建設業界では、仕事の依頼を受けて自社で施工するだけでなく、下請けに出す場合や外注工事に出すケースも多いです。
外注工事は下請工事と混同されやすいですが、大きな違いがあります。
この記事では、外注工事の特徴や下請けや元請けとの違いについて解説していきます。
そのうえで、外注工事に出すことのメリット・デメリットもご紹介しますので、外注するか検討している時の参考にしてください。
外注工事の発注にあたっては、外注費の支払い基準を知ることも大切です。
会計処理を間違えると税務署から指摘を受け、追徴課税などがなされるリスクもあるので注意しましょう。
目次
外注工事とは
外注工事とは、自社で依頼を受けた案件や業務について、外部の業者にすべて任せることを言います。
自社では対応できない業務を専門の業者に任せることや小さな案件などを個人事業主、いわゆる一人親方などに丸投げするようなケースを指します。
下請けとの違い
下請けは元請業者から業務を請け負いますが、あくまで、元請けからの指示と指揮監督のもとで工事を行う形態です。
外注工事では、指示監督を受けず、独立して業務を提供する点で違いがあります。
元請けとの違い
元請けは下請けに仕事を発注して請負契約を結びますが、下請事業者に丸投げするのではなく、どのような仕事を行うか細かく指示し、施工の管理監督も行います。
外注工事の場合、外注された業者は基本的に独立して工事を行い、指揮監督などは受けません。
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外注工事のメリット
外注工事に出すメリットはどのような点でしょうか。
下請けや元請契約と異なるメリットについて確認していきましょう。
ノウハウを得られる
外注業者に丸投げとはいっても、顧客のもとに一緒に出掛けて現場調査をする場合やプランなどを設計提案する機会に立ち会うケースも多いです。
また、施工中に様子を見に行ったり、仕上がりを確認したり、施工後の検査を行うこともあります。
仕事は任せるものの、随時関係することもあるため、外注業者のノウハウを得られるケースも少なくありません。
コア業務に集中できる
専門外の依頼や小さな案件などを外注することで、自社のコア業務に集中できます。
自社が得意な案件や大きな案件に注力することで、生産性を高められるのがメリットです。
コスト削減につながる
顧客のあらゆるニーズに対応しようと、人材を雇ったり育成すること、設備や機械、車両などを用意するとなれば、イニシャルコストやランニングコストがかかります。
得意な事業に注力し、そのほかの依頼は外注することでコストを削減しながら収益も拡大できます。
人材不足の解消につながる
少子高齢化に伴い、あらゆる業界で人材不足が問題となる中、建設業も他業界に増して人材不足に悩まされているのが現状です。
中小の建設会社では、人手を確保できずに悩んでいる中、外注ができれば人材不足の解消につながります。
空いた時間で新たな業務を受注
専門外の業務や小さな案件などを外注して、空いた時間を使って別の新たな業務を受注することが可能です。
その業務も自社施工ではなく、外注することでさらに新たな案件を受注することができます。
中間マージンを得ることで、収益拡大につなげられるのもメリットです。
外注工事のデメリット
では、外注工事のデメリットはどんな点でしょうか。
いつでも外注できるわけではない
外注業者が頼みたいタイミングで、必ず確保できるわけではありません。
依頼を受けてしまってから、外注できる業者が見つからなければトラブルのもとです。
情報漏えいの可能性
依頼を受けた顧客の情報などを提供することになるため、情報漏えいの可能性があります。
特に一人親方など個人事業主の場合、プライバシーポリシーなども有しておらず、情報の取り扱いに関する意識が低い場合もあるので気を付けなくてはなりません。
外注業者のプライバシーポリシーを確認するとともに、外注時に契約で情報の保護や漏えい禁止について定めることが大切です。
情報共有が複雑になる
施工中の進捗状況や顧客から途中で新たなニーズ、変更依頼を受けたなどの情報の共有が複雑になりがちです。
顧客は依頼した業者に報告を求める一方、実際の施工は外注業者が行っているので、現場の状況が把握できず、タイムラグなどが生じる可能性もあります
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外注費と給与の違い
外注工事として依頼したから外注費として会計処理できるとは限りません。
業者によっては社員のように常時抱えこみながら、外注したようにする場合や逆に外注しているのに給料として損金処理するなどのケースが見られます。
そのため、契約形態だけでなく、実態も見て判断されるのが一般的です。
外注費とは
まず、外注費とされる契約形態は、請負契約であることです。
給与とは
給与となるためには、雇用契約を結んでいることが必要になります。
正社員のほか、契約社員やアルバイト、パートも雇用契約となるのが一般的です。
外注費と給与の支払い基準
外注費となるか、給与支払いとなるかは、契約形態だけでなく、業務の実態などを見て最終的に判断されることになります。
その判断のための外注費と給与の支払い基準についてご紹介しますので、よく確認しておきましょう。
業務の代行が可能か
業務をその人やその業者ではなく、ほかの人やほかの業者に任せることもできる場合は、外注の実態とみなされやすいです。
事業者が指揮監督を行うか
仕事を依頼する事業者が指揮監督を行う場合は、従業員的な扱いとなり、給与と判断されます。
一方、依頼を受けた人や業者が指示系統なく、独立して業務を進められる場合には外注費です。
報酬に時間的拘束があるか
外注の場合、依頼された仕事を納期に間に合うように、進捗やスケジュールは自己管理しながら進めます。
ほかの仕事があれば、そちらを行いながらすることも可能です。
これに対して、勤務時間にもとづいて報酬が支払われた場合や朝8時から夕方17時までの勤務など定時の勤務時間が定められ、間の休憩時間なども管理されているような場合は給料とみなされる可能性が高くなります。
材料や道具を誰が用意するのか
材料や道具を、業務を行う人や業者が用意する場合には外注費です。
これに対して、仕事を依頼する側が用意する場合には、給料とみなされる可能性があります。
不可抗力により完成品の引き渡しが不可能な場合、報酬を請求できるか
仕事を進めていた場合や完成していたにもかかわらず、地震や火災、水害などが発生して完成品が壊れた場合や焼失、流出し、完成品の引き渡しが不可能になった場合、報酬を請求できなければ外注費、遂行した業務や費やした時間に応じた報酬が請求できる場合は給料です。
なぜかというと、請負契約では仕事の完成に対して報酬が支払われるので、完成して引き渡せない限りは、報酬請求権が発生しないためです。
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外注費が給与と判断された場合
外注費として積算していたにもかかわらず、税務署に給与と判断された場合、どのような事態が生じるのでしょうか。
消費税の取り扱い
外注費は、仕入税額控除の対象とすることができるので、外注することで消費税の納税額を抑え、節税効果が得られます。
ですが、給与と判断されてしまうと、仕入税額控除ができなくなり、消費税の追徴課税が発生します。
場合によっては、追徴税額に加えて過少申告加算税や無申告加算税、延滞税なども課せられるリスクがあるので注意が必要です。
実態に合わないのに節税対策として外注費で処理すると、脱税とみなされかねないので注意しましょう。
源泉所得税の課税対象に
外注費は、所得税の源泉徴収は必要ありません。
これに対して、給与とみなされると所得税の支払いが必要です。
すでに報酬を支払った人から徴収し直すのは難しいため、依頼した業者が納税しなければならなくなります。
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まとめ
外注工事とは工事を丸投げされ、工事業務を請け負うことです。
下請けは元請業者から仕事の発注を受け、元請業者の指示管理のもとで仕事を請け負います。
元請業者はあくまでも下請業者を管理し、仕事を完成させる責任を負っています。
外注工事のメリットはノウハウを得られること、コア業務に集中できること、コスト削減につながること、人材不足の解消につながること、空いた時間で新たな業務を受注できることです。
デメリットはいつでも外注できるわけではないこと、情報漏えいの可能性があること、情報共有が複雑になることです。
また、外注費と給与の違いをしっかり理解して会計処理を行わないと、後から税務署の指摘を受けて、追徴課税などをされるおそれがあるので注意しなくてはなりません。