【建設業】2024年適用の労働基準法とは?違反した場合の罰則も解説

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企業は多くの法律を守りながら経営を続けていかなくてはいけません。
極端な話、法律を守らなければたくさんの利益を生み出せるでしょう。

とはいえ、違法行為にはリスクがあるのも事実です。
特に労働者を違法に働かせながら利益を出そうとすると、過労死をはじめとした、たくさんの問題が出てくるでしょう。

そのために、政府では労働基準法を設け、労働者を守ろうとしています。
今回は企業が守るべき労働基準法について解説していきます。

労働基準法とは

労働者は企業に勤めるうえで安全に働けるような環境に置かれなければいけません。
もしも安全な労働環境が整っていなかったらどうなってしまうでしょうか

労働者は、労働の過程で不利益を被ることや最悪の場合死に至りかねません。
そうなると、労働に魅力を感じる人々はいなくなり、最終的には社会的な損失にまで発展してしまいます。

労働基準法とは、企業に向けて安全な労働環境を作るよう促すためにある法律です。
当然ながら、これは労働者を雇用している企業は必ず守らなければいけません。
加えて、労働基準法は常に一定のものとは限らず、社会の変化に合わせて改訂され続けるものです。

かつての基準に合わせて経営を続けていたところ、労基法違反になってしまったとならないように注意しましょう。
今回は2024年から適用される基準について紹介していきます

【建設業】労働基準法とは?基本的な内容や改正ポイントを分かりやすく解説!

時間外労働の上限規制

2018年に改正された労働基準法の目玉として、時間外労働の上限が設けられたことが挙げられます。
それまでは具体的な数字で時間外労働が規制されたことはありませんでした。
しかし、この改正によって月45時間、年360時間の上限が設けられるようになりました。

もっとも、業界によってはこうした数字を大幅にオーバーして時間外労働を行っているところもあるでしょう。
建設業界はその最たる例で、特に忙しい時期には労働者に残業をお願いすることも少なくありません。
そのため、建設業界には5年間の猶予期間が設けられることになりました。

すぐに改善する必要はないものの、2024年までに時間外労働を少なくするよう命じられた形です。
これによって2024年以降、建設業界でも過剰な残業を課すことはできなくなりました

【建設業】2024年問題とは?働き方改革のポイントや注意点を解説

災害の復旧・復興事業に関する上限規制

今回の労働基準法の改正によって建設業界は少なからぬ影響を受けることとなりました。
とはいえ、中には影響を受けない部分も存在します。
それは災害現場での工事や作業に関する分野です。

もちろん、いかに災害からの復旧事業といえど、労働者に対して過度な時間外労働を課すようではいけません。
しかしながら、時には急ピッチで復旧を行わなければいけない現場があるのも事実です。
その際に、時間外労働の規則が足かせになったために、工事が行えないとなったら困ってしまうでしょう。
そのため、今回の改正では災害の復旧・復興事業に関しては一部上限を設けないと決められました。

具体的に言うと、災害現場で労働する際は月100時間以上、複数月平均80時間以上の時間外労働が行われても罰則は科せられません。
もっとも、かといって時間外労働をやらせたい放題になるというわけでもないです。
年720時間以上、月45時間以上の時間外労働が6ヶ月に及ぶと注意しましょう

労働基準法における休日とは

人間はロボットではありませんから休日が必要です。
当然、休日に関する規定も労働基準法には記載されています。
続いては、労基法で定められている休日について解説していきましょう

法定休日

労働基準法では、1週間に1回、もしくは4週間に4回以上休日を設けなければいけないと定められています。
そのため、必ずしも毎週休みを設けなければいけないというわけではありません。

たとえば、月の1週目と3週目に休日を設けなかった一方で、2週目と4週目には2度休日を設けたというケースであれば、4週間に4回以上の規定を守っているので違反にはならないです。

法定外定休日

労働基準法では、週休1日でも問題ないと決めていますが、実際週1日しか休みがない中で働くのは大変でしょう。
そのため、企業では週休2日を敷いている企業も多いです。
こうした法律上には記載されていないけれど、労使協定によって設けられた休日を法定外休日と呼びます

就業規則への記載方法

就業規則を作るうえでは、こうした法定休日法定外休日の違いを明記しておく必要があります
たとえば、月曜日を法定休日とし、火曜日を法定外休日としたとしましょう。
これによって、月曜日に働かせるのは違反だけれど、火曜日に働かせるのはケースによっては許されるとの違いが明確になります。

労働基準法における休日の最低ライン

労働基準法では、企業は年間105日以上の休日を設けなければいけないという最低ラインを設けています
1年はおよそ52週ですから、週あたり2回休日を設けなければいけないことになるでしょう。
実際の社会ではこれに加えて、お盆休みや年末休みなどで105日よりも多く休みを取っている労働者が多いです。

労働時間が短い場合

実際に、企業を運営するうえではすべての従業員は正社員である必要はありません。
特に建設業界ではアルバイトを雇ってやりくりするケースもあるでしょう。

その場合、彼らは短時間で労働してもらう場合もありますが、その際休日はどう規定すれば良いのか気になるところです。
アルバイトといえど週1日、4週4日、年間105日の規定は守らなければいけません
働いている時間が短いから休日も少なくていいだろう、とはならないです。

法定休日に労働した場合

企業は労働者に対して一律に休みを与えられるわけではありません。
時には休日出勤をお願いせざるを得ないケースもあるでしょう

その際は、しっかりと労働基準監督署に申請して、休日労働を許可してもらわなければいけません
休日出勤に対しては通常よりも多めに賃金を支払う規定がありますので、給与算定の際にはくれぐれも忘れないようにしましょう。

法定休日が出張の移動日にあたる場合

ちなみに、中には日曜日に飛行機や新幹線などで出張先に移動し、月曜日から働いてもらうというケースもあります。
その際は、休日出勤として扱われるのでしょうか。

移動している間は労働とはみなされないので、休日出勤とはなりません
そのため、休日手当を出す必要もないのですが、代わりに出張手当は支給する必要があります。

休日を変更したい場合

法定休日をいつにするかは企業の自由です。
とはいえ、就業規則を作るうえではこの日が法定休日、ということは決めておかなくてはいけません。
加えて、休日を変更する際はしっかりと労働者との間で打ち合わせを行う必要があります

たとえば、日曜日が法定休日だったとして、月曜日に変更したいと考えたとしましょう。
その場合は労働組合の代表と交渉したうえで、新たに就業規則を作り直さなければいけません

労働基準法違反が発覚するとどうなる?

上記のように、労働基準法はきめ細かく規定が決められています。
基本的にはルールに従って経営していれば違反するようなことはないでしょう。

しかし、忙しさのあまり労働者を働かせすぎてしまってルールを守れなかったというケースもあり得ます。
もし労基法に違反してしまったら、どのようなことが起きるのでしょうか

労働基準監督署が調査を実施

労働基準法を取り扱っているのは、全国各地にある労働基準監督署です。
労働者は、ここに相談しに行ったうえで企業に調査を実施するよう要請します。

監督署が企業の中に立ち入ったら素直に資料などを提出しなければいけません
タイムカードなどはしっかりと記録したうえで証拠物件として残しておきましょう。
この立ち入りを拒否したら、かえって罰金を科されるので気を付けてください。

違反とみなされたら是正勧告

労働基準法に違反したらすぐさま罰則が科されるというわけではありません。
悪質なケースは一発で罰則にまで発展するでしょうが、中には仕方なく違反せざるを得なかったというケースも存在します。
そういった企業に対して監督署は改善するよう是正勧告を出すのが一般的です

司法処分

もし度重なる是正勧告を無視した場合や労働状況を改善できなかった場合は訴訟にまで発展します
労働者が企業に対して訴訟を行う場合は民事として取り扱われますが、労働基準監督署が訴訟を行った場合は刑事として取り扱われます。

民事の場合は和解金を支払うだけで良いですが、刑事で有罪になったとしたら懲役や罰金を科されかねません
ここまで発展する前に、労働状況を改善するようにしましょう。

労働基準法違反になる事例と罰則

労働基準法の違反事例はさまざまあります。
それぞれの事例によって罰則内容は異なりますので、ここからはそれらを詳しく見ていきましょう。

強制労働

たとえば、この仕事はやりたくないという労働者に対して、強制的に労働をさせたとしたら労働基準法違反です。
強制労働は最低でも1年、長ければ10年以上の懲役、もしくは20万円から300万円の罰金と規定されています。

中間搾取

本来給料は雇用者から労働者に対して支払われるものです。
この際、雇用者に労働者を紹介したうえで、仲介料として給与から一定額をもらうということは、労働基準法上やってはいけない行為です。
俗にピンハネと言われますが、これに違反すると1年以下の懲役、もしくは50万円以下の罰金が科されます。

法定労働時間を超えた労働

上記のように、新しい労働基準法では時間外労働に対する上限規制が設けられました。
上限時間を超過するとどうなるのでしょうか。
その場合は罰金30万円以下か、6ヶ月以下の懲役に処されてしまいます。

残業代の未払い

企業は、時間外労働に対しては賃金の25%以上の割増賃金を支払わなければいけません
この残業代の未払いはしばしば問題になっていますが、これについても法定時間労働と同様の罰則が科せられます。

休憩・休日を取らせない

労働基準法においては、休日はもちろんのこと休憩も設けるよう決められています。
ここでは休憩の規定についても紹介しましょう。

6時間労働以下の場合は45分以上、8時間労働の場合は1時間以上休憩を設けなくてはいけません
そのほか、中には従業員を現場の外で休憩させているように見せかけて、休憩室で事務作業などをさせている企業も少なくありませんが、これも違反です。

産休・育児時間を取らせない

近年は、社会で積極的に産休を取るような流れが一般化しています。
とはいえ、まだまだ産休の申請を拒否して働かせている会社も少なくありません。

本当は産休を取りたかったのに、会社から出社するよう言われて、結局泣き寝入りする人もいますが、実はこれは労基署に駆け込めば労基法違反として告発できます

就業規則の未作成

法定休日や法定外休日の項目で就業規則について言及しました。
もしこの就業規則を作らなかったらどうなるのでしょうか

その場合は懲役が科されることはありませんが、30万円以下の罰金を支払うよう命じられます。
ちなみに、就業規則は従業員が10人未満であれば作る必要はありません。

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まとめ

充実した経営をするためには、労働者に気持ち良く仕事をしてもらうような環境づくりが大切です
この環境を作るうえでも労働基準法を参考にすることは欠かせません。
単にルールだから守らなければいけないと思うだけでなく、労働者とより良い関係を作るために、という意識で労働基準法を守るようにしましょう

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