工務店においては、新築やリフォームなどの請負を依頼される前に、見積書を作成して提案するのが基本です。
この記事では、工務店における見積書の役割を明確にするとともに、見積書の作成方法や作成の際の注意点を解説していきます。
工務店で発行する見積書の役割
工務店で、顧客から問い合わせや相談を受けると、まずは「見積書を持っていきますね。」と受け答えしていませんか。
顧客から相談を受けた際の当たり前の流れとして、基本業務として行っているかもしれません。
依頼してもらうか選ばれるための提案書、という位置づけの方もいるでしょう。
工務店で発行する見積書の役割を、改めて理解し直してみましょう。
見積書の役割を理解することで、より顧客の意向に沿った見積書の作成や提案ができるようになり、これまで以上に選ばれるようになります。
クライアントとの合意形成
工務店で発行する見積書の役割の一つは、クライアントとの合意形成です。
見積書の作成にあたっては、まずクライアントから、どのような工事をしたいのか、どんな内容が良いのか、悩みや希望などをヒアリングすることや予算などを確認するのが基本です。
そのうえでプランニングを行い、いくらかかるか見積書にて提案することになります。
クライアントはそれを確認し、自分の希望が反映されているかなどをチェックし、それにいくらかかるかを確認することができます。
ヒアリングや相談している時には見落としてしまったり、お互いの理解が得られていなかったり、誤解が生じていた部分があっても、見積書を確認することで、違いなどを発見することが可能です。
違う点があれば、見積書を作成し直すなどすることで、互いの共通認識のもとで合意形成へと導けます。
スムーズな契約
クライアントの中には複数の工務店と相見積もりを取るケースも少なくありません。
もっとも、見積書の提案を通じて、クライアントのニーズを反映し、しっかりと説明を行うことで合意形成が得られます。
お互いに内容面も費用面も合意することで、スムーズな契約へとつながりやすくなります。
見積もり精度の向上
クライアントへの提案を繰り返していくことで、相手の悩みの引き出し方や要望の受け止め方も、しっかりできるようになり、見積もりの最初からクライアントの意向を反映しやすくなります。
見積もりの精度が向上するほど、合意形成がしやすくなり、スムーズな契約につなげることが可能です。
また、1人のクライアントとの対応の中でも、簡易見積もりから、実見積もり、さらに希望を反映しての見積もりなど、精度を高めることで、合意形成につながります。
見積書に関する記事はこちら
見積書の書き方
工務店における見積書の書き方をしっかり押さえていますか。
古くは、紙1枚で請負金額だけ提示するといったケースもあったかもしれません。
もっとも、今や総額だけを提示するのは、技術も資格もない悪徳業者が行うことです。
見積書の適切な書き方を理解して、クライアントが納得できる見積書を作成していきましょう。
表紙
表紙は、いわゆる「御見積書」といったシンプルな表紙ではなく、工務店の場合は、お見積もりの概要を示すものにするのが一般的です。
請負代金の総額を表示し、工事名称、施工場所、クライアント名、工務店名と所在地、代表者名、見積書の作成日などを入れます。
総額がいくらかをメインに、わかりやすく明確なレイアウトにするのがベストです。
見積書は何度も更新される場合もあるので、いつ時点での見積もりかの日付の記載と、管理するための通し番号なども入れるようにしましょう。
内訳書
内訳書は、見積書のメイン内容です。
工事内容の総額だけでなく、その内訳を細かく明示しましょう。
たとえば、足場費用はいくら、工賃はいくら、各資材の代金はいくらといったものです。
条件書
条件書は、どのような内容で見積もりをしたかを示すものです。
また、契約の前提条件を示すうえで、重要な位置づけになります。
条件が変われば、当然ながら見積もりの金額や内訳も変わってしまうので、条件書もセットで付けましょう。
条件は口頭で確認した通りといったスタンスでは、思わぬトラブルにつながります。
特に相見積もりを取るクライアントの場合、比較検討の材料としても条件書が大切になります。
見積書の書き方に関連する記事はこちら
見積書の作成方法
見積書の作成方法の代表的なものを見ていきましょう。
それぞれの特徴を確認していきます。
ワードやエクセル
工務店の見積書作成方法として、従来的かつ代表的な方法がワードやエクセルを使用する方法です。
ワードで表紙や条件書などのひな形を作成し、内訳書はエクセルでひな形を作り、数値などを変えることで自動計算させるといった方法が多いのではないでしょうか。
作成したシートを、各自管理することや共有のフォルダで管理するなどしないと、内容が上書きされて残らなくなるなど、トラブルが生じるので注意が必要です。
工務店ごとに統一のルールを設けて、作成、管理することが求められます。
工務店向け見積システム
工務店向け見積システムは、選ぶシステムによってもできることが異なりますが、見積もりだけでなく、顧客管理や契約管理、支払管理まで一貫してできる仕様のものが人気です。
クライアントの情報を登録し、希望条件などを入力すれば、表紙、内訳書、条件書が自動的に出てくるものも多いです。
さらに、一度作成した見積書はクライアントごとに管理され、履歴の管理もしやすくなっています。
見積書の作成業務を効率化させ、管理をしやすくできるのがメリットです。
見積システムに関する記事はこちら
工務店での見積書発行の注意点
工務店での見積書発行の注意点を見ていきましょう。
注意を欠き、思わぬトラブルを起こすことや後で困ることがないようにしたいものです。
修正前の情報を残す
プランや見積もりには修正がつきものです。
高額な工事の依頼となり、完成したら簡単には修正できないものなので、契約前、着手前に何度も、希望を反映し直すケースが少なくありません。
クライアントが納得するまで修正をしていくうえでは、従前の見積書をどんどん上書きするのではなく、修正前の履歴も残しておきましょう。
クライアントの中には、「やはり、最初のがいい。」とか、「2回目の提案のほうが良かった。」など、前のプランに戻る方もいます。いろいろと検討したうえ、最初のほうのプランが良かったとなるケースは意外に多いです。
その際に、もう一度作り直しとなると非効率です。
また、修正前の情報も含めて履歴を残しておけば、別のクライアントの提案にも活用できることやどんな提案や見積もりが顧客に好まれるのかのノウハウも蓄積できます。
金額の記載方法
金額は桁などを間違えないように、正確に記載します。
金額が改ざんされないよう、金額の先頭に「-」を記載しておくと安心です。
現在、不特定多数への掲示には消費税額を含めた総額表示が義務づけられていますが、見積書の金額記載においては、税抜きなのか、税込みなのか、本体価格や税込み価格の別をしっかり明示し、誤解のないようにしましょう。
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まとめ
工務店で発行する見積書の役割は、クライアントとの合意形成を行い、スムーズな契約に結び付けること、見積もり精度の向上です。
見積書の書き方は表紙をつけ、内訳書と条件書を用意しましょう。
見積書の作成方法としてワードやエクセルを用いる方法、工務店向け見積システムを使うことが挙げられます。
工務店での見積書発行の注意点として、修正前の情報を残しておくこと、金額の記載方法に気を付けましょう。
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