解体業者としての仕事に携わっているなら、誰しもが今後のキャリアアップについて考えるものではないでしょうか。
現場監督になりたいといった、キャリアアップのためにも必要となる資格が解体工事施工技師と呼ばれる資格です。
今回は、解体工事施工技師の試験概要や資格取得のメリットなどについてご紹介していきます。
目次
解体工事施工技士とは
解体工事施工技士は、国土交通省管轄の国家資格の一つです。
解体の工法、事前調査や見積もりなどの実務、そして建築資材や工事で使用する機材、建設リサイクル法による資材の回収方法、廃棄物の処理法についてなど、解体工事業務を担うにあたって、必要となる解体工事の施工技術や知識を持っていることを証明することができます。
解体工事施工技士の資格を取得すると、解体工事を実施する際に必要となる技術管理者になることができます。
請負金額が500万円未満の解体工事を実施するには、解体工事事業登録が必須です。
この際、必ず技術者管理者を設置していく義務があるので非常に重要な資格です。
一方、500万円以上の解体工事を実施する際に必要な建設業許可を取得する際に、解体工事施工技士を取得していると専任技術者として登録されることになります。
解体工事施工技士の業務
解体工事施工技士は、現場管理者の立場に立ち、解体工事の見積もりや現場における調査、施工管理、そして現場の安全管理、環境保全、廃棄物対策といった解体工事の現場監督及び技術管理者の業務を担うことになります。
産業廃棄物に関しては自らが持っている知識や技術を活かして工事をより効率良く正確に進めていく役割を担っています。
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解体工事施工技士資格が創設された背景
解体工事施工技士の資格は、建設業の中でも比較的新しい資格です。
では、どうしてこの資格が創設されるに至ったのでしょうか。
その背景として、主に以下の4つが挙げられます。
解体工事の増加
日本の建築物の耐用年数は、一般的に30年から50年程度と言われています。
そのため、現在はまさに高度経済成長期以降に大量にストックされていた建築物が更新期に入っている時期なのです。
つまり、この影響から建て替えや除去工事、リニューアル工事も含めた解体工事の増加が見込まれたこともあって解体工事施工技士が創設されたと考えられます。
解体する建物の複雑化
従来の解体対象物は、木造住宅が大半を占めていました。
しかし、現在では集合住宅や高層ビルなども含め、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造、鉄骨造などのような大型かつ複雑な建築物の解体工事が増加してきました。
これにより、解体工事の技術も、これまでよりもより高度なものが必要になったことが背景にあると考えられているのです。
解体工事の労働災害の増加
建設産業において、近年は幾分か労働災害も減少傾向にはあるのですが、解体工事に関しては労災が増えていると言われています。
対象物が大型化してきたこと、解体工事量そのものが増えたこと、また分別解体の徹底によって手作業や高所作業が増加したことで今後も労災が減少することは期待できない状況です。
特に大型建築物における解体工事が増加していることもあるため、大規模災害を免れるためにも適切に対応していくことが懸念されています。
廃棄物・有害物処理の適正化
日本における産業廃棄物の量は毎年4億トンに及ぶのですが、このうち2割は建設産業から出ていると言われています。
最終処分場もすでにひっ迫している状況にあって、処分費用も日に日に高くなっており、不法投棄する業者までいるほどです。
この不法投棄をなんとか阻止するために、廃棄物の適正な処理が必要となったのです。
また、有害物についても解体工事においては、アスベストやPCB、フロン、水銀、カドミウムなど人体に有害な物質を含む機材を適正に処理しなければならないのです。
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2023年度 解体工事施工技士試験の概要
ではここで、2023年度解体工事施工技士試験の概要について詳しく解説していきます。
全国解体工事業団体連合会『令和5年度 解体工事施工技士試験について』受験資格
受験者には、解体工事の実務経験が一定以上必要となります。
解体工事の実務経験が8年未満の方については、卒業証明書が必要となり、解体工事の実務経験が8年以上の方については卒業証明書は不要です。
詳細は以下の通りです。
- 学歴が大学、専門学校(4年制)「高度専門士」の方は、指定学科を卒業している方の場合卒業後1年以上の実務経験が必要で、指定学科以外を卒業している方は卒業後1年6ヶ月以上の実務経験が必要
- 学歴が短期大学、高等専門学校(5年制)、専門学校(2年制もしくは3年制)「専門士」の方は、指定学科を卒業している方は卒業後2年以上の実務経験が必要で、指定学科以外を卒業している方は卒業後3年以上の実務経験が必要
- 高等学校、中等教育学校(中高一貫6年)、専門学校(1年制)の方は指定学科を卒業している方は卒業後3年以上、指定学科以外を卒業している方は4年6ヶ月以上の実務経験が必要
- その他の方は、8年以上の実務経験が必要
ここでいう指定学科とは、国土交通省令に規定されている学科を指しています。
申込受付
今年度の申込期間は、令和5年9月1日(金)~11月2日(木)(当日消印有効)です。
試験実施日
試験実施日は、令和5年12月3日(日) PM12:20~16:30(入室時間12:00)です。
受験料
受験料は、以下の通りです。
- インターネット申込<クレジット決済> 16,500円(税込)
- インターネット申込<コンビニ決済> 17,000円(税込)
- 書面申込 19,250円(税込)
試験内容
試験形態や出題範囲はどのようなものでしょうか。
試験形態
試験は、四肢択一式(50問・90分)と、記述式(5問・120分)で出題されます。
出題範囲
出題範囲は以下の通りです。
- 土木・建築の基礎知識
- 解体工事施工の計画
- 解体工事施工管理
- 解体工法
- 解体用機器
- 安全管理
- 環境保全
- 副産物・廃棄物対策
- 建設リサイクル法に対応した施工管理能力など関連法規その他
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解体工事施工技士資格を取得するメリット
では、ここで解体工事施工技士資格を取得しておくメリットについて具体的にご紹介していきましょう。
解体工事に必要な知識を身に付けられる
解体工事施工技士の資格取得のために勉強することにより、解体工事の管理者として必要となる知識を幅広く習得することができます。
建設業に関するあらゆる知識も同時に得ることができるでしょう。
さらには、資格を取得した後も定期的な免許更新による講習が必要となるため、継続的に知識を蓄えていくことができます。
許認可を受けるための要件を満たせる
解体工事施工技士の資格を取得することによって、以下の2つの要件を満たすことができるようになります。
建設業許可
建設業許可を受けるためには、以下の要件を満たしている必要があります。
- 経営業務の管理責任者経験があるものが在籍していること
- 営業所ごとに常勤の専任技術者が在籍していること
- 十分な資金力があること
- 欠格要件に該当していないこと
既述の通り、解体工事施工技士の資格を持っている者が在籍していることで、2の専任技術者に該当するので在籍するという要件を満たすことができるようになるのです。
国土交通省『建設業の許可』解体工事業登録
建設業許可を受けていない解体業者は、工事を実施する都道府県ごとに解体工事事業登録をする必要があります。
解体工事業登録する際にも、以下のようにいくつかの要件が設けられています。
- 求められる基準を満たす専任の技術管理者が在籍していること
- 不適格要件に該当していないこと
解体工事施工技士の資格を有していれば、技術管理者と認められるので、要件を満たすことができるのです。
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まとめ
解体工事施工技士についての仕事内容や創設された背景、試験内容にいたるまで解説してまいりました。
解体工事施工技士の資格を持っているだけでも、国への許認可要件を満たすことができるため、キャリアアップを目指している方は、ぜひ一度資格取得にチャレンジされてみてはいかがですか。