改修工事といっても、何をどう改修するのか、そもそも改修とは何なのかが問題になります。
お客様が改修工事を頼みたいといっても、その意味合いが、業者が考える改修とは異なることも少なくありません。
この記事では、改修工事とはそもそもどんな工事なのか、修繕・改修工事との違いやメリットを解説していきます。
改修工事とは
改修工事と言われて、どのような工事をイメージしますか。
店舗の改装や住宅のリフォーム、老朽化した施設や設備の大規模修理などをイメージされる方もいることでしょう。
ここでは、改修工事と似た言葉で、かつ、実際に混同されることも多い、修繕工事や改良工事と比較しながら、改修工事はどんな工事なのかを見ていきます。
国土交通省による定義
修繕工事や改良工事、改修工事については、実は国土交通省が定義を公表しています。
建設業を管轄するお役所が、どのような定義づけをしているのか確認していきましょう。
修繕工事(リフォーム)
修繕工事とは、 建物や構造物を、建設当時の水準にまで回復させることと定義されます。
経年劣化などによる老朽化や地震や台風などの自然災害などでダメージが加わり、建設当時の状態に比べてマイナスの状態になっているものを、ゼロまで回復させるという工事です。
マイナスからゼロに戻すことをリフォームとも呼び、改善工事=リフォームです。
もっとも、一般的なイメージとしては、リフォームを改修工事と捉えられていることも多いため、国土交通省の定義とは少しズレがあります。
顧客への説明や相談時などには、何を求めているのか、どんな工事をしたいのかをしっかりと確認して、誤解や誤認のないようにしなくてはなりません。
改良工事(グレードアップ)
改良工事とは、建物各部の性能や機能をグレードアップする工事のことです。
たとえば、防水塗装がなされていない部分に防水工事を施したり、滑りやすい階段に滑り止めを付けたりなどが挙げられます。
改修工事(リノベーション)
そして、改修工事は修繕工事や改良工事を行うことで、建築物の性能を改善する変更工事を指します。
マイナスになった状態をプラスにする付加価値を加える工事で、リノベーションとも呼ばれる工事です。
つまり、国土交通省の定義によれば、改修工事(リノベーション)とは、修繕工事(リフォーム)+改良工事(グレードアップ)ということです。
なるほどと思う反面、そうだったのかと思う方も多いのではないでしょうか。
改修工事はリフォームと思われていることも多く、リノベーションはリノベーションとして独立して考えられていることも少なくありません。
もっとも、リノベーションが修繕+改良というのはわかりやすい定義です。
国土交通省のガイダンスやマニュアルによれば、改修工事を築12年、築24年、築36年と一周りごとに定期的に実施することで、建物の老朽化や陳腐化を防止でき、長く使えて、資産価値を保つことが可能とされます。
改修工事の種類
改修工事が修繕+改良によるリノベーションであると定義されたところで、どんな改修工事の種類があるのか見ていきましょう。
リノベーションというと、住宅やアパート、倉庫などを丸ごと変えるイメージがありますが、箇所ごとでも改修工事が成り立ちます。
屋根・外壁改修工事
屋根・外壁改修工事は、たとえば屋根や外壁の雨漏りが起こるなど、マイナスになった状態を修繕するとともに、耐久性が高い高品質な塗料や断熱・遮熱塗料など、これまでよりも機能性が加わった塗料で塗装を施すような工事です。
外壁工事とは?種類やタイミング、必要な資格を解説耐震改修工事
耐震基準が旧基準である場合や建築基準法の制定前の築年数が非常に古い住宅などを、最新の基準に合わせて耐震性を高めるような工事を言います。
防水改修工事
現行の防水層が劣化している場所に、これまでよりも高品質で耐久性の高い工法で防水工事を施すようなケースです。
塗床改修工事
塗床のダメージを修繕するとともに、これまでの工法や材料よりも高品質かつ高耐久で、よりダメージに強い方法で塗床工事をするようなケースです。
内装工事に資格は必要?工事の種類や流れも解説!バリアフリー改修工事
バリアフリー化されていない場所をバリアフリーにするとともに、より暮らしやすく安全な状態にする工事です。
段差がある場所の段差をなくす、手すりやスロープを設置する、車椅子でも通れるよう間口を広げる、開閉式のドアを引き戸にすることをはじめ、車椅子でも利用できる洗面台やトイレに交換するなどが挙げられます。
階段で上り下りしていたのを、住宅内エレベーターを設置する工事や畳の部屋をフローリングにして、介護ベッドを置けるようにするなどもバリアフリー改修工事の一環です。
その他の改修工事
その他の改修工事としては、直接目には見えない部分やマンションの共用部分などの改修工事が挙げられます。
排水設備改修工事
キッチンや洗面所など見える部分の排水管の交換などにとどまらず、下水とつながっている場所などの排水管の交換や高性能な排水設備へ見直す工事などです。
給水設備改修工事
住宅の水道の蛇口や給水管を交換する工事にとどまらず、住宅に引き込むための水道管を交換することやマンションの貯水槽などの交換や貯水設備の耐震工事などが挙げられます。
ガス・空将・換気設備改修工事
ガス管の交換や換気設備を高性能なものに交換することやガスメーターを最新のものに交換しながら耐震対策を採るなどが挙げられます。
エレベーター設備改修工事
老朽化したエレベーターの設備や本体の交換をはじめ、ボタンを最新式のものに交換することやエレベーターチェアの設置、地震などで停止した時の安全対策を施すなどの工事です。
消火設備改修工事
消火設備を最新のものに交換することやより使いやすく、消火能力の高い設備に交換する工事です。
消防法とは?基礎や危険物についてわかりやすく解説!舗装改修工事
マンションなどのエントランスや駐車場、屋上などの舗装のダメージを修繕するとともに、防水塗装を施すことやスロープを付けるなど、より高品質で使いやすくする工事などが挙げられます。
改修工事のメリット
改修工事は修繕+改良により、従来の建物をプラスの状態にする工事です。
改修工事を行うメリットについて確認していきましょう。
建物の安全性の向上
建物の耐震性を高めたり、リスクのある場所に安全対策を施したり、バリアフリーにより誰もが安全に使えるようにするなど、建物の安全性を向上させることができます。
建物の利便性の向上
エレベーターが設置されたり、バリアフリー化されたり、最新の空調設備や換気設備が付いたりと、利便性を向上できます。
特に築年数が経つほど、現在の設備や性能に比べて時代遅れとなり、陳腐化しているので、利便性の向上は大きなメリットです。
資産価値の向上
何の工事も施さなければ、建物はどんどん劣化してマイナスが広がっていきます。
修繕工事でゼロに戻すだけでなく、プラスの価値を加えることで、資産価値が向上します。
たとえば、建物を売りたい時に、建設当初と同等の価格が付くことやそれを上回る価格が付く可能性も生まれるのがメリットです。
入居者を募集しやすい
賃貸住宅の場合は、より使いやすく、安全でキレイな状態になることで、入居希望者が増えます。
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まとめ
国土交通省による定義によれば、修繕工事(リフォーム)、改良工事(グレードアップ)、改修工事(リノベーション)に分けられ、改修工事は修繕や改良により建築物の性能を改善する変更工事のことです。
改修工事の種類には、屋根・外壁改修工事、耐震改修工事、防水改修工事、塗床改修工事、バリアフリー改修工事のほか、その他の改修工事として排水設備改修工事、給水設備改修工事、ガス・空将・換気設備改修工事、エレベーター設備改修工事、消火設備改修工事、舗装改修工事があります。
改修工事のメリットとして、建物の安全性の向上、建物の利便性の向上をはじめ、資産価値の向上が挙げられます。
賃貸住宅の場合は入居者を募集しやすくなるのもメリットです。