建築業に携わっていても、瓦桟と言われてピンと来ない方は少なくないはずです。
近年は瓦屋根以外の住宅も増えていますし、瓦屋根の家で長く暮らしてきた方でも、屋根に貼られている瓦の状態を確認した経験のある方はほとんどいないでしょう。
屋根塗装を手掛ける職人でも知らない人は多いです。
なぜなら、瓦屋根は定期的な塗装が不要であり、瓦桟は瓦屋根以外では見られないからです。
ここでは、瓦桟とは何かから始まり、役割や材質、劣化した時の対処法をご紹介していきます。
瓦桟とは
瓦桟は屋根に瓦を施工する際に、瓦を支持するレールのように横向きに取り付けていく細長い木材です。
通常は横一直線に横桟木と呼ばれる部材を施工しますが、風の影響を受けやすい地域においては縦桟木が施工されることもあります。
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瓦桟の役割
瓦桟の役割は大きく2つです。
一つは瓦を固定することで、2つ目は雨水の浸入防止です。
いずれの役割も、建物を雨や風から守り、資産価値を維持していくうえでとても重要な役割と言えます。
瓦の固定
屋根の傾斜にただ瓦を並べただけではずり落ちてしまいます。
漆喰で固定するのにとどまらず、桟木を張って、その上に瓦を乗せることで瓦がずり落ちないように固定する役割があるのです。
雨水の浸入防止
瓦が隙間なく、均等かつきれいに並べられなければ、隙間から屋根材へと雨水が染み込み、雨漏りを引き起こす原因になります。
瓦が重なり合うことや隙間が生じないよう、桟木を張ることで瓦を等しく配分することが可能です。
瓦が正しく設置できてないと、隙間から雨水が入り込むおそれがあります。
下に敷設した防水シートの劣化を早め、最悪の場合、雨漏りを引き起こすので注意が必要です。
瓦桟の材質
瓦桟の材質は、従来は木材のものがほとんどでした。
ですが、木材は反りや曲がりやすく、施工時に亀裂が入るおそれがあります。
雨水に濡れて腐食もしやすいため、現在では腐食に強い合成樹脂製の瓦桟を利用するのが一般的です。
それぞれの材質の特徴と傾向について確認しておきましょう。
木材
木材といっても、さまざまな種類があります。
瓦桟に使われるのは、腐食に強い杉が一般的です。
とはいえ、雨水や湿気などの影響で次第に傷んでしまうのがネックです。
そこで、水分による腐食を防ぐため、防腐剤を塗って耐久性を高めた防腐処理済みの桟木も存在しています。
もっとも、新たに施工する場合やリフォームする場合には、木材の瓦桟はほとんど使われなくなりました。
一方、ある程度、築年数の経過している既存の屋根の瓦桟はその多くが木材です。
経年劣化により、腐食が起こるおそれがあります。
すると、瓦がずれて雨水が染み込むことや瓦が落ちて割れるリスクも高まります。
そのため、木製の瓦桟が使われている屋根では、定期的に点検を行い、補修や葺き替えなどのタイミングを調整しなくてはなりません。
合成樹脂(エコランバー)
近年、新たに瓦屋根を施工する場合には合成樹脂で作られているエコランバー瓦桟が使われるのが一般的です。
エコランバー瓦桟は品質が一定で、人工的に製造されるので、木材のような筋がありません。
そのため、天然木材とは異なり、反りや曲がりといった変形が起こらないのがメリットです。
合成樹脂は水にも強く、腐食するおそれもないので、耐久性にも優れており長く使用できます。
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瓦桟の修理方法
瓦桟が経年劣化した場合や腐食した場合にはどのように修理すれば良いのでしょうか。
特に、合成樹脂(エコランバー)の瓦桟が一般的に使われるようになる以前に建てられた住宅では注意が必要です。
木製の瓦桟は腐食しやすいため、点検を行い、必要に応じて修理を施さなくてはなりません。
瓦桟の修理方法としては、大きく分けて瓦桟の交換、瓦桟の葺き直し、屋根の葺き替えが考えられます。
それぞれについて見ていきましょう。
瓦桟の交換
地震の揺れや台風、強風などの被害や瓦桟の老朽化により、瓦が落ちたなどのケースが想定されます。
落ちた部分の瓦を貼ろうとしたら、下の部材である瓦桟が朽ちていたという状態です。
瓦桟というのは横や縦に長く伸びています。
そのため、落ちた瓦の下の部分だけの瓦桟を切断して交換することは通常難しいです。
どうしてもすぐに対応してほしい、費用をとにかく抑えたいという場合には、瓦桟が傷んでいる部分だけ瓦を取り外して交換、補修も可能です。
もっとも、多くのケースではその1枚だけではなく、全体に腐食が広がっています。
瓦桟が傷んでいるケースでは、防水シートや屋根材などの下地も傷んでいるケースが多いため、今後の建物の寿命を維持し、雨漏りから住まいを守るためにも、瓦の葺き直しや屋根の葺き替えが推奨されます。
瓦の葺き直し
桟の葺き直しする場合、通常、瓦屋根の葺き直しとして、瓦屋根の大規模リフォームを行うことが一般的です。
屋根瓦をいったん取り外して、瓦のない野地板の状態にします。
経年劣化で下地なども劣化が進んでいるので、下地の補強や必要に応じて交換を行い、防水シートを新しいものに敷き直し、その上から瓦桟を施工していきます。
瓦桟を新しいものに交換したら、一度取り外した瓦を元に戻します。
割れたり、欠けたり、ひびが入っているものがあれば、同じ瓦があれば、取り寄せることが必要です。
手に入らない場合には同系色、同形状のものを追加で用意します。
そのうえで、瓦を葺き直せば完成です。
瓦桟を部分的に交換する場合に比べれば、大きな手間と工期が必要となり、費用も高くなります。
一方、既存の瓦をそのまま利用できる点はメリットです。
環境問題が叫ばれ、産業廃棄物の軽減などが求められる時代です。
瓦の葺き替えなら、大量の瓦を廃棄することなく、再利用できます。
瓦は高温で焼いた焼き物であり、極めて長い寿命と耐久性を持っています。
何かがぶつかってひびが入る、落ちて割れるなどしない限りは、建物を雨水から守り、外観を美しく保つことが可能です。
同じ瓦を再利用することで資源を保護し、廃材を増やさず、エコで環境に優しい修理方法を採りたいなら、瓦の葺き直しがおすすめです。
和風住宅の趣を変えたくない方、瓦屋根の家に愛着がある方の修理方法としても、瓦の葺き直しが向いています。
瓦の葺き直しの目安としては、築30年を経過しているなら、瓦桟の腐食や瓦が落下したなどをきっかけに葺き直しを検討しましょう。
屋根の葺き替え
屋根の葺き替えとは、既存の瓦屋根から別の素材の屋根に変更するリフォーム工事です。
瓦をすべて取り外し、下地などを整えてから、金属やスレートなど別の素材の屋根を取り付けます。
この点、屋根材のリフォームには屋根カバー工法と葺き替えがあります。
カバー工法
既存の屋根材の上から新しい屋根材を乗せて二重構造にする形式です。
金属屋根やスレート、アスファルトシングルなどの屋根材なら、上から被せるカバー工法が可能です。
ですが、瓦屋根の場合、凹凸があり、その上から被せる工法は向きません。
そのため、すべての瓦を取り外して廃棄し、新しく選んだ屋根を載せ直すことが必要です。
屋根の素材が変わるので、当然ながら外観の見た目も変わります。
どんなイメージの屋根にするか、素材や色合いなどをシミュレーションして検討するのがおすすめです。
素材を選ぶうえでは、耐震性や耐久性など家を守るための機能性や性能にもしっかり着目しましょう。
費用面だけで考えず、資産価値を維持、向上させ、家族の生活を守ってくれる屋根材を選ぶことが大切です。
耐久性が高く、軽量素材の屋根は建物への負担を抑え、耐震性も高いです。
葺き替え
屋根の葺き替えを検討するケースとして以下のケースがあります。
既存の瓦が地震や台風で大量に落ち、瓦を揃えるのに時間がかかる場合や難しいケースです。
また、耐震性を高め、災害などによる瓦の落下による被害を防止したい時もおすすめです。
雨漏りが酷いなど老朽化が進んだ時も検討に値します。
外観を和モダンに変更したいなど、イメージチェンジをご希望の際も適しています。
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まとめ
瓦桟は瓦屋根の施工に欠かせない部材です。
その役割は瓦を固定することや雨水の浸入防止です。
瓦桟の材質はかつては木材でした。
ですが、腐食しやすいことから、より耐久性に優れた合成樹脂(エコランバー)が用いられるようになりました。
瓦桟が劣化した場合や損傷した場合の修理方法として、瓦桟や屋根の劣化度合いに応じて瓦桟の交換、瓦桟の葺き直し、屋根の葺き替えがあります。