建設業界の仕事において、鋼構造物に関わる工事は非常に多く種類も多岐にわたります。
まずは鋼構造物について詳しく見ていきましょう。
土木やとび工事との違いや建設業許可取得についての取り決めなども解説します。
鋼構造物とは
鋼構造物は、言うなれば主要部分が鋼材で造られている構造物の総称を呼びます。
具体的には、鉄骨造りの建造物や橋梁(きょうりょう)がその類です。
そのほかに、ガスタンクや鋼製水門なども含まれます。
鋼構造物工事の種類
鋼材でできた鋼構造物の工事はいろいろな種類があります。
インフラ整備にも欠かせない重要な工事です。
以下にそれぞれの工事の特徴を見ていきましょう。
鉄骨工事
鍛冶工や鉄骨工による、鉄骨に関する基本的な作業全般です。
鉄骨の製作や加工をはじめ組み立てを行います。
多くの場合、製作から組み立てまでをまとめて一つの工事とします。
組み立て作業には溶接といった方法が採られることが多いです。
鉄塔工事
鉄骨で構成されている鉄塔を設置する工事になります。
材料が鉄骨製以外の鉄塔は除外されます。
橋梁工事
交通路の上部を横切らせる構造物である橋梁を設置する工事全般です。
海や川、道路などを渡せるように設置します。
貯蔵用タンク設置工事
石油やガスなどを貯蔵しているタンクを設置するための工事ですが、危険物を貯蔵するので強度が必要です。
門扉設置工事
河川や運河には、水路間を船が上下させるための装置である閘門があります。
こうした閘門や水門の設置工事です。
湖や用水路、貯水池に設置する場合もあります。
屋外広告工事
屋外にはさまざまな広告物があります。
看板や広告塔などを設置していく工事の総称です。
とび・土木・コンクリート工事との違い
上記に挙げた通り重要で種類も多い鋼構造物工事ですが、混同してしまいがちな工事にとび・土木・コンクリートの鉄骨組み立て工事が挙げられます。
土木やとび・コンクリートの鋼構造物工事は加工済みの鉄骨を現場にて組み立てる工事です。
それに対し、鋼構造物工事の鉄骨組み立て工事は、鉄骨自体の制作・加工を行います。
屋外広告工事も同様に、土木やとび工事の場合は現場で広告塔の組み立てを行うのみです。
反して、鋼構造物工事の屋外広告工事は屋外広告物の制作も加工も組み立てもすべてを行い設置する作業となります。
鋼構工事に関する記事はこちら
鋼構造物工事業の建設業許可を取得するには?
鋼構造物工事業を営む場合には、建設業許可が必要です。
取得するためにはいくつかの要件をクリアしなければなりません。
建設業許可を取得するにあたっての条件について詳細を見ていきます。
経営業務管理責任者を配置する
建設業に関して5年以上の管理責任者経験がある、もしくは準ずる地位にて5年以上経営者補佐をした経験者を「経営業務管理責任者」と呼びます。
鋼構造物工事業を営むには、この経営業務管理責任者を配置しなければいけません。
専任技術者を配置する
営業所単位での専任技術者を配属しなければならず、一般建設業と特定建設業で要件が違ってきます。
以下、具体的にそれぞれの要件の特徴について記載します。
一般建設業の専任技術者の要件
以下の3項目のうちのどれか一つをクリアしていることが条件です。
- 鋼構造物工事業の指定学科を修了しているか一定年数の実務経験を有していること
高校の場合:卒業後5年以上、大学は卒業後3年以上の実務経験があること。
専門学校の場合:卒業後5年以上実務の経験を有する者、卒業後3年以上実務の経験があり専門士であること。
専攻科目は「土木工学、建築学または機械工学に関する学科」になります。 - 2級土木施工管理技士(土木)、2級建築施工管理技士(躯体)、「登録橋梁基幹技能者」などの国家試験を取得していること
- 鋼構造物工事に10年以上携わって働いた経験者
履修学科や最終学歴などは関係ありません。
特定建設業の専任技術者の要件
指定された国家資格者であるか、大臣特別認定者かのどちらかであることが要件となります。
大臣特別認定者とは、国土交通大臣が「他の2要件に該当する者と同等以上の能力を有する」と認めた認定です。
実務経験で要件を満たす場合
指定学科修了および一定年数の実務経験もしくは国家資格・検定、10年以上の実務経験のどれか一つをクリアしておく必要があります。
10年以上の実部経験者に関しては、実務経験を証明するものがなければなりません。
方法としては、当時働いていた企業に照明してもらう形を取ります。
実務経験期間中の契約書か注文書の原本が必要書類となります。
契約書が見当たらないのであれば、その工事費用の振込照合をするための通帳や請求書を用意すれば良いです。
実務経験中に常勤していたことを証明するために、事業所名や資格取得年月日が掲載されている健康保険被保険者証もしくは事業名記載の「厚生年金被保険者記録照会回答票」が必要です。
財務要件を満たす
事業継続に必要な財務基盤を満たしていることも要件です。
施工するにあたって、人件費や材料費などが十分になければ工事ができません。
それゆえに、財産要件を満たしていることが重要です。
一般建設業では下記のどちらかをクリアしていることが条件です。
- 自己資本500万円以上
- 500万円以上の資金調達能力を有する
特定建設業に関してはもっと要件が厳しくなり、下記の4つの要件すべてをクリアしていなければいけません。
- 欠損の額が資本金の20%以下
- 流動比率75%以上
- 資本金2,000万円以上
- 自己資本4,000万円以上
欠格要件に該当しない
建設業界が定める欠格要件に当てはまらないことが重要です。
下記の場合は書類上では取り消しとなってしまいます。
- 許可申請書や添付書類の重要事項において、虚偽の事実を記載した場合
- 重要な事実の記載が欠けていた場合
許可申請者の欠格要件は13項目あるので、確認しなければなりません。
- 破産者で復権を得ない者
- 営業の停止・禁止を命ぜられ、その期間が終了していない者
誠実性を証明する
請負契約において不正または不誠実な行為をしないことを証明する必要があります。
法人の場合は、当該法人や役員などに対し、個人の場合は本人と政令で定める使用人に、誠実性が求められます。
雇用保険と社会保険に加入する
従業員対象に、雇用保険および社会保険に加入することが必須条件です。
施工管理技士に関する記事はこちら
鋼構造物工事業の建設業許可の申請に必要な手続き
新しく鋼構造物工事業を営むにあたっては、許可申請の流れを把握しなければなりません。
提出する書類なども多いですし要件をクリアしているか確認に要する時間もいります。
申請の流れや要する時間を知っておくことが大切と言えるでしょう。
申請に係る手数料
許可が出るまでには1ヶ月ほどかかりますが、さらに申請には登録免許税の国税がかかります。
新規での許可申請に関して見てみると、国土交通大臣許可で5万円、知事許可は9万円です。
既にほかの建設業を経営しており、新たに鋼構造物工事業を追加する時には5万円となっています。
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まとめ
鋼構造物工事業は大規模な工事を請け負うことができますし、公共行事の入札も可能になるなどメリットも多いです。
しっかりと鋼構造物工事について把握して、スムーズな営業ができれば何よりです。