老朽化した住宅やビルなどの建物を取り壊す際には、解体工事を取り行います。
一口に解体工事といっても、分別解体や機械解体などといったように、さまざまな工法があります。
取り壊す建物の構造や周囲の環境に合わせて、最適な工法を選ばなくてはなりません。
また、解体工事を取り行う際には、事前に許可を得ておく必要があります。
本記事では、解体工事の流れや種類や工法、解体工事に必要な許可や把握しておくべき法律などを解説していきます。
解体工事とは
最初に、解体工事の概要について見ていきましょう。
解体工事とは、文字通り建物を取り壊して、解体する工事のことです。
建物全体をバラバラにして取り壊すほかに、屋根や柱などの一部を残して内装だけを解体するケースもあります。
大型の建物の場合には、油圧ショベルやロングアームなどの重機を用いることやハンマーやチェーンソーなどの工具を使って、手壊しで解体作業を進めていくのが主流です。
撤去との違い
解体工事と似たような作業としては、撤去が挙げられます。
撤去は、解体工事によって発生した廃材を取り去る作業のことです。
不要なものをトラックなどの車両に乗せて運び出し、現場をきれいな状態に片づけていきます。
また、解体工事現場で使用した足場、照明器具、フェンスなどの各種設備を取り去る作業も撤去に含まれます。
この撤去と解体工事は、同一の事業者によって行われるケースも少なくありません。
解体工事の流れ
解体工事では、さまざまな工程が発生します。
工事を取り行う前に、届出を出して許可を得ることや足場の設置や近所へのあいさつ回りなどの準備も必要です。
なお、解体工事の流れは、各現場によって異なります。
ここでは、解体工事の大まかな流れを紹介します。
各種届出
解体工事を行う際には、建設リサイクル法に関する届出が必要です。
建築リサイクル法では、木材、鉄、コンクリートなどいった特定建設資材が用いられている建物を解体する場合、かつ延床面積が80平方メートル以上の建物を解体する場合には、都道府県知事へ届出を出すことが義務付けられています。
届出の期限は、着工の7日前までです。
重機の使用などで道路を使用する場合には、道路使用許可申請書も必要です。
解体工事を取り行う前に、ガス、水道、インターネットなどのライフライン停止の届出もしておきます。
解体工事の事前準備
解体工事を開始する前に、足場や防音パネルの設置、養生などの準備が必要です。
スムーズに作業ができるように、現場の残置物の撤去もしておきます。
解体工事期間中は、騒音や粉塵などで迷惑をかける可能性があるため、近隣住民へのあいさつや説明も欠かせません。
外構の解体
準備が済んだら解体工事に取り掛かります。
最初に行うのは、外構撤去工事です。
ブロック塀、フェンス、門柱、門扉、庭木などを撤去していきます。
屋根・内装の解体
建物の解体工事では、先に屋根を撤去していきます。
住宅を解体する際には、屋根に設置されている瓦を丁寧に取り除いていかなくてはなりません。
屋根の撤去が終わったら、内装の解体へと進み、窓ガラスや石膏ボードや壁やサッシなどを撤去していきます。
建物本体の解体
ホコリが舞うのを防ぐために散水をしたうえで、壁、梁、柱などの主要構造物を壊していきます。
解体工事現場で用いられている重機は、ミニユンボ、ロングアームなどです。
高層階の解体には、ロングフロントと呼ばれる大型重機が用いられています。
立地条件によっては、重機を使わずに作業員が手作業で取り壊すこともあります。
整地・清掃
解体工事が完了したら、重機等を使って掘り起こされた土地をきれいに整えます。
不用品を回収して、現場の掃除も行います。
最後に、防音パネルや養生などの設備も撤去したら解体工事は完了です。
建物滅失登記
登記簿に登録している建物を取り壊した後は、滅失登記の届出が必要です。
建物滅失登記申請書、建物滅失証明書(取り壊し証明書)、解体業者の資格証明書などの書類を一式揃えて、管轄する法務局で申請手続きを行います。
申請が完了したら、登記完了証を受け取ります。
解体工事に関する記事はこちら
解体工事の種類
解体工事には、ミンチ解体や内装解体といったようにいろいろな種類があります。
建物を解体する目的によって、最適な種類を選ばなくてはなりません。
建物全体を解体する
更地にする場合やその土地に新しい建物を建設する場合には、建物全体を解体する必要があります。
その際に用いられる解体工事の種類は以下の通りです。
ミンチ解体
ミンチ解体は、重機を使って建物を取り壊していく方法です。
混合解体とも呼ばれています。
廃材の分別を行わずに解体していくので、短期間で工事が完了します。
また、足場の設置が不要で、工事期間が短いため、コストを安く抑えられるというメリットもあります。
一昔前までは、このミンチ解体が用いられていました。
2003年に建築リサイクル法が施工されたことで、現在はミンチ解体を用いることができません。
分解解体
分解解体は、コンクリート、木くず、鉄くずなどといった廃材を分別しながら、建物を取り壊していく方法です。
現代の解体工事の主流となっています。
建物の一部を解体する
解体工事では、建物全体を取り壊さずに、一部の部屋や設備を残すケースもあります。
そのような場合には、以下の種類が用いられています。
はつり工事
はつり工事は、コンクリートやアスファルトなどを切断したり、穴を開けたりすることです。
作業員の手作業で行うことが多いですが、重機を用いて工事を行う場合もあります。
建物の内装のみを解体する
リノベーションやリフォームなどで建物の内装だけを変更したい時には、内装解体やスケルトン解体などの種類が用いられています。
内装解体・スケルトン解体
賃貸物件を借りた場合には、借り主は退去時に原状回復をしなくてはなりません。
店舗やオフィスとして利用していた場合には、内装部分を取り除く内装解体を行います。
スケルトン解体は、天井や床や柱などといった建物の構造体以外のすべてを解体して撤去する工事のことです。
工事の種類に関する記事はこちら
解体工事の工法
解体工事では、建物の構造に合わせて最適な工法を用いなければなりません。
具体的な工法は以下の通りです。
木造建築の場合
木造建築を解体する場合には、機械解体工法や手壊し工法などが用いられています。
機械解体工法
機械解体工法は、文字通り重機を用いた解体の工法です。
油圧ショベルを用いて、建物を取り壊していきます。
木造建築の解体現場では一般的な工法です。
手壊し工法
手壊し工法は、作業員が手作業で建物を取り壊していく工法です。 住宅密集地や道幅が狭いといった事情で重機が使用できない現場で用いられています。
鉄骨造やRC造・SRC造の場合
鉄骨造、RC造、SRC造などの建物を解体する場合には、以下の工法が用いられています。
圧砕機工法
圧砕機工法は、ハサミ形状のアタッチメントを使ってコンクリートを掴み、解体していく工法です。
この工法は、騒音や振動が少ないというメリットがあります。
主に、鉄筋コンクリートの解体工事現場で用いられています。
ブレーカー工法
ブレーカー工法は、ハンドブレーカーや大型ブレーカーなどを用いて、建物を取り壊していく工法です。
杭を打ち付けて、何度も衝撃を与えながらコンクリートを破壊していきます。
能率良く作業できるのがメリットです。
カッター工法
カッター工法は、コンクリートカッターやダイヤモンドブレートウォールなどを重機に取り付けて、コンクリートを切断して、解体する工法です。 粉塵が少なく、スピーディーに解体できるのがメリットです。
転倒工法
転倒工法は、建物の壁面を倒して、その衝撃を利用して取り壊していく工法です。
ワイヤーを用いて壁を内側に倒していきます。
高い壁がなくなるので、高所での作業を少なくできるのがメリットです。
解体工事に必要な許可
解体工事を請け負う際には、建設業許可を得ることや解体工事業登録をしておかなくてはなりません。
建設業許可は、1件あたりの請負金額が500万円以上の解体工事を請け負う場合に必要な許可です。
都道府県知事許可と国土交通大臣許可のどちらかを取得しておきます。
解体工事業登録は、1件あたりの請負金額が工事金額で500万円未満の場合に必要な許可です。
技術管理者の氏名のほかに、申請書や誓約書、実務経験証明書などを一式揃えて申請します。
建設業許可と解体工事業登録のどちらも数万円程度の手数料が必要です。
解体工事に必要な資格
解体工事業の登録を受けるためには、専門資格も必要です。
建築士、土木施工管理技士、建築施工管理技士、建設機械施工管理技士、とび・とび工、解体工事施工技士などの国家資格のうち、いずれかの資格保有者を技術管理者として選任しなければなりません。
施工管理技士に関する記事はこちら
解体工事に関係のある法律
解体工事を取り行う際には法律に従う必要があります。
法律違反を犯すと、罰金や懲役などの罰則を受けることもありますので気を付けましょう。
解体工事に関係のある法律は以下の通りです。
建設業法
建設業法は、1949年に制定された法律です。
この法律では、解体工事業者としての営業が認められているのは、建築工事業、大工工事業、とび・土工工事業の3つの業種のみです。
建設業法第3条にも、建設業の許可に関して、『軽微な建設工事のみを請け負う場合を除いて、建設業法第3条の規定に基づき、建設業の許可を受けなければならない』と定められています。
建設リサイクル法
建設リサイクル法の正式名称は、『建設工事に係る資材の再資源化等に関する法律』です。
この法律では、請負金額500万円未満の解体工事を請け負う場合に、管轄する都道府県知事の登録を受けなければならないことが定められています。
建築界の法律に関する記事はこちら
解体工事でも使える見積ソフトなら『建設業向けシステム アイピア』
まとめ
解体工事には、分解解体、内装解体、スケルトン解体などといったようにいろいろな種類があります。
また、解体工事で用いられる工法もさまざまです。
解体工事を請け負う際には、建設業許可や解体工事業登録などが必要です。
建設業法や建設リサイクル法などの法律も遵守するようにしましょう。