直接工事費は略して直工(ちょっこう)などと呼ばれますが、工事に直接必要な3つの主要な費用を指します。
具体的には、直接経費(機械費など)、労務費、材料費の3つですが、頭文字で「キ・ロウ・ザイ」と呼ばれます。
工事の費用は非常に大きな金額になりますが、直接工事費以外にも工事に間接的にかかる経費があり、そちらが間接工事費です。
ここでは、直接工事費の詳しい内容や間接工事費との違い、その内訳や計算方法などを解説します。
直接工事費とは
直接工事費は、直接経費(機械費など)、労務費、材料費の3つからなる、工事価格に含まれる費用の一つです。
工事には多大なお金がかかりますので、費用算出で万が一誤った数字を算出した場合は企業にとって多大な損失を招きかねません。
工事発注者に対して正しい見積書を提示するためにも、正確に工事価格を算出することは重要であり、その業務を積算と呼びます。
工事価格とは
工事価格は、最終的に工事発注者に請求される工事費用を指します。
現場でかかる費用のすべてが網羅される数字は工事原価と言いますが、実際に業務を実施するためには、それ以外にも経営にかかる費用が存在します。
たとえば、事務所維持費や広告費などは工事には直接関係しない費用ですが、なくてはならないものです。
工事価格は、工事原価に加え、こうした一般管理費と呼ばれる費用も含めた総額となります。
工事原価
工事原価は工事にかかる費用の総計であり、直接工事費、共通仮設費、現場管理費から構成されています。
- 直接工事費:直接工事費は、材料費(工事で必要なコンクリートや鉄筋などにかかる費用)、労務費(工事に携わる大工や左官など職人にかかる費用)、機械費(工事で使用するクレーンなどの機器類にかかる費用)などの直接経費に分かれます。
- 共通仮設費:工事施工そのものには直接関係しない費用ですが、工事全体を進めるために現場で共通して必要となるものにかかる費用です。工事をスムーズに進めるための準備や工事後の後片付けやゴミ処理費用なども該当します。
- 現場管理費:工事全体を管理するために必要な費用です。非常に多くの項目があり、労務管理費、安全訓練等に要する費用、租税公課、保険料、作業員給料などもろもろが含まれます。
一般管理費
一般管理費は、工事の施工に直接関係しない経営維持費です。
建設会社が経営に必要とする費用や利益などのことで、主なものとしては、建設会社本社の従業員給与や交通費などの諸経費、福利厚生費、家賃や水道光熱費などを指します。
現場の作業員に対する給料や退職金などは現場管理費になりますが、本社の人員に関してはこちらの項目に含まれるので注意しましょう。
【建築業】一般管理費とは?現場管理費との違いや一般管理費率を解説直接工事費と間接工事費の違い
間接工事費は、資材の運搬費用や足場の設置費用、防音対策なども含めてかなり幅広い範囲が含まれます。
たとえば、建築物を仮設する際に必要な費用である共通仮設費、工事現場を管理するのに必要な現場管理費が該当します。
これらは経営維持とはまた違った意味で、直接工事費とは分けて考えます。
直接工事費と間接工事費の違いは、施工に直接関係するかどうかです。
一部工事物も含まれますが、それは工事が完了した時点で発注者の手にわたるものか、それとも撤去されるものかで考えるとわかりやすいでしょう。
たとえば、工事期間中敷地を囲う工事用フェンスや現場事務所、仮設トイレなどは工事に必要不可欠ではありますが、完成すれば必要なくなるものです。
たとえ工事現場にあったとしても、竣工後に発注者の手にわたるか、それとも取り払われるかで区分するようにしましょう。
見積・積算に関する記事はこちら
直接工事費の内訳と計算方法
直接工事費の内訳は材料費、労務費、直接経費の3つです。
積算するには、費用の算出式や歩掛を明確にした積算基準にもとづいて行う必要があり、一般的に国土交通省の「公共建築工事積算基準」を使用します。
材料費
材料費は各仕入先からの仕入れ値などであり、材料一つずつに対し、材料の数量×材料の単価で算出します。
詳しくは以下の通りです。
所要数量(設計数量×(1+ロス率))×材料単価(購入単価+運搬費)
労務費
労務費は人件費などで、所要人数に歩掛(ぶがかり)を用いて算出します。
歩掛は、一つの作業を行うにあたり必要となる作業手間を数値化したもので、人工(にんく)という作業量を表す単位を用いて算出します。
詳しくは以下の通りです。
所要人数(設計作業量×該当作業の歩掛)×労務単価(基本日額+割増賃金)
直接経費
直接経費は、特許使用料と水道光熱費、機械経費を計算し、合算して算出します。
特許使用料
測定では、特許権や意匠権の対象となる施工方法や試験法を使用することがあり、特許の使用料やその技術を持つ技術者の費用が必要な場合があります。
計算方法は、国土交通省のホームページで下記のように記載されています。
共有特許工法等を使用する場合は、実施契約に基づく、民間企業等が有する特許権の持分に対応した特許使用料を計上し、民間特許工法等を使用する場合は、当該特許工法に係るすべての特許使用料を計上する。 なお、特許権、実用新案権及び意匠権等を用いて施工・製作させた装置等については、特許使用料が含まれている場合があるので留意されたい。
引用元:国土交通省ホームページ「『土木工事工事費積算要領及び基準の運用』の改定について」
水道光熱電力料
水道光熱費は、一般家庭と同様に時間あたりの使用量を電力会社などの規定に従い算出します。
また、投棄料も水道光熱電力料に含まれますので覚えておいてください。
ここでも施工に直接かかる費用である点を忘れてはいけません。
工事とは直接関係ない水道代などは間接工事費の一般管理費に含みます。
機械経費
機械経費は、所有している場合は建設機械等損料で算出します。
リースの場合は建設機械等賃料で算出します。
原価管理に関する記事はこちら
直接工事費の記載方法
積算した内容から見積書を作成しますが、見積書に直接工事費の記載をする場合、2種類の記載方法があります。
材料別単価と複合単価(材工共単価)ですが、公共工事の見積書では複合単価で記載する方法が主流となっています。
どちらの記載方法で見積書を提出するかは、積算前に必ず確認しておきましょう。
実際には記載方法が違うだけでなく計算方法が異なるため、提出金額にわずかな差が生じることもあるからです。
後から修正するのは大変な手間と労力を要しますので、事前確認が必須です。
材料別単価
直接工事費のうちの材料費、労務費、直接経費をそれぞれ分けて算出し、1行ごとに記載します。
材料ごとに材料費、労務費、直接経費をそれぞれ分けて算出し、それぞれで記載してください。
たとえば、材料費○○円、労務費○○円といったように行を分けて記載します。
複合単価
材料費の中に労務費などの施工費用を加え、材料名ごとに記載します。
一つの材料に対する見積金額にそれぞれの労務費・直接経費も含めて記載する方法です。
見積書の書き方に関する記事はこちら
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まとめ
直接工事費は、施工に直接関係する費用であり、積算業務でも非常に重要な数字になります。
間接工事費との違いや一般工事費との違いなどを正しく把握し、間違いのない算出ができなければ事業の根幹に関わるため注意が必要です。
内訳も多岐にわたりますが、間違いが許されない作業ですので、計算ミスや記載漏れを防ぐには計算ソフトや管理システムの使用が不可欠と言えるでしょう。
たとえば、見積書作成時に急に記載方法が変わってしまったとしても、即計算をし直して簡単に切り替えを行えることは大きなメリットです。
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