令和3年度の電子帳簿保存法改正では、すべての事業者や企業は電子取引データのデータ保存に対応しなければならないと決まりました。
その一方で、保存にあたって満たすべき要件が緩和され、対応へのハードルが下がっています。
こちらの記事では、電子帳簿保存法の改正ポイントや、Googleドライブを利用した電子帳簿保存法への対応方法について詳しく解説していきます。
目次
Google Driveとは
インターネットの普及により、電子文書をパソコンで作成して紙面に送付や保存することが主流になりました。
しかし、電子でやりとりしたものを紙に印刷し、ファイリングするのは時間も手間もがかかります。
電子帳簿保存法では、これらの手間等を削減するため、国税関係の帳簿や書類を紙だけでなく電子データで保存できる方法を定めています。
しかし、データでも良いとなると、中には不正を働く人がいないわけではありません。
そのため、不正行為が行われないように、保存する際の条件があります。
正しい電子データを保存するための要件は、法律上細かく決まっています。
税制で優遇を受けられる青色申告においても電子帳簿が利用できますが、その際は優良な帳簿であることが求められます。
万が一、要件を満たしていない管理をしてしまうと、青色申告が取り消される可能性もあります。
青色申告においてスムーズに承認されるように、電子データを正しく保管する必要があります。
電子帳簿保存法における3つの区分
電子帳簿保存の方法は、3つの区分でそれぞれ定められています。
内容を見ていきましょう。
電子帳簿保存
電子帳簿保存法は、国税関係帳簿や書類の中でも自ら電子計算機で作成している場合に電子データのまま保存できる方法を言います。
必ずどの企業でも電子帳簿保存しなければならないわけでなく、任意の制度になっています。
企業ごとに実施するかどうかを判断することが可能です。
スキャナ保存
スキャナ保存は、取引先から紙で受領した書類や自社で発行した書類をスキャンし、電子データとして保存する方法です。
スキャナに限らず、普段使用しているスマートフォンで読み取ったものでも問題ありません。
ただし、解像度が200dpiあり、カラー画像の読み込みができるかもポイントです。
スキャナ保存も必ずしなければならないと決まっているわけではなく、あくまで任意です。
便利かどうか見極めて利用を決めると良いでしょう。
電子取引
電子帳簿保存法では、取引先と請求書等を電子データとしてやりとり(電子取引)した時、紙面に出力せずデータのまま保存することが義務になっています。
代表的な電子取引の方法としては、メールに添付する方法があります。
ほかにも、スマートフォンでバーコード決済を行う場合も、電子取引の一つとなります。
令和3年度改正電帳法のポイント
令和3年度改正の電子帳簿保存法の中では、多くの企業が電子保存を実施できるように条件が緩和された部分も多いです。
ただし、電子取引においては、電子データを紙に印刷して書類で保存する方法が廃止されたため、厳格化しています。
これは任意ではなく、どの企業も2024年1月1日以降からは必ず対応していかなければなりません。
電子帳簿保存法における各区分で、制度がどのように変更したかについて解説していきます。
スキャナ保存の必須条件緩和
スキャナ保存では、令和3年度改正の前は、事前に税務署長の承認がないと実施できませんでした。
しかし、承認に時間がかかり、事務負担があるため、改正によって承認は廃止されました。
領収書のスキャナ保存においては、これまで受領者の自署、もしくは経理担当者がスキャンする場合は2か月以内のタイムスタンプが必要でした。
しかし、改正によって、受領者の自署は不要になりました。
また、経理担当者がスキャナ保存する場合においても訂正や削除履歴が残るクラウド上に保存する場合は、タイムスタンプが不要になりました。
ただし、改ざん等の不正があった場合はペナルティがあるため、要件は緩和されましたが適切に保存しましょう。
電子取引におけるデータの書面保存廃止
メール等で請求書等のやりとりを行い、請求書をプリントアウトして保存していた企業も多いでしょう。
しかし、令和3年度の改正電子帳簿保存法では、電子取引を紙面として保存することが廃止になりました。
そのため、今後はプリントアウトした書面を保存しても、帳票を保存したことにはなりません。
他方で、電子取引の電子保存における要件が一部緩和されました。
改正前は、電子データを検索する際に、下記の要件すべてを満たす必要がありました。
- 日付や金額、帳簿そのものにかかる主要記録項目をで検索できる
- 日付と金額を範囲を指定して検索できる
- 2つ以上の任意の記録項目を組み合わせて検索できる
しかし、改正によって、①の記録項目は「日付、金額、取引先に限定されました。
また、②・③については、税務検索の際に、ダウンロードの求めに応じる場合は不要となりました。
電子帳簿保存法への対応方法
電子データは、改ざんされるなどの危険性があります。
そのため決められた条件を満たさなければ、正しく電子データを保存したとみなされません。
ここからは、どのような保存条件があるのか詳しく紹介していきます。
真実性の確保
データの真実性を確保することが必要です。 そのためには、管理や保存ルールをまとめた事務処理規程を作成することがひとつの方法です。
事務処理規程があり、正しく運用できれば、訂正削除機能やタイムスタンプ付与のシステムを使わなくても問題ありません。
事務処理規程の作成にあたっては、国税庁で公表しているフォーマットを利用すれば作成しやすいでしょう。
可視性の確保
可視性を確保するためには、いくつかの条件があります。
まず日付、金額、取引先の項目すべてで検索ができなければいけません。
ほかにも、日付と金額は範囲を指定して検索ができ、さらに2つ以上の任意の記録項目を合わせて検索条件を設定できなければなりません。
記録項目の組み合わせを行う時は、AND検索ができればOKです。
本来はすべての企業が対象でしたが、税制改正で売上高が5,000万円以下の場合と出力書面の提示や提出ができれば検索要件への対応は不要になりました。
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Googleドライブを利用した電子帳簿保存法への対応方法
ここからは、Googleドライブを利用した際の電子帳簿保存法への対応方法について紹介していきます。
valut機能が使えるプランに登録
まず登録する際は、valut機能が使用できるものを選びましょう。
valut機能とは、データの保持や検索、書き出しの機能を指します。
Googleドライブでは、valut機能によってデータの訂正や削除の履歴が記録でき、電子帳簿保存法の保存要件を満たしています。
利用には、Google workspace business plusプランか、Enterprise Standardプラン以上が必要です。
共有ドライブ内に「電子帳簿保存フォルダ」作成
パソコンの画面で、共有ドライブを作成しましょう。
作成したフォルダをクリックし、メンバー管理で利用するメンバーを選択します。
年月ごとにフォルダを作成
さらに、パソコンの画面上で検索性をアップさせるため、年や月ごとのフォルダ構成にします。
valutを設定
従業員が送ったメールの管理や保存期間の設定をするために、valut機能を設定します。
記録保持のルールも作り、対象はGoogleドライブにして事前に設定した管理者権限アカウントを選びましょう。
ファイル名の設定方法にルールを定める
検索する際のルールを最初に定めましょう。
そして、検索対象のファイル名には、日付や取引先、金額等を情報が含まれるように設定しましょう。
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まとめ
Googleドライブ場合は、結論としては電子帳簿保存法に対応しているため使えます。
しかし、Google workspace business plusプラン以上を利用する場合は、コストがかかることも覚えておきましょう。
令和3年度の電子帳簿保存法は改正によって、帳票保存にかかる要件が緩和され対応への障壁が低くなりました。
他方で、電子取引のデータ保存はすべての企業において必須となっています。
自社に合う保存方法を検討し、管理システムなどを上手に活用していきましょう。