日本では消費税が採用されていますが、一部の取引に関しては消費税を払う必要はありません。
もっとも、課税が回避される際の名称はさまざまです。
非課税、不課税、免税、どれも同じような言葉ですが、その内実は違います。
今回はこれらの言葉の違いをそれぞれ解説していきましょう。
消費税の仕組み
まずは日本において消費税がどのように成り立っているのかを簡単に見ていきましょう。
納税の流れ
納税の前にそもそも事業者は納税額を計算しなくてはいけません。
消費税は取引の際に消費者から受け取った消費税分のお金をそのまま納める、というものではないです。
その分から、仕入れなどでかかった額を差し引くことで納税額が決まります。
納税額が計算できたら確定申告書にその旨を記載し、税務署に税金を納めに行きましょう。
ちなみに、今回は詳しく解説しませんが、消費税は一定の売り上げを超える場合のみ支払わなければいけない税金です。
一定以上の売上がなければ消費税を支払う必要はありません。
課税の4つの要件
消費税はすべての取引に課税されるわけではないです。
日本では4つの課税要件が設けられており、これ以外の取引は課税の対象にならないとしています。
続いて、4つの要件について詳しく解説していきます。
①国内において行われる
1つ目は国内での取引です。 消費税は国によって割合が違うので、ややこしさを避けるために海外との取引は課税要件となっていません。
②事業者が事業として行う
2つ目は事業取引です。
事業者登録をして取引を行っている会社は必ず消費税を支払わなくてはいけません。
③対価を得て行う
3つ目の要件はその取引で対価を得られているかどうかです。
一方的にお金や商品を受け取るような取引は消費税の対象とはなりません。
ただし、たとえば誰かから一方的にお金を受け取るような行為は贈与とみなされるので、別の税金の対象となるので注意しましょう。
④資産の譲渡、貸付又は役務の提供である
たとえば、誰かのために工事を行ったり、情報を提供したりすることは商品をやりとりするわけではありません。
とはいえ、その過程でなんらかのサービスが提供されている場合は役務の提供とみなされ、消費税課税の対象となります。
非課税とは
ここまでは、消費税の概略を見てきました。
これらを踏まえたうえで、消費税の対象外となる取引について考えていきましょう。
まずは「非課税」として扱われる取引についてです。
税の徴収対象として好ましくないもの
非課税扱いされるのは、消費税課税の4つの要件に当てはまるものの、それに課税するのは好ましくないとみなされる取引です。
たとえば、国内で行われる取引は商取引に限りません。
商売を目的としていないものの、やむを得ずお金をやりとりする必要があるケースはたくさんあります。
それらに消費税を課税したら、諸々のサービスに余計な負担がかかってしまいかねません。
それを防ぐために、国ではいくつかの取引を非課税対象として扱っています。
課税対象としてなじまないものの具体例
非課税対象の最たるものは収入証紙でしょう。
収入証紙は公的な手続きにおいては欠かせないものであり、これを販売することは決して利益を目的とはしていません。
公益性が高い収入証紙は消費税の対象外です。
社会的配慮がなされるべきもの
このほか、この取引に課税したら社会が成り立たなくなってしまうといったサービスも非課税とみなされます。
社会的に配慮されるべきものの具体例
一例として、手や足を失った障害者のための義手や義足は消費税の課税対象とはなっていません。
障害者は相当なハンデを負っているのですから、負担はできるだけ少なくしたほうが良いでしょう。
非課税の対象でも課税される場合がある
もっとも、一見非課税の対象のように見えても課税対象になるケースも存在します。
たとえば、学校での授業料は非課税ですが、塾の料金や家庭教師の料金などは課税対象です。
これは学校は誰もが受けるべき教育の一方で、塾や家庭教師は必ずしも誰もが受けるべきものとは限らないという線引きがなされているからです。
不課税とは
次に非課税と紛らわしい不課税について見ていきましょう。
課税の4要件を満たさないものが不課税
先程消費税の課税対象となるには4つの要件のどれかに当てはまる取引だという話をしました。
逆に言えば、これらの要件に当てはまらない場合は自動的に不課税とみなされます。
不課税対象の取引の具体例
不課税対象は4つの要件の逆を考えれば簡単に見分けられます。
たとえば、課税要件の中には事業者が事業として行う、という要件がありました。
裏を返せばこれは、事業でない取引は対象外ということです。
その最たる例は給与の支給が挙げられるでしょう。
雇用主が雇用者に労働の対価としてお金を渡すこと自体は事業ではありません。
免税とは
最後に免税について見ていきましょう。
空港などに行くと「免税店」というステッカーを見かけることがあります。
自分の店は外国人には消費税を課税しない方針を採っているということを意味しますが、これは不課税や非課税とどう違うのでしょうか。
輸出取引における免税
まず消費税は国内での消費にのみ課税されるものです。
国外での消費に関しては課税対象となりません。
そのため、たとえば日本の業者が外国の業者に商品を輸出した際に発生した取引に関しては消費税は適用されないです。
このように、輸出取引において消費税が適用されない場合は免税として扱われます。
輸出類似取引における免税
先程も見たように、消費税は商品のやり取りだけでなく、形にならないサービスにも課税されます。
では、たとえば日本の大学教授が、海外の大学におもむいて授業をした後で対価として講演料をもらった場合はどうなるのでしょうか。
これに関しては輸出類似取引とみなされ、免税の対象となります。
厳密に言えば、こういった知的サービスの提供は輸出ではありません。
しかしながら、なんらかのサービスを海外に提供するという点では輸出に似ているので、このような言葉が使われています。
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まとめ
消費税を納税する際はたくさんの要素を加味しながら納税額を決めなければいけません。
もちろん、今回ご紹介したようにこの取引は不課税になるのか、それとも非課税になるのか、といったことも確認しなくてはいけないでしょう。
課税期間内に発生した取引を一つひとつ確認しながら消費税の納税額を計算するようにしましょう。