフトを使っていると使用者にとって使いやすいフォントを選んでしまいがちです。
とはいえ、あまり見慣れないフォントを使われるとかえって書類が読みにくくなってしまいかねません。
ゴシック体のようによく使われるフォントを使うようにしましょう。
画像や図を取り入れる
文字ばかりの書類は読みにくくなってしまいます。
特に普段から設計図書を読みなれている人にとっては、図面なしで設計に関して説明されても全然頭に思い浮かばないという羽目に陥りかねません。
画像や図を挿入して読みやすい書類を目指しましょう。
テンプレートを活用する
ここまで、特記仕様書の書き方についていろいろと見てきましたが、一から自分で作るのは大変そうだ、と思った方もいるかもしれません。
確かに、これらをすべて初めから書いていくと相当な時間がかかってしまいます。
もっとも、特記仕様書にはテンプレートが存在します。
このテンプレートを活用しながら書類を作成していけば時短につながるでしょう。
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まとめ
特記仕様書は、工事を行うにあたってなくてはならない書類のため、手を抜くことなくしっかりと作らなければいけません。
一方で、専門性が高い書類のため、作り方も難しくなってきます。
初めの頃はこの項目はどう書けば良いのか、と壁に当たってしまうことも多々あるでしょう。
これに関しては多くの仕様書を作ることで慣れるほかありません。
先ほども紹介したテンプレートなどの助けも借りながら、クオリティの高い特記仕様書を作れるようになりましょう。