【建築業向け】経営分析とは?分析の指標や計算方法を徹底解説!

【建築業向け】経営分析とは?分析の指標や計算方法を徹底解説!

経営をうまく行っていくのはもちろん、業績を上げて企業成長を目指すため、倒産を防ぐためにも経営分析は欠かせません。
この記事では、建築業向けに経営分析とはどんなものか、経営分析をするメリットや注意点、分析の指標や計算方法を徹底解説していきます。

経営分析とは

経営分析は、自社の経営状況を把握し、課題や問題点を洗い出すことです。
日々の売上やコストなどを記録したうえで、貸借対照表損益計算書などを作成し、分析を行うのが一般的な手法です。
これらは、今後の成長やコストダウンを実現したり経営戦略などを練ったりするための重要な資料となります。

経営分析を行うメリット

経営分析を行うことで、以下のようなメリットがあります。

経営状態の客観的な把握

経営分析は、受注状況や景気動向などを見て直感的に行うものではありません。
売上やコストなどの数値をもとに行うことが必要です。
そのため、数値などのデータから、経営状態を客観的に把握することができます。

説得力のある戦略が練れる

経営分析を行うことで、客観的なデータをもとに課題を見出したり、課題解決のための対策を講じたり、中長期的な経営戦略を練ったりすることが可能です。
直感的な考えやその時の勢いなどに任せるのではなく、分析結果にもとづいた説得力のある戦略を練ることができます。

根拠がしっかりしているので従業員も戦略目標に積極的に取り組みやすく、成果を出せる確率も高くなるのがメリットです。

経営分析の際の注意点

経営分析を行うには客観的で精度の高いデータが必要です。
日々の取引の記帳をはじめ、適正な経理を行うことや決算書類などをしっかり整備することが求められます。

データの正確性は、分析の基礎となるものなので、必ず正確なものを使用しましょう。

建築業の経営分析指標とその計算方法

建築業の経営分析指標としては、経営を継続し、持続的な成長を遂げるうえで欠かせない収益力の分析と、経営基盤の安定性といった安全性分析が重要です。
収益力分析と安全性分析の主な指標とその計算方法を見ていきましょう。

収益力分析

経営を維持し、倒産させることなく、持続的な成長を遂げていくには、いかに収益を上げ続けるかが重要です。
経営分析の重要なポイントとなるのが、収益力の把握と分析です。
収益力を分析して、現状の問題点や課題を明確にし、それを改善、解決するための戦略を行うことで、業績を伸ばしていくことができます。

総資本経常利益率

総資本利益率とは、企業の総資本に対する利益を示す指標です。
以下の計算式で求められます。

総資本経常利益率=利益(経常利益)÷総資本×100

完成工事高営業利益率

完成工事高営業利益率は、完成工事高1単位あたりどれだけの粗利益を上げているかを示すもので、利幅を表す指標です。
工事を施工したことの採算性を把握するのに役立つ指標です。

完成工事高営業利益率=営業利益÷完成工事高×100

完成工事高営業利益率が高いほど利幅が大きく、採算性が高いと分析することができます。

完成工事高とは?完成工事総利益との違いや仕訳の注意点について解説!

完成工事高経常利益率

完成工事高経常利益率は、工事施工における営業活動上の収益性を表す指標で、経常利益率とも呼ばれる指標です。
以下の式で計算されます。

完成工事高営業利益率=営業利益÷完成工事高×100

従業員一人当たりの付加価値高

従業員一人あたりの付加価値高は、労働生産性などとも呼ばれ、以下の式で求めます。

従業員一人あたりの付加価値高 = 従業員数÷売上高×100

従業員一人あたりがどれだけ稼げるのかを表す指標で、従業員一人あたりの完成工事高を知ることで、生産性の高さなどを把握することが可能です。

総資本回転率

総資本回転率は、総資本を用いてどれだけ稼げているか、どれだけ資本を上手に回転させているかを示す指標です。
以下が計算式です。

総資本回転率(回転) = 売上高 ÷ 総資本

建築業では工事を受注して引き渡すまでに、資本から人件費・材料費などの経費を出し、次の工事を行うにはそれまでの売上金を次の経費に充てるサイクルを繰り返しています。
この1サイクルを1回転とし、総資本回転率で回転数が増えるほど、資本を効率良く使っていると評価することが可能です。

自己資本回転率

自己資本回転率は、自己資本を使って、どれほどうまく稼いでいるかを示す指標です。
総資本回転率と異なり、自己資本に特化した指標で、各事業年度の損益とも大きく関わります。
以下の式で計算できます。

自己資本回転率(回転) = 売上高 ÷ 自己資本

安全性分析

安全性分析とは、財務状態の安全性を分析することです。
短期的な支払能力を示す流動性と、長期的な観点から見た財務構造の健全性を分析することが大切です。

当座比率

当座比率は、流動負債に対して当座資産がどれくらい保有されているかを示す指標です。
短期的な債務返済能力の安全性を分析するために使うことができます。
当面の支払い能力の高さを示す指標で、以下の式で計算されます。

当座比率(%) = 当座資産 ÷( 流動負債 - 未成工事受入金 ) × 100

当座比率が高いほど、当座の支払能力が高いと評価することが可能です。

流動比率

流動比率は、流動負債に対して流動資産がどのぐらいあるのかを示す指標です。
計算式は以下の通りです。

流動比率(%) = 流動資産 ÷ 流動負債 × 100

流動資産が多いほど流動比率の数値は大きくなり、流動資産の保有が少ないほど数値は小さくなります。

流動負債、は1年内に支払期限が到来する短期の負債のことで、急に返済が必要になった場合に流動比率の数値が大きいほど対応力が高いと分析することが可能です。
流動比率の数値が小さいほど、資金繰りがつかず、倒産リスクも高いと分析され、安全性に問題が生じます。

流動比率と当座比率は何が違う?求め方や見るポイントについてご紹介!

固定比率

固定比率は、自己資本に対する固定資産の割合を示す指標です。
以下が計算式です。

固定比率(%) = 固定資産 ÷ 自己資本 × 100

長期的な観点から経営の安全性を分析する指標であり、固定比率が低いほど、固定資産を過剰な借入金で購入していないことがわかり、安全性が高いと分析することが可能です。

固定比率が100%以下の場合、企業が長期的に保有している固定資産が、借入金などの他人資本に依存せずに購入されていることがわかります。
つまり、自己資本をもとに資金調達されていることとなり、財務基盤が健全と評価できます。

負債比率

負債比率は、流動負債と固定負債を合わせた負債と自己資本を比較し、自己資本で負債をどれくらいカバーできるかを分析する指標です。
以下の式で求めることができます。

負債比率(%) = (流動負債 + 固定負債)÷ 自己資本 × 100

負債比率の数値が低いほど、財務的に安定していると評価できます。

総資本自己資本比率

総資本自己資本比率は、総資本に対する自己資本の割合を示す指標です。
以下が計算式です。

総資本自己資本比率(%) = 自己資本 ÷ 総資本 × 100

自己資本は負債と異なり、返済義務がありません。
そのため、総資本自己資本比率が高いほど、財務状態が安定していると分析できます。

自己資本比率とは?水準や管理方法をご紹介します!

経営分析のポイント

経営分析をするうえでは、収益力分析や安全分析をするための指標を用いますが、そのためにはベースとなる数値が正確でなくてはなりません。
経営分析のポイントとして、業界・企業に合った指標を選定すること、正しい数値の財務諸表を用意することが大切になります。

また、日々の取引データや数値を正確に記録し、分析を速やかに行うためには、ツールやシステムの導入や活用もポイントです。
以下で詳しく経営分析のポイントについて確認しておきましょう。

業界・企業に合った指標を選定する

経営分析の指標はさまざまな種類があります。
業界・企業に合った指標を選定することが大切であり、建築業においては収益力分析や安全性分析を中心に、完成工事高営業利益率など建築業特有の指標などを選定することがポイントです。

正しい数値の財務諸表を用意

いかに指標を計算しても、もとになるデータが間違っていては意味がありません。
日々の取引をしっかりと記帳するとともに、決算をする際は、会計基準と手順を遵守して正確に行い、正しい数値の財務諸表を用意しなくてはなりません。

ツール・システムの活用

膨大な伝票を手入力で処理することやエクセルなどの表計算ソフトで計算していくだけでは、正確性や精度が担保できません。
入力漏れや転記ミス、計算ミスを防ぐためにも、経理ソフトや財務計算ソフト、決算ソフトなどのツールやシステムを活用することもポイントになります。

建築業者向けのツールやシステムも豊富に販売、提供されているので、導入や活用を検討しましょう。

建築・リフォーム業向け管理システム『アイピア』

建築業向け(リフォーム・工務店)管理システム アイピア

アイピアは建築業に特化した一元管理システムであり、顧客情報、見積情報、原価情報、発注情報など工事に関する情報を一括で管理できるため、情報集約の手間が削減されます。
さらに、アイピアはクラウドシステム。外出先からでも作成・変更・確認ができます。

まとめ

経営分析とは、経営状態を把握することです。
経営分析を行うメリットは、経営状態の客観的な把握ができること、説得力のある戦略が練れることが挙げられます。

建築業の経営分析では、大きく収益力分析と安全性分析を行うのがおすすめです。
収益力分析の指標には、総資本経常利益率、完成工事高営業利益率、完成工事高経常利益率、従業員一人あたりの付加価値高、総資本回転率、自己資本回転率があります。
安全性分析の指標としては、当座比率、流動比率、固定比率、負債比率、総資本自己資本比率があります。

経営分析のポイントとして、業界・企業に合った指標を選定すること、正しい数値の財務諸表を用意すること、ツール・システムを活用することもおすすめです。

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