製図に欠かせないCAD(キャド)ですが、高額なソフトウェアであるため、導入に躊躇するという声をよく耳にします。
実際に現場で活用できるか検討期間を求める企業も多く、近年では非商用であれば無料で利用できるソフトウェアなども増えました。
ここではCADの基礎知識やおすすめのソフトウェア6選を紹介します。
目次
CADとは
CADとは、PCで設計製図ができるソフトウェアです。
建設業界はもちろんのこと、あらゆるものづくり業界で必須となるものですが、一昔前は非常に高額なソフトウェアしかありませんでした。
近年は無料で使える優秀なCADソフトウェアが続々と増えており、コストをかけずに取り入れる企業や個人が急増しています。
CADはComputer Aided Designの略ですが、『コンピュータ支援設計』と表現されることが多いでしょう。
設計者の作業をコンピュータがサポートしてくれるツールと言えます。
CADがあればこれまで現場で手書きするしかなかった図面も、ノートPC上で手軽にデジタル化することが可能となり、業務が大幅に効率化するでしょう。
CADには種類があり、表現方法により『2DCAD』『3DCAD』に分けられます。
また、専用と汎用にも分けることが可能です。
2DCADとは
ツーディーキャドと読みます。
その名の通り、2D(二次元)データで製図ができるソフトウェアで、2次元で立体を表現します。
そもそも紙に手書きで製図するという方法は、2次元です。
その方法をそのままPCで行うため、直感的に操作を理解することができます。
作図できるのは断面図で、全体を把握するには想像力を要します。
3DCADとは
スリーディーキャドと読みます。
3D(三次元)データで製図ができるソフトウェアで、これまで二次元で行ってきた製図を拡張します。
PC上に仮想空間があり、そこで立体が構築できるのが特徴で、具体的なイメージを把握することや複数の図面を自動的に作成することが可能です。
専用CADとは
専用CADは、特定分野に特化した機能が付属しているCADです。
ベースのCADにオプションで機能追加できるものもあり、さまざまな種類が存在します。
たとえば、機械設計CADや電気設計CAD、建築CADなどが専用CADと呼ばれるものです。
汎用CADとは
汎用CADはどの分野にも使えるCADであり、極めてベーシックな設計ソフトウェアです。
基本的機能がまんべんなくカバーされており、図面を編集したり印刷したりすることができます。
この汎用CADに、オプションで専用機能をプラスする仕様のソフトウェアもあります。
部材などが専門特化している場合は別ですが、基本的な設計であれば汎用CADでも十分に機能するでしょう。
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CADソフトの選び方
どのようなCADを選ぶべきか迷う場合は、さまざまな角度からポイントをまとめるのがおすすめです。
せっかく導入しても、ポイントがズレていると現場で活用されなくなり、結局無用の長物となってしまいます。
もちろんソフトウェアごとに使い勝手が異なりますが、まずはCADを使用する環境から優先項目を洗い出しましょう。
ここでは選択のポイントとなるものをピックアップして紹介します。
使用目的で選ぶ
まずはCADを何のために使いたいかを明確にします。
製図設計のためというのはもちろんですが、主にどのような製図に使いたいかによって選択が変わってきます。
たとえば、ほとんどが平面の建設図面の作成の場合や企画書やパンフレットなどの印刷物の作成が目的であれば、2DCADが候補に挙がるでしょう。
図面を立体視する必要があるかないかで、まずは絞ることができます。
もし立体モデリングなどが必要であれば、3DCADが候補となるでしょう。
3Dプリンタを利用する必要があったり、構造計算や体積・表面積・質量などの計測が必要であったりする場合は、3DCADがおすすめです。
使用者のスキルに合わせたCADを選ぶ
CADを実際に使用する人が、機能を十分に扱えることが重要です。
高性能なCADがあれば何でもできるというわけではなく、使用者がそれを十分に活かせなければ導入の意義がありません。
2DCADは比較的操作が簡単ですが、専用CADを扱うには専門性が必要となります。
CAD資格を持つオペレータがいるのであれば安心ですが、まずはスキルに合わせた選択が必要です。
また、インターフェイスが英語になっていると難易度が高まるため、日本語マニュアル付きが良いでしょう。
OSで選ぶ
現在使用しているPCのOSを確認し、問題なく稼働できるソフトウェアを選ぶことが重要です。
特に無料ソフトウェアはWindows対応のものが多く、Macには対応していない場合があるので注意しましょう。
また、OSのバージョンによって対応されていない場合もあります。
ものづくり業界はMacの普及率が高いため、十分にチェックしてください。
価格で選ぶ
CADは基本的に高額なソフトウェアであり、実際に使えるかどうかわからないままコストをかけることを躊躇する声も多くあがっていました。
現在ではそうした声に応え、無償トライアルや非商用利用であれば無料とする製品も多く登場しています。
一昔前のフリーソフトウェアは機能がいまひとつだったことは事実ですが、現在は無償であっても優秀なソフトウェアが増えています。
こうした無償ソフトウェアを利用し、確実に活用できる算段がついてから本格導入することがおすすめです。
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無料のCADソフト6選
それでは無料で優秀な使えるCADソフトウェアを6つ紹介します。
2DCADと3DCADに分けていますので、目的に合うものをご検討ください。
3DCADソフト
おすすめの3DCADソフトはこちらです。
『SketchUp Free』
特徴 | 建築やインテリア業界向けプリセットデータ多数、直感的に利用可能 |
---|---|
機能 |
サーフェス・自由曲面のモデリング プラグイン アニメーション | 対応OS | Windows、Mac | 導入金額 | 非商用利用のみ無料 |
『FreeCAD』
特徴 | 製品設計や機械工学、建築など幅広い用途に合致 |
---|---|
機能 |
3Dモデリング メッシュデザイン 製図 有限要素法解析 レイトレーシング ロボティクス | 対応OS | Windows、Mac、Linux | 導入金額 | 個人利用・商用利用ともに無料 |
『OnShape』
特徴 | オンラインで設計・編集が可能なクラウド型 |
---|---|
機能 |
ソリッド・サーフェス・自由曲面のモデリング アセンブリ(60パーツまで) | 対応OS | Windows、Mac | 導入金額 | 無償期間後有料契約しなければ保存データステータスが一般公開になるため注意 |
2DCADソフト
おすすめの2DCADソフトはこちらです。
『AutoCAD』
特徴 | トップシェアされており汎用性が高い |
---|---|
機能 |
CAD 3D設計 2D図面 レンダリング アニメーション | 対応OS | Windows、Mac | 導入金額 | 30日間無料、期間終了後有料に自動更新もしくは契約終了 |
『Jw_cad』
特徴 | 建築士が開発に関わった建築汎用CAD |
---|---|
機能 |
2D図面作成 2.5D 日影図作成 天空図作成 建具・設備などの簡単作図 | 対応OS | Windows(ただし有志がMac用のJW-CAD for Macを配布) | 導入金額 | 商用利用を含め無料で使用可能 |
『BricsCAD』
特徴 | 3DCAD機能が備わったAutoCADの互換CAD |
---|---|
機能 |
AutoCADの機能のほか 機械設計などの本格3DCAD機能 | 対応OS | Windows、Mac、Linux | 導入金額 | 30日間無料 |
3DCADソフトのメリット・デメリット
3DCADソフトのメリットとデメリットを紹介します。
メリット
3DCAD導入のメリットは、製図段階で完成形をイメージしやすいことです。
立体視できるため、さまざまな方向からさまざまな検証をすることができます。
仮想空間で製品の動作検証ができることは、実際に組んでから後戻りするリスクを低減することが期待できるでしょう。
デメリット
デメリットは専門性が高いためソフトウェアによっては操作が難しいことや本格導入となると、まとまったコストがかかることです。
快適に稼働させるためにはPCのスペックも要求されるため、ハードウェアや周辺機器の整備コストなども考慮しなければならないでしょう。
2DCADソフトのメリット・デメリット
2DCADソフトのメリットとデメリットを紹介します。
メリット
2DCAD利用のメリットは、これまで紙に手書きしていた設計製図作業と同じような感覚で操作できることです。
使用者が直感的に使えることは大きな利点で、導入後、予定通り作業環境が構築できる期待があります。
作業効率が上がり、ヒューマンエラーも抑制できるうえに導入コストが比較的抑えられている点も理想的でしょう。
そのため、手軽に導入する企業も少なくありません。
デメリット
ただ、やはり機能に限界があるのは事実であり、どうしても立体的な視点への変換は制限されます。
さまざま視点から表現すべき場合は、都度複数の視点で作図する必要が生じ、作業の効率化やデータ管理の簡略化につながらない点がデメリットです。
CADの資格取得を目指すには?
CADオペレータとして働く際に、必須となる資格はありません。
ただもちろん、スキルアップやキャリアアップのためには取得したほうが良い資格があります。
業務知識が身につく資格にはどのようなものがあるでしょうか。
CADで取得できる資格
CADオペレータとして取得しておくと良い資格は以下の通りです。
CAD利用技術者試験
CAD利用技術者試験の特徴
- もっともメジャーな資格であり、建築系・機械系を網羅する総合資格です。
- 『2次元CAD利用技術者試験』と『3次元CAD利用技術者試験』とがあります。
- 基礎から1級まであり、基礎と2級は誰でも受験できます。
建築CAD検定
建築CAD検定の特徴
- 建築系に特化したCAD資格です。
- 3級から1級まであり、准1級・2級・3級は誰でも受験可能です。
CAD実務キャリア認定制度
CAD実務キャリア認定制度の特徴
- CADの総合的な資格であり、『CADアドミニストレーター認定試験』『3次元CADアドミニストレーター認定試験』『3次元CADトレーサー認定試験』があります。
資格の勉強方法
CAD資格の勉強は、独学、専門学校、通信スクールなどがあります。
実際に業務で携わりながら、書籍で勉強する人も少なくありません。
いずれにしても、CADに触れることなく勉強だけしていても合格は難しいでしょう。
実務を進めながら参考書などで過去問題を多く解き、知識と技術を同時に身につける勉強法がおすすめです。
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まとめ
CADソフトウェアはまとまったコストがかかるため、なかなか導入に踏み切れない企業も少なくないでしょう。
近年では無償期間を提供している場合や非商用であれば完全無料とするソフトウェア会社も増えました。
少なくとも、計画通り稼働するか確認するためには、コストをかける前に無料でトライアルすることをおすすめします。
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