工事において一番起きてはいけないのが、事故です。
どんな小さな工事であろうと、事故は防ぐように心がけなければいけません。
とはいえ、事故を起こさないように工事しようという心がけだけで防ぎきれるものではありません。
工事現場を安全な環境に保つためには、安全管理を徹底する必要があります。
安全管理とは
どんな仕事にも、一連の作業の流れを統括するための管理役は欠かせません。
工事においてこうした管理を行うことは、施工管理と呼ばれます。
施工管理は大まかに4つに分けられ、4大施工管理と総称されることも多いです。
その施工管理の中の一つに、安全管理があります。
安全管理がやるべきことは、工事関連のあらゆる安全性を担保することです。
今回使う機械はどのように使うと危険なのか、工事に従事する作業員が万全な体調で臨めているか、などといったことを幅広くカバーしなくてはいけません。
4大施工管理の特に重要な仕事
先ほど、工事においては4大施工管理と呼ばれるものがあるという話をしました。
安全管理以外には、原価管理、品質管理、工程管理の3つがあります。
では、この中で最も重要な仕事はなんでしょうか。
もちろん、工事を行ううえではどれも重要であることには変わりありません。
お金がなければ工事はできませんから、きっちりと原価管理をしておく必要があるでしょう。
また、クオリティの高い工事を行うために、建材や機材などをチェックしておく品質管理も欠かせません。
そのほか、工事はできればスピーディーに行いたいところですから、厳密な工程管理も大切です。
とはいえ、これらがいかに適切に管理されていようと、そもそもの大前提である安全管理を怠っているようでは意味がありません。
そのため、4大施工管理の中で最も大切なのは、安全管理といえるでしょう。
安全管理の目的
ここまで安全管理を重視しなくてはいけない理由は、どこにあるのでしょうか。
それは、安全を疎かにすることが、工事そのものに重大な損失をもたらすからです。
たとえば、高層ビルを建てている段階で、建材を落としてしまい、歩行者にあたって死亡事故を起こしたとしましょう。
こうなると、当然ながら工事者は被害者に対して賠償責任を負うので、多額の慰謝料を支払わなければいけません。
それだけでなく、施工体制を一から点検しなくてはいけないので、工事もストップしてしまいます。
場合によっては、発注者から信用を失い、工事契約そのものが破断してしまう可能性も否めません。
このように、安全管理を怠ると広い範囲に影響が及びます。
ほかの施工管理、たとえば原価管理を怠った程度では、このような影響は与えません。
工事を滞りなく進捗させるためにも、安全管理を重視することは欠かせません。
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安全管理の仕事内容
安全管理の重要性を確認したところで、次は具体的な話をしていきましょう。
安全管理が大切だといくら繰り返しても、何をするかが明確でなければ、管理はうまくいきません。
機材の点検
工事を行う際は、大型の重機や大きなパワーを必要とする工具を用いることがあります。
これらの機材は、常に点検するようにしましょう。
点検作業を怠ると、故障が原因で事故を起こしかねません。
不安全な行動の排除
工事現場においては、ちょっとした不注意の行動が命取りになります。
たとえば、搬入作業の最中に前後の確認を怠ったために、ほかの作業員の頭に建材が当たってしまうことがあります。
こうした安全を軽視した行動は、工事が行われる前に作業員たちに警告して排除するようにしましょう。
不安全な環境の排除
いかに作業員が安全に配慮していても、環境が整っていなければ、やはり事故は起こります。
高所での作業の際に命綱やワイヤーがしっかりと固定されているか、足場はしっかりと組みあがっているかなどは、常にチェックすべきです。
工法の確認
その日どのような工事を行うかは、あらかじめ確認しておくようにしましょう。
作業員が慣れない工法に手間取った結果、事故を起こすという例も少なくありません。
ヒヤリハット事例の共有
危うく事故を起こすところだったという事例を、建設業界ではヒヤリハットと呼んでいます。
こういったヒヤリハットは、放置しておくと重大な事故につながりかねません。
どういった時にヒヤリハットが起きやすいかを現場内で共有しておく必要があります。
作業員の健康の確認
人は、疲れていたり、体調がすぐれなかったりすると、注意が散漫になりやすいです。
実際、工事現場で起きた事故の事例を振り返ると、作業員が連日の業務で疲労がたまっていたという例も多くあります。
体温チェックや口頭での確認をしながら、作業員の健康状況を知るようにしましょう。
5S
建設業界においては、しつけ、整理、整頓、清潔、清掃、の5Sが大切だとされています。
直接安全管理に関わることではありませんが、生活に関わる小さなことに関心を向けることで、現場で必要な注意力が養われます。
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安全管理で求められる資格・スキル
安全管理を的確に行うためには、しっかりとした訓練を受けなくてはいけません。
なんの訓練も行わないまま安全管理を行おうとすると、どこかで見落としが起こりやすいです。
そうしたことを防ぐためには、資格を取ることや研修などを通じてスキルを磨くようにしましょう。
安全管理に活きる資格
建設業界では、キャリアアップのために資格を取るべきという話をされることが多いです。
とはいえ、せっかく取った資格も仕事に活かせないようでは意味がありません。
まずは、安全管理を行ううえで役に立つ資格についてご紹介していきます。
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施工管理技士
建設業界では、工事を行う際に監理技術者という役職を置いています。
安全管理をはじめとした施工管理は、この監理技術者が行うのが慣例です。
監理技術者は、誰もがなれるわけではありません。
施工管理技士という国家資格を取得した人だけがなれるものです。
もっとも、施工管理技士という名前が付いた資格を取れば、どんな現場の監理技術者になれるとは限りません。
施工管理技士は分野ごとに細かく分かれており、以下の計7つの資格が存在します。
- 建築
- 土木
- 電気工事
- 電気通信工事
- 管工事
- 造園
- 建設機械
自分が専門としている分野の資格を取得するようにしましょう。
施工管理技士とは?種類や仕事内容と資格取得のメリットをご紹介CHECK!
安全管理者・労働安全コンサルタント
先ほどの施工管理技士は、安全管理を含めた施工管理を広く担当する資格でした。
これに対して、安全管理に特化した資格としては、安全管理者や労働安全コンサルタントがあります。
安全管理者になるためには、厚生労働省が開催する研修に参加しなくてはいけません。
ここで、安全管理をするうえではどんなことが欠かせないかを学んだ後、現場に配属されます。
一方で、労働安全コンサルタントは国家資格です。
安全管理者と違って、難問だらけの試験に合格しなくてはいけません。
安全管理に必要なスキル
先ほどは、安全管理をするうえで取っておきたい資格をご紹介しましたが、これだけでは不十分です。
実際に現場で安全管理を行ううえでは、試験を受験するだけでは養いきれないスキルも求められます。
安全管理に必要なスキルはいくつもあるのですが、ここでは、リスク察知能力とコミュニケーション能力の2つに絞って話を進めていきましょう。
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リスク察知能力
リスク察知をするうえで欠かせないのは、観察力です。
たとえば、作業員たちの様子をうかがいながら、体調が悪そうな人がいないか、足取りがおぼつかない人がいないかをつぶさにチェックする力です。
こうした観察力を養うことで、リスク察知能力が身に付きます。
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コミュニケーション能力
安全管理をするためには、多くの情報が欠かせません。
ここでヒヤリハットが起きた、機材の調子が悪いといった情報を逐一キャッチできれば、事故は未然に防げるでしょう。
こういった情報を広く集めるためには、作業員が自然に監督者とコミュニケーションを行えるような状態を作っておかなくてはいけません。
そのためにも、安全管理に従事する人には、コミュニケーション能力が必要となります。
安全管理に役立つ資格に関する記事はこちら
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まとめ
今回は書ききれませんでしたが、安全管理をするうえでは、経験値も大切になります。
こうしたら事故が起きる、こうすれば事故は防げるといったノウハウは、やはり現場に長く勤務していなければ蓄積されません。
安全管理にまつわる知識を蓄えたり、スキルを養ったりするのと並行して、いろいろな現場を経験することも大事です。
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