さまざまな場面で見積もりを取るため、言葉に馴染みがある方も多いでしょう。
しかし、積算となると、建設業界でしかあまり使わない用語です。
大まかに見ていくと見積もりと積算は似ているため、一緒のようなものに感じてしまう方もいるでしょう。
混同しやすい用語ですが、実はそれぞれ別です。
こちらの記事では、積算と見積もりの違いやそれぞれの役割について詳しく解説していきます。
積算と見積もりの違いとは
積算と見積もりは内容を見ていくと、一見同じようなものに感じます。
しかし、細かく見ていくとそれぞれに違いがあり、重要な役割を担っています。
積算と見積もりにどんな違いがあるのか、詳しく見ていきましょう。
積算とは
工事に必要となる全体的な費用を算出する方法を積算と言います。
取り掛かる工事の図面や書類の内容を確認し、関連する材料がどの程度必要かを細かく見極め積み上げ方式で計算します。
積算は、工事を行う際にトータルの金額がいくらかかるのか算出や予測にも活用できて便利です。
1つの建物を造る時、さまざまな下請け業者や職人に発注する場合が多いです。
その場合、単価も変わってきますし、使う資材や人材なども違うため、計算を行うと煩雑になります。
実際に、さまざまな費用を地道に計算を行うのは大変です。
さらに、建築などの基礎知識がないと難しい作業でもあります。
未経験で積算の仕事を募集している場合もありますが、勤務してからは積極的に知識を身につける力とミスをしない慎重さがないと難しい仕事です。
もしミスが起きてしまうと、自社だけでなく外注先業者にも結果的に利益がほとんど出ないなど迷惑をかけてしまいます。
見積もりとは
自社として利益がなければ、会社を維持できません。
見積もりは積算額に自社が受け取る利益額を加算したものを指します。
積算額はあくまでも工事費用のみで、自社にとってプラスになる費用は含まれていません。
そのままの金額で契約してしまったら、利益が出ない状態になってしまいます。
自社の利益は必要なため一定分を上乗せした状態で見積もりをします。
見積もりの役割
見積書の役割として一番大きいのは、イメージしていたものと相違が生じトラブルになるのを防ぐためです。
たとえば、家を購入したいと考えた時、トータルで費用がいくらくらいかかるかは重要です。
どんなに家が欲しいと思っても元々かかる費用が高すぎる場合は、購入者も予算に合った方法を検討しなければなりません。
ローンも通らない可能性もありますし、後から知らない話だとトラブルになる可能性もあります。
書面を交わさずに口約束で取引もできなくはありませんが、記録に残らない分トラブルに発展したら大変です。
受注側と発注側両方の認識にズレがないか確かめるためにも、見積書は大きな役割を果たします。
トラブルになりそうになっても、お互いに書面で確認が可能です。
見積書には手数料や人件費など不透明な金額が細かく記されているので、信頼性も持たせてくれます。
積算と見積もりの違い
計算の仕方は途中まで共通するため、一見似ているように感じます。
しかし、見積もりはそこに自社の利益を加えるため、その点が大きな違いです。
ほかには計算するタイミングも違います。
積算は工事を行う際に計算をしますが、見積もりはその後積算を基に利益を上乗せするため変わります。
見積もりを出すためには、積算が必須です。
積算と見積もりに関する記事はこちら
なぜ積算が重要なのか
適当に工事の依頼を受け材料費や人件費などを計算していなかったら、赤字になる可能性が高くなります。
なんとなく黒字になるだろうと作業をしているうちに、トラブルが発生し赤字になる場合もないわけではありません。
ここからは、積算がなぜ重要かさらに詳しく見ていきます。
積算の重要性
会社を存続させるためにも利益は重要です。
慈善事業ではないですし、赤字が多く出てしまうと請け損になってしまい借金を抱えてしまいます。
積算をしておくことで、工事費用のだいたいがわかってきます。
予算をいかに抑えて利益を確保するか考える際にも重要です。
使う材料だけでなく、工事に関わる人件費なども細かく計算していきます。
工場でいつも同じものを生産していくわけではないため、毎回必要な費用を算出して原価を知ることは大切です。
建設費用は時に数十億円にもなるため、少しの狂いが大きな損を生みます。
算出するためには、基礎知識だけでなく材料や設計図の知識などさまざまなことを知っていないと難しいです。
積算の役割
積算では細かく計算し算出するため、どの程度利益をプラスすれば自社としての経営が成り立つかがわかります。
算出した金額は、工事物件の受注にも大きく関わってきます。
自社がどんなに頑張っても、赤字だらけでは大変です。
積算では赤字を出さないためにも、大きな役割を果たしています。
万が一積算は計算を間違ってしまうと、自社だけでなく取引先にも迷惑をかけてしまいます。
大きな金額のズレが出てしまうと、自社としての信頼を失い受注機会がなくなってしまうかもしれません。
後から追加請求が起きてしまうと、相手にも大きな迷惑をかけます。
積算に関する記事はこちら
積算を行う際のポイント
積算を間違ってしまうと、自社のダメージが大きいです。
特に大きい金額を動かしている場合、少しのミスが広がってしまい取引先に迷惑をかけてしまいます。
施工条件を細かく把握して、臨機応変に対応する力が求められます。
なんとなくで計算をするのではなく、疑問に感じた点があったら関係者に相談をしながら進めていくのもピンとです。
ここでは、積算を行う際に重要なポイントをいくつか紹介していきます。
施工計画は綿密に立てる
なんとなく予算内に収まるだろうと、工法や使う材料を曖昧にしてはいけません。
細かく指定をして、どんな工法や材料を使用するのかハッキリさせていきます。
さらに、使用する機械は何を利用するのか、すべて綿密に検討して盛り込みます。
アバウトではなく何という機械や材料かハッキリ決め、予算を計算すると後から金額のズレが起きません。
スクラップなど建設副産物の処理方法も細かく考え記載し、漏れのない計算がコツです。
さらに、通常通り施工計画が進んだ時だけでなく、緊急時の対応も考えておく必要があります。
いざ何か起きた時も想定しておくと、予算の狂いを軽減できます。
建築に携わる方が安全に作業できなければいけないため、安全な作業環境も必要です。
設備にもある程度予算を費やす必要があるので積算に含めます。
建築現場や気候などの施工条件の考慮
建築現場はいつでも同じ環境とは限りません。
地形や気候が変わる場合も多く、まったく同じ条件な建築現場はないくらい違っていきます。
そして、地形や気候の違いは、施工方法にも大きく影響を与えます。
たとえば、もともと水田として利用されていた土地に建築物を建てる際は、地盤の強度を上げるため別途予算が必要です。
使用しなければいけない機械も変わってきますし、環境によっては普段よりも作業してくれる人の人数を増やさなければなりません。
設計図を見ていくと、現場や気候などでもう少し状況を詳しく知りたい時が出てくるでしょう。
なんとなくで予想し作成すると後から大きなミスにつながりますので、関係者に問い合わせ詳しく確認していくことも重要です。
歩掛への臨機応変な対応
現場によって歩掛は違いが出てしまうため、厳密に適用せず臨機応変に対応しなければなりません。
細かく積算しなければならないと厳密に適用してしまうと、後からズレが生じてしまいます。
国土交通省や文部科学省でも、積算の基準となる歩掛を公表しています。
よく見ていくと、条件設定が細かくしてあるものがあり、実際現場で使用するものとまったく一緒とは限りません。
厳密にしようとすると逆に狂いが生じてしまうため、参考程度に見ておきましょう。
公共建築工事積算基準等資料
積算ソフトを用いる
積算を計算する際、ミスをしてしまうと後から損失や信頼を失うなど大変です。
少しでも効率良く正確に計算するために、積算ソフトを用いると良いでしょう。
積算ソフトは建築などの業務用として使えます。
自社の利益も考え、見積書作成までこなしてくれるソフトもあり便利です。
歩掛の計算も、積算ソフトが材料の数量を見て行ってくれます。
すべてを自社で行うよりも、大変効率的に計算できます。
積算の計算になれていない未経験の方でも、ソフトがあるかないかでは変わってくるでしょう。
サクサクできる分、ほかの業務を行う時間もできて便利です。
積算ソフトを導入するコストもありますが、それでも利用すれば会社として価値を感じられるでしょう。
積算ソフトに関する記事はこちら
積算ソフトなら『建築業向け施工管理システム アイピア』
まとめ
建築を行う場合、現場によって条件が変わってきます。
そのため、適正にかかる費用を計算できなければ、後から黒字だと思ったら赤字だったなど、自社の存続に関わる危機が訪れてしまいます。
はじめに積算を綿密に計算しておき、何かリスクがあった時も想定しておくと安心です。
似たものに感じる積算と見積もりは違います。
積算に自社の利益分を足したものが見積もりになります。
それぞれが大きな役割を果たし、建築などの工事を行う際には必要です。
積算を計算する時には自社としての効率化を図るため、専用ソフトを利用すると便利です。
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