決算報告書は緊張感を持ち正しく作成できないと、大きなミスにつながり損害賠償責任を負うケースもあります。
しかし、決算報告書を作成した経験があまりない方は、わからないことが多く不安を抱えているのではないでしょうか。
事前に知識をつけておくことが大切です。
こちらの記事では、決算報告書とはどんなものか、種類や作成方法を詳しく解説していきます。
決算報告書とは
自社の財務状況がどうなっているのか示す書類を決算報告書と言います。
内容は、損益計算書や貸借対照表などさまざまな書類があり、この1年利益はどの程度あり負債を抱えているのかなど、詳しい情報がすべて網羅されています。
現在の状況を示すだけでなく、今後の見通しを立てる際に経営判断にも活用される大切な書類です。
自社の財務状況をすべてまとめ、取引先をはじめ金融機関、株主、税務署などに提出しなければなりません。
取引先や金融機関にとっては、今後のやり取りをどうするのかの参考書類にもなります。
税務署にとっては、決算内容に怪しい箇所などがなく間違いのない納税ができているか判断しています。
決算報告書はおかしな点や不安視される点があると、今後の取引に関係し経営が成り立たなくなってしまうので、神経を使い間違いのないようにまとめなければなりません。
3つの法律
決算報告書には、3つの法律が関係していきます。
ここからは、関係してくる法律について一つずつご紹介していきます。
会社法
会社法では、正しく企業が運営できるようにルールが決められています。
ほかにも、組織や解散の法律についても定められています。
会社法で必要な書類は、貸借対照表、損益計算書、個別注記表などです。
法人税法
法人税法の中では、法人の税金全般についての法律が定められています。
納税義務者や税額の計算方法、申告方法について詳しく書かれています。
法人税法での提出しなければならない書類は、株主資本等変動計算書や貸借対照表、損益計算書です。
金融商品取引法
金融商品取引が適正に行われるように決められた法律が金融商品取引法です。
問題ない取引を行っているのかチェックし、透明性や安定性を図っています。
上場企業の場合は、有価証券報告書を作って金融庁などに提出しなければならないと義務付けられています。
有価証券報告書で必要な書類は、会社の概況や事業の状況、貸借対照表などです。
開示義務
決算報告書は隠すことなく、開示しなければならないと義務化されています。
ここからは、決算法報告書はどんな場合に開示義務が発生するのか解説していきます。
税務署への開示義務
税金を本来支払わなければならない分よりも少なく見積もってズルをしないためにも、税務署へはすべての企業が開示しなければならないと義務が発生しています。
万が一決算報告書におかしい点があった時は、罰則で追加の納税が必要です。
大企業や上場企業だけが提出すれば良いものではなく、小さい規模で経営を行っている会社もすべて対象です。
決算報告書を提出することが、法人税を間違いなく支払っている根拠を示すものになります。
上場企業・大企業の開示義務
企業の中でも、上場企業や大企業の場合は誰でも閲覧できるような開示義務があります。
これは金融商品取引法で決まっています。
上場企業や大企業とされるボーダーラインは、資本金が5億円以上か負債が200億円以上の株式会社です。
特定の株主や債権者からの請求による開示義務
決算報告書を見たいと、議決権比率3%以上を持つ株主や債権者から依頼があった時には開示しなければなりません。
万が一何か隠したいことがあるなどの理由で拒否してしまうと、罰則が発生します。
開示を求められたらすぐに見せられるようにしておきましょう。
収支決算書との違い
決算報告書は取引先をはじめ金融機関、株主、税務署などさまざまな場所に提出しなければならない書類です。
それに対して収支決算書は、決まった限られたメンバーなどへ向けて現金がどう動いたのかを報告します。
簿記の形式も決算報告書では複式簿記ですが、収支報告書では単式簿記になるなどいくつかの違いがあります。
決算報告書の種類
決算報告書にはさまざまな種類の報告書があります。
中でも貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書は、より重要な書類です。
ここからは、決算報告書の種類について解説していきます。
貸借対照表
自社の資産や負債、純資産のバランスを確認できる書類を貸借対照表と言います。
現時点で企業の支払い能力や安全性の高い企業かどうかが見られます。
貸借対照表では、左側に資産を書き、右に負債と純資産を書きますが、どちらも合計金額が一致しなければなりません。
貸借対照表とは?資産、負債、純資産に分けて解説!損益計算書
その年度でどれだけ経営が上手にいったのか成績を示す書類を損益計算書と言います。
企業としての収支をチェックできるだけでなく、必要のないコストが発生していないかどうか確認もできる書類です。
キャッシュ・フロー計算書
キャッシュフロー計算書は、自社で報告する事業年度にどんなお金の出入りがあったのかを示す報告書を言います。
現金が増えたら+で表示し、逆に減らした時には-で示します。
こちらで表示されるキャッシュフローは、営業活動と投資活動、財務活動の3つです。
キャッシュフローで注目されるのは、営業活動です。
ここがマイナス表示になっていたら、不安定な状況だと予測できます。
株主資本等変動計算書
事業年度における企業株主資本の変動を示した書類を、株主資本等変動計算書と言います。
株式を処分したり配当したりの流れが、株主資本等変動計算書ではわかります。
個別注記表
決算書に関連する貸借対照表などの補足する情報などをまとめた書類を、個別注記表と言います。
これまでは直接各書類に注記として記載すれば問題ありませんでしたが、法律が変わり計算書類の一つとして新たに作成しなければならないと決まりました。
事業報告書
提出する年度の事業概要や会社での状況についてまとめたものを事業報告書と言います。
見せる相手も理解できるように、事業の経過や成果、損益、課題、主な従業員の内容などを細かく書いて作成します。
附属明細書
計算書類の内容を細くする書類を、附属明細書と言います。
こちらの書類には、有価証券、固定資産、社債、借入金、引当金を主に記載します。
社債、借入金、引当金に関しては特にない場合や増減がなければ、記載しなくても問題ありません。
決算報告書の作成方法
決算報告書を作成するにあたって、手順や作成時期も決められています。
ここからは、決算報告書の作成方法についてご紹介していきます。
決算報告書の作成時期
決算報告書の提出期限は、法律によって変わってきます。
法人税法の場合は、普段毎年行っている確定申告までに並行して決算報告書の作成をしなければなりません。
会社法では、定時株主総会までに提出しなければならないと決められています。
具体的な日程は定められていませんが、だいたいの企業は事業年度が終了してから3ヶ月以内になっているケースがほとんどです。
金融商品取引法の場合は、事業年度が終わった後3ヶ月以内に提出しなければなりません。
ほかにも四半期終了した後45日以内にこちらの報告も提出が必要です。
決算報告書の作成手順
決算報告書を作成する際は、仕訳帳と総勘定元帳の準備が必要です。
ここからは、決算報告書を作成する手順についてご紹介していきます。
仕訳帳の作成
仕訳帳では、毎日の取引の内容や金額を書かなければなりません。
個別に漏れなく記録し、最終的に決算報告書でも提示できるようにしなければなりません。
取引内容に関連する勘定科目も記録します。
総勘定元帳の作成
仕訳帳を見ながら、今度は勘定科目ごとに残高を計算していきます。
その金額を総勘定元帳へと記載します。
決算報告書の作成
決算報告書を、具体的に作成します。
仕訳帳をまとめた総勘定元帳を見ながら、今度はキャッシュフロー計算書や貸借対照表、損益計算書などを作成します。
決算報告書作成のコツ
決算報告書を間違ってしまうと、意図的に何か隠そうとしているのかもしれないと疑われてしまう可能性もあります。
ほんの小さいミスが自社の信頼を失ってしまう可能性もあるため、ミスは許されません。
さらに、忙しい中でかなりの手間をかけ作成しなければならないため、大変です。
ここからは、決算報告書作成のコツについてご紹介します。
テンプレートを作成する
決算報告書で書かなければならない内容はほとんど決まっているため、事前にテンプレートを準備しておくと良いでしょう。
インターネット上で探してみると、使いやすく無料でダウンロードできるものが多々あります。
会計ソフトを利用する
ミスなく効率良く決算報告書を作成するなら、会計ソフトを利用しましょう。
人的な計算ミスを防げ、作成も効率良く行えます。
日々仕訳の数字を入力しておけば、最後決算報告書を自動作成してくれます。
機械がほとんど行ってくれるため、うっかりミスも減り、さらに人件費も節約でき効率的です。
経営分析にも!建築業向け業務管理システム『アイピア』
まとめ
決算報告書はミスが許されず、作成にも膨大な時間がかかります。
さらに、税務署や株主、金融機関など重要な場所に財務状況を報告しなければなりません。
決算報告書の作成しなければならない種類も多く、普段の仕事と並行しながら行わなければならないため、経理担当者は大変苦労します。
効率良く作成するには、会計ソフトがおすすめです。
多少の費用はかかりますが、計算ミスもなく自動生成できる部分もあり効率的です。
不安な場合は、まず無料お試しから始めても良いでしょう。