建築は何かとコストがかかる業界です。
職人さんや建築士さんが仕事に集中できるようにするためには、コスト管理の担当が欠かせません。
実はそんな建築コストを管理するための資格があることはご存知でしょうか。
今回は、建築コスト管理士の仕事内容や試験内容についてご紹介していきます。
建築コスト管理士とは?
建築コスト管理士は、まだできて20年も経っていない資格です。
そのため、資格の名前を聞いても、どんな仕事を担当するのかわからないという方もいるでしょう。
まずは建築コスト管理士がやるべき業務について見ていきましょう。
建築コスト管理士の業務内容
建築コスト管理士は、建築にまつわるコストのやりくりを一手に引き受けるのが業務です。
一つの建物を建てるためにどれくらいの材料費がかかるのか、どれくらいの人件費がかかるのか、といったことの見積もりを行わなくてはいけません。
それ以外にも、一度できた建物の保全のためのコストや工事の過程で出た廃棄物を処理するためのコストも管理するのが仕事です。
ただ単にコストの試算をするだけでなく、現場とのすり合わせも大事な仕事になってきます。
与えられている予算はどれくらいか、現場はどれくらいのお金をほしがっているか、を踏まえて、予算と現場のバランスも取らなくてはいけません。
建築コスト管理士に必要な知識
まず、建築コスト管理士は市場の分析能力に長けていなくてはいけません。
このくらいの規模の建築はどのくらいの値段で行われているのか、といったことをリサーチしてこそコストが管理できるようになります。
そのほか、材料や人材の調達ルートに関するノウハウを身につける必要もあるでしょう。
建築を行うためには膨大な建材が欠かせませんが、それらをあの手この手で調達するのも建築コスト管理士の役割です。
また最近では、ITを駆使して建築を行う業者が増えてきています。
建築にかかるコストをスムーズに計算するためにはITに関する知識も必要になるでしょう。
もちろん、建築に関する施工技術や法規に関する知識も欠かせません。
このように、建築コスト管理士は多彩な知識を求められる仕事です。
コスト管理・原価管理に関する記事はこちら
2023年度建築コスト管理士試験
建築コスト管理士試験は毎年1回必ず行われています。
ここからは、今年2023年に行われる試験の概要について説明していきましょう。
受験資格
建築コスト管理士の試験を受験するためには、以下のいずれかに該当する必要があります。
- 建築積算士の称号を取得後、更新登録を1回以上行った方
- 建築関連業務を5年以上経験した方
- 一級建築士に合格し登録した方
建築積算士の称号を取得後、更新登録を1回以上行った方
まず、建築積算士の資格をもっていることが、受験資格の条件の一つです。
それも、建築積算士の資格を取ったら建築コスト管理士の試験を受けられるというわけではないです。
一度建築積算士の資格を更新し、能力に問題がないと判断されてようやく受験資格が与えられます。
一級建築士に合格し登録した方
一級建築士に合格している人も受験資格を得られます。
こちらは更新の有無は問われません。
建築関連業務を5年以上経験した方
建築関連業務を5年以上行っていることも受験資格の一つに数えられています。
また、建築関連業務には、建築士法の定めにより、大学院修了課程の期間を算入することができます。
詳しくは、日本建築積算協会の「建築コスト管理士認定規程第 14 条」をご確認ください。
公益社団法人 日本建築積算協会『建築コスト管理士認定事業規程』
受験をするためにも、相当なハードルが設定されている資格と言えるでしょう。
申込期間
試験の申し込みは6月1日にスタートします。
締め切りは8月末だったり、9月だったりと、年によってまちまちです。
2023年は9月7日に申し込みが締め切られます。
試験日
試験日は毎年10月下旬に設定されています。
2023年の試験日は10月22日です。
受験手数料
受験手数料は29,700円(消費税込)です。
ほかの資格試験と比べるとやや高い値段設定になりますが、それだけ価値の高い資格と言えるでしょう。
試験方法と出題範囲
建築コスト管理士の試験は学科試験と短文記述試験の2種類に分けられます。
それぞれの試験でどのような内容が出題されるのか、制限時間や問題数などとあわせて見ていきましょう。
学科試験
学科試験の制限時間は2時間半で、計60問を解かなくてはいけません。
長めの持ち時間があるので、一見すると易しい試験のように見えますが、出題内容は非常に難しいです。
建築コスト管理士には専用のテキストがあり、そこから出題されます。
ちなみに、過去の学科試験で合格基準点を超えた方は、次年度以降2年間学科試験が免除されます。
短文記述試験
短文記述試験の制限時間は2時間で、問題数は計5問です。
学科試験は4つの選択肢の中から一つの正答を選ぶ方式ですが、それに対して短文記述試験は問題に対して200字以内以内の文章で回答しなくてはいけません。
試験時間が2時間しかないことを踏まえると、ややシビアな内容の試験と言えるでしょう。
こちらも専用のテキストに記載されている内容が試験に出ますから、あらかじめしっかりと頭に入れておくと良いでしょう。
合格後の登録手続き
合格者発表は12月15日に日本建築積算協会のホームページにて行われます。
発表ページに自分の番号があったら資格取得です。
とはいえ、それだけで自動的に資格が手に入るというわけではありません。
合格したら協会から登録のための書類が郵送されます。
必要事項を記載したうえで、1月15日までに忘れずに登録申請するようにしましょう。
登録手数料は、15,400 円(消費税込)です。
ちなみに、建築コスト管理士の有効期間は5年間となっています。
日本建築積算協会HP『2023年度建築コスト管理士試験のご案内』積算・見積に関する記事はこちら
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まとめ
建築コスト管理士は受験資格も厳しいうえに、試験内容も難しい難関です。
合格率も50%に満たないことも珍しくありません。
逆に言えば、この資格を取れれば現場で重宝されること間違いなしでしょう。
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