事業をするにあたって、安全を確保するのは最優先事項です。
あらゆる業者が安全に事業できるために日本ではさまざまな法律が施行されています。
消防法もその一つなのですが、実は最近これが改正されました。
今回は、消防法の改正によって変わったポイントと、覚えておきたい危険物の取り扱いについてご紹介していきます。
消防法とは
日本は木造家屋が多い国です。
そのため、火の不始末によって火事が起きた際に被害が大きくなることが少なくありません。
日本では1年あたり3万件から4万件の火事が起こっているとされ、毎年1,000人を超える死者が生じています。
それ以外にも火事によってもたらされる被害は大きいので、防災意識は欠かせません。
特に大きな建物を有している企業などが出火してしまうと、近隣住民に与える影響は甚大なものになってしまいます。
なおさら火事に対して細心の注意を持って予防しなければいけないでしょう。
もっとも、ただ単に火事を予防しようと呼びかけるだけではあいまいです。
何をどうすれば良いのか、何をしてはいけないのか、といった指針がなければうまく防災はできません。
そこで、日本では消防法という法律を施行し、これを各団体に遵守させることで火災を防止する方針を採っています。
消防法の目的(第1条)
法律書を紐解く時は、誰もが第1条から読み解いていくはずでしょう。
そのため、法律の第1条はたいていなぜこの法律が作られたのか、という目的が書かれています。
たとえば、警察法を読んでみると1条には、警察を置く理由は秩序を守るためだ、という条文が書かれています。
これと同じように、消防法の第1条に書かれているのはなぜこの法律があるのか、という目的です。
消防法の第1条では火災を予防すること、万が一火災が起こってしまった場合は、いかに被害を少なくできるか対策することなどが書かれています。
火災に関する記事はこちら
消防法の改正事項
消防法が初めて制定されたのは昭和23年です。
75年の間に日本は大きく変わりました。
たとえば、かつての日本には低い建物しかありませんでしたが、今となっては都会には高層ビルが林立しています。
また、かつては木造家屋が中心だったのがコンクリート住宅も増えてきています。
人々の住環境が変わってきている中で、消防法も変えなければ新たな火災の可能性には対応できません。
そのため、消防法はこれまで何度か改正されてきました。
そして、2022年9月にも新たに一部改正が公布されました。
法律の施行は2023年4月からとなっており、各事業者はしっかりと改正されたポイントを押さえなくてはいけません。
改正を知らないまま今まで通り事業を続けていたら、消防法違反だと指導を受けた、なんてことにはならないようにしましょう。
では、今回の改正ではどこが変化したのでしょうか。
旧規格の消火器の廃止
消防法第17条では、消火器の設置に関する文章がつづられています。
この条文ではどんな消火器を設置すれば良いかだけでなく、消火器を設置するべき施設も規定されています。
たとえば、一般家屋などで消火器を設置する義務はありません。
一方で、病院や老人ホームのような病人を収容する施設、飲食店や映画のような多くの人が集まる施設では消火器の設置が必須です。
加えて、150平方メートル以上の延面積を持つ施設もまた消火器を設置しなくてはいけません。
実際にこうした施設に足を運ぶと、どこかしらに消火器が設置されているのを見たことがある人も多いでしょう。
もっとも、消火器であればなんでも良いというものでもありません。
消火器には有効期限が設定されています。
有効期限を過ぎた消火器は中に詰め込まれた消化液が劣化してしまっており、肝心な時に鎮火できないというおそれがあります。
場合によっては、消火器を使った瞬間破裂してケガしてしまうという可能性も否めません。
こうしたことを防ぐために、消防法では規格の古い消火器は一律に廃止すると決定しました。
もっとも、今設置している消火器の規格はどう確かめたら良いのでしょうか。
目安は2010年以前に製造されているかどうかです。
もし今設置している消火器が2010年以前に作られたものならば旧規格ですから、すぐに交換するようにしましょう。
二酸化炭素消火設備の基準の変更
今回の消防法改正では、二酸化炭素消火設備に関する条文も追加されました。
学校でも習うことですが、火は酸素が十分にある環境の中で起こるものです。
そのため、火を消す手段としては、酸素の濃度を下げてしまう方法があります。
二酸化炭素消火設備は、火元に二酸化炭素を浴びせることで酸素濃度を薄め、鎮火に導くことを目的で作られました。
もっとも、新しい設備にありがちなことですが、安全基準が明確でなく、よくわからないまま使った人々によって事故が起こるケースが多発しています。
そのため、消防法では二酸化炭素消火設備を用いる際に人々が安全に使えるように基準を変更することにしました。
今回の変更では、点検の際は消防設備士が必ず立ち会わなければいけない決まりとなっています。
もし建物の中に二酸化炭素消火設備がある場合は必ずチェックするようにしましょう。
消防法における危険物とは
火はちょっとしたきっかけで起きるものです。
周りに引火を誘発するようなものがあればなおさらです。
私たちが普段暮らしている分にはこうした危険物はなかなか取り扱いません。
ですが、なかなか取り扱わないがゆえに何が危険物なのかはいまいちわからないでしょう。
そこでここからは、消防法が危険物をどう定義しているのかを学んでいきます。
危険物の定義
消防法は全部で46条にわたる法律です。
しかしながら、それ以外にも附則、そして別表というものが設けられています。
別表は3つありますが、このうち別表第一には危険物と定義されている物品がひと通り記載されています。
危険物はおおまかに分けて6種類です。
私たちに特になじみがあるのは第4類の引火性液体でしょう。
ガソリンや灯油などの原料となる石油は、いうまでもなく火に注いだらあっという間に勢いを強くしてしまいます。
ガソリンや灯油などが危ないというのはなんとなくわかるでしょうが、中にはこれも危険なのか、というものも少なくありません。
リンやマグネシウムなどの可燃性物質、ニトロやヒドロキシルアミンなどの事故反応性物質も消防法では危険物です。
見慣れない名前の物質を扱う際は、消防法において危険物と定義されているかをチェックしたほうが良いでしょう。
危険物の申請・届け出方法
消防法第11条では、危険物を取り扱う際にどうすべきか、という文章が書かれています。
これによると、危険物を製造したり貯蔵したりする際は、必ず各自治体の消防署に申請を行わなければなりません。
たとえば、ガソリンスタンドを運営するためには大量のガソリンや灯油を貯蔵しておかなくてはいけません。
もしガソリンスタンドを開設したいのならば消防署に届け出なくてはいけないです。
届け出を行うためには各自治体が指定する許可書を消防署に提出しなくてはいけません。
書類については役所などで交付してもらえます。
このほか、危険物を取り扱っている場所の見取り図や手数料なども必要になるので、忘れずに持っていくようにしましょう。
工事に関する記事はこちら
『建設業向けシステム アイピア』
まとめ
消防法を遵守することで得られる恩恵は、自社の安全を守るだけではありません。
周辺住民の安全を守ることにもつながります。
もし火災が起きてしまった結果、周辺住民に影響が及んだら莫大な賠償を負わなくてはいけません。
今回の例でもわかる通り、消防法はその都度改正されるものでもありますから、逐一チェックしておいたほうが良いでしょう。