インボイス制度をきっかけに、課税事業者になるかどうか悩んでいる企業も多いのではにでしょうか。
課税事業者になる際に提出書類に、消費税課税事業者選択届出書があります。
こちらの記事では、消費税課税事業者選択届出書の書き方や提出方法・期限をはじめ、インボイス制度を機に新しく課税事業者になった場合のメリットやデメリットについて解説していきます。
目次
消費税課税事業者選択届出書とは
これまで免税事業者だったものの、消費税を支払うため、課税事業者になるために提出する書類を消費税課税事業者選択届出書と言います。
本来は、免税事業者のため支払いは必要ありません。
そこをあえてさまざまな事情から課税事業者となりたいと思った時に提出する書類を、消費税課税事業者選択届出書と言います。
対象者
提出を行う対象者は、今課税事業者となっている事業者以外すべてです。
年間の課税売上高が1,000万円以下の場合は、免税事業者となり消費税課税事業者選択届出書を提出する対象者となります。
逆に資本金が1,000万円以上ある場合や前々事業年度の課税売上高が1,000万円を超える場合などはすでに課税事業者です。
そのため、対象者とはなりません。
免税事業者と課税事業者の違い
免税事業者の場合、消費税は免除されているため支払う必要がありません。
自社のサービスや商品を販売してお客様から消費税をもらっていたとしても、免除されているため納付しなくても問題ありません。
免税事業者になるためには、課税売上高が1,000万円以下であればOKです。
基準は、前々年の課税売上高で決まってきます。
資本金が1,000万円以上ない法人以外は、最初会社を始めたばかりの時には課税売上高がないため免税事業者となります。
課税事業者になると、課税仕入れにかかった消費税を国に納付し、税務署にも申告が必要です。
課税売上高が1,000万円を超えてしまうと、課税事業者に当てはまります。
免税事業者が課税事業者になる場合は、消費税課税事業者選択届出書を提出しますが、課税事業者の場合は消費税課税事業者届出書を出さなければなりません。
課税事業者となる基準
課税事業者となるかどうかは、法人、個人事業主どちらの場合も前々年の課税売上高を見られます。
法人の場合は、前々年の事業年度が見られ、個人事業主の場合は前々年の1月1日から12月31日までを基準としています。
特定の期間の場合は、法人の場合前年の事業年度開始の日以後6ヶ月間、個人事業主の場合は前年の1月1日から6月30日までです。
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消費税課税事業者選択届出書の記載項目
消費税課税事業者選択届出書を提出する際の記載事項はいくつかあります。
ここからは、どんな項目があるのか解説していきます。
日付・税務署名
記入する日付を年月日で書き、税務署名を記載します。
ほかにも、納税地の住所や電話番号なども忘れずに書きます。
申請者情報
申請者の住所もしくは居所、電話番号、名称や屋号、個人番号か法人番号、氏名、法人の時には代表者の住所も必要です。
間違いないように記載していきます。
適用開始課税期間
適用開始課税期間の欄には、課税期間の初日となる日と最後の日を書きます。
法人の場合は事業年度にあり、新しくできたばかりの法人は初日に設立日を記入し、最後の日は事業年度の末日を記載しましょう。
個人事業主の場合は、1月1日から12月31日です。
もしその年の途中の月に開業や廃業しても、課税期間は変わりません。
上記期間の基準期間
上記期間の基準期間の欄には、法人の場合、前々事業年度の初日と最後の日を書き、個人事業主の場合は前々年の1月1日から12月31日までを記載します。
左記機関の総売上高・課税売上高
基準期間に国内での資産譲渡等に対しての税抜額の合計額と課税資産の譲渡等に足しての税抜額の合計を書きます。
まだ基準期間が1年に達していない法人の場合は計算の仕方が変わり、すべてを合計してその期間の月数で割って12倍した金額を記載します。
事業内容等
生年月日又は設立年月日と書かれている欄には、個人事業者の場合は生年月日を記載します。
法人の場合は、会社を設立した年月日を書きましょう。
参考事項
特に何もなければ無理に記載しなくても良い事項ですが、ほかにも伝えておきたい参考となる事項があれば記入します。
税理士署名
お世話になっている税理士にも署名をしてもらいます。
消費税課税事業者選択届出書の提出方法と期限
ここからは、消費税課税事業者選択届出書の提出方法と期限について解説していきます。
万が一やむを得ない事情で遅れてしまった場合についてもあわせてご紹介していきます。
提出方法
消費税課税事業者選択届出書は、いくつかの方法で提出ができます。
納税地を所轄する税務署長へ、税務署まで直接行って持ち込みも可能ですし、郵送でも対応してくれます。
仕事の関係上土日しか行けない場合でも、税務署は休みですが時間外収容箱があるため問題ありません。
こちらに投函して提出すればOKです。
提出期限
消費税課税事業者選択届出書の提出期限は、課税期間の初日となる前の日までに出さなければなりません。
提出を行った日の翌課税期間から届出書の効力が発揮されます。
新しく開業した場合は、開業を行った課税期間の末実までに届出書を出せば問題ありません。
突然の震災などでやむを得ない事情ができてしまい、期限に間に合わないケースもあるかもしれません。
その場合は所轄税務署長の承認を受けられれば、期限通り提出したとみなしてもらえます。
どうしようもない時に遅れた場合は考慮がありますが、震災や災害などに限られます。
どうしても間に合わなかった場合は、消費税課税期間特例選択・変更届出書を提出もできます。
しかし、課税期間の選択肢が1ヶ月か3ヶ月と短くなり、処理を行う負担が増えるためデメリットとなるでしょう。
インボイス制度を機に課税事業者になる場合
免税事業者の中には、本当はそのままでいたいけれども、インボイス制度が始まったことで仕方なく課税事業者になろうと検討している方も多いのではないでしょうか。
仕入税額控除を受けるためには、適格請求書の発行や保存が必須となり、行えるのは課税事業者のみです。
課税事業者にならないと適格請求書の発行ができず、これまでと同じように取引先とやりとりができなくなってしまうかもしれません。
従来通りであれば、免税事業者が適格請求書発行業者になるためには、消費税課税事業者選択届出書が必要でした。
しかし、今回インボイス制度が始まったことで、2023年10月1日から2029年9月30日までの間であれば適格請求書発行事業者の登録申請書のみで受け付けてもらえます。
手続きは通常よりも簡素化されています。
課税事業者のメリット・デメリット
今まで免税事業者で良かったのに、課税事業者にならないと損する場面も増えると感じ、課税事業者を検討している免税事業者も多いでしょう。
課税事業者になった場合は、メリットとデメリット両方あります。
ここからは、課税事業者になるメリットとデメリットについて解説していきます。
課税事業者になるメリット
免税事業者から課税事業者に変更すると、いくつかメリットがあります。
適格請求書発行事業者になることができる
2023年10月から本格的にインボイス制度が始まりましたが、免税事業者のままでは適格請求書発行事業者になれません。
しかし課税事業者になれば、適格請求発行事業者になれます。
これまで取引してきた課税事業者の中には、免税事業者とはあまり今後やりとりをしないようにしようと考えている企業もいます。
課税事業者になることで、今後も安心して取引できると思ってもらえるでしょう。
今後の売上などにも響いてきますので、課税事業者になっておいて損はありません。
消費税還付を受けられる
課税事業者になっても、支払った消費税よりも受け取った消費税が少ない場合、差額も還付されます。
必要以上に消費税を支払わなければならないわけではないため、不安に感じることもありません。
中には高額な設備投資を行うなど、出ていくお金が多い時、支払う消費税が増える可能性も高くなります。
この場合も、課税事業者の場合還付があるので助かるでしょう。
デメリット
課税事業者になることでメリットも多いのですが、デメリットも残念ながらあります。
後からしまったとならないためにも、事前にデメリットを知っておきましょう。
納税義務が生じる
今までは免除されてきた消費税の支払いがあるため、支出が多くなります。
さらに、単純にお金を支払えば良いだけでなく、消費税及び地方消費税の申告書や課税標準額等の内訳書など書類作成も別途必要になります。
タイミングによっては消費税の計算が困難
課税期間を3ヶ月や1ヶ月などに区切ってしか行えない場合、消費税の計算や申告書類の提出の数が増えます。
1ヶ月で区切る場合は、年に12回もしなければならないため大変です。
特に事業年度の途中で課税事業者にならなければならない場合、タイミングで3ヶ月や1ヶ月の区切りしか選べないケースも出てきますので要注意です。
普段よりも計算が複雑になり、作業にも時間がかかります。
課税事業者になる際の注意点
ここからは、課税事業者になる時に注意したい点について解説します。
原則として2年間は免税事業者に戻ることができない
消費税を納税するのはやっぱり負担だと感じて免税事業者に戻りたいと思っても、原則2年間は戻れません。
課税期間中に調整対象固定資産を取得した場合は3年
課税事業者選択届出書を出し、調整対象固定資産の課税仕入をするなどやり方によっては免税に戻れない期間が3年に延びてしまいます。
簡単には、元に戻れなくなってしまいます。
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まとめ
免税事業者から課税事業者になる場合は、本来消費税課税事業者選択届出書が必要です。
しかし、インボイス制度を機に課税事業者になる場合は必要なく、手続きも簡素化されます。
課税事業者になれば納税義務が生じるなどデメリットもありますが、適格請求書発行事業者になれるため、すでに課税事業者の企業ともスムーズな取引ができるでしょう。
インボイス制度が始まったことによりメリットも大きいです。