設備工事という言葉は比較的よく耳にする言葉ですが、実際に目の前で設備工事を見ることはほとんどありませんし、どのような工事なのか内容を理解している人もあまり多くないでしょう。
一般的に工事と言われているものには実は非常に多くの種類があり、作業も細分化されています。
では、設備工事とは具体的にどのようなものがあり、どのような目的で行われるのか、そして工事を行うためにはどういった資格があると有利なのか、といったことについて詳しく説明していきます。
設備工事とは
設備工事とは工場やオフィス、住宅などの建築物において利用される各種設備を導入するための工事を意味します。
代表的な設備としては電気やガス、水道、通信などがあり、どれも仕事や生活に欠かすことができない重要な工事です。
このような設備工事は、工事の開始直後に行われることもあれば、ほとんどの工程が終了した後の仕上げの作業として行われることもあるため、設備工事は工事に携わる作業員の中でも特に現場に関わる期間が長い仕事でもあります。
設備工事の目的
設備工事を行う目的は、主に「安全性の確保」「利便性の確保」「快適性の確保」の3つです。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
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安全性の確保
設備工事を行う目的の一つは、安全性を確保することです。
特に日本は災害が多い国であり、地震や火災などが発生した時に被害を最小限に防げるかどうかは建物の利用者にとって非常に重要な問題となります。
たとえば、火災が発生した時に火災報知器が設置されていれば、利用者にいち早く火災の発生を知らせることが可能ですし、防火扉やスプリンクラーの設備があれば火災の延焼を最小限に抑えることができます。
また、災害が発生した時に自家発電設備があれば速やかな避難が可能になるでしょう。
このように安全性を確保するうえで設備工事は欠かせない工事となります。
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利便性の提供
建物を利用する人にとっては利便性も非常に重要な問題です。
オフィスや住居が高層階にあるにもかかわらずエレベーターやエスカレーターがないのはとても不便ですし、普段自動車を使って移動しているのに駐車場がなければコインパーキングを利用することや遠くの駐車場を借りなければなりません。
商業施設ではインターネット環境が整備されているのが当たり前となっているので、フリーのWi-Fiが使えるかどうかも利用者の利便性を大きく高める要因となるでしょう。
利便性を提供することも設備工事の目的の一つです。
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快適性の追求
設備工事を行う目的の3つ目は快適性の追求です。
近年は夏の暑さが非常に厳しくなっていて、空調設備がなければ快適に過ごすことが難しいでしょう。
また、部屋を借りたけれど近隣の騒音が大きいのでリラックスできないということもあるでしょう。
このような場合に、設備工事によって空調設備を設置することや防音効果の高い設備へと変更することで、不満を解消することができます。
設備工事の特徴
設備工事と呼ばれるものの中にはさまざまな種類があり、工事内容によっては特定の資格が必要になるケースもあります。
設備工事として代表的なものにはどのようなものがあるのでしょうか。
また工事を行うにあたって役に立つ資格などについても紹介します。
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設備工事の種類
設備工事として代表的なものに、次のような工事があります。
電気設備工事
電気設備工事は建物で電気を使えるようにするために必要となる工事のことです。
変電設備から送られてきた電気を建物の内部に引き込み、配線工事によって電気を分配することで建物内のどこでも安定して電気を使えるようにします。
最近増えているオール電化工事も電気設備工事の一つですし、工場の機械・ビルのエレベーター・住宅のエアコンなどを動かすための動力設備の設置、コンセントの配置なども電気設備工事に含まれます。
電気通信工事
電気通信工事は情報通信機器に関連した工事のことです。
テレビやラジオ、CATVなどを受信するためのアンテナ工事、インターホンや防犯カメラなどを利用するための配線工事、インターネット回線や電話回線の引き込み工事などが電気通信工事に該当します。
また、商業施設やオフィスビルなどにおける放送設備や携帯電話利用するために必要な基地局の工事などもこのカテゴリーに含まれます。
防災設備工事
建物の建築には建築基準法だけでなく消防法も絡んできます。
建物自体がどんなに立派なものであっても、利用者の生命や財産を守るための設備が設置されていなければなりません。
具体的には自動火災報知設備やスプリンクラーなどの消火装置、速やかな避難のための非常灯や避難はしごなどの避難設備が必要であり、防災設備工事はこのような設備を設置するために行われます。
空気調和設備工事
建物内の温度や湿度を調整し、快適な環境を維持するために必要となる工事のことです。
暖房や冷房などの空調機器の設置が代表的な例です。
また、近年はコロナウイルスの流行により建物内の換気の重要性が叫ばれるようになってきましたが、空気を循環させることや入れ替えるために必要な給排気設備の設置も空気調和設備工事に含まれます。
給排水衛生設備工事
建物の利便性や快適性を高めるためには水がとても重要です。
いつでも必要な時に、必要な分量だけ水を使えるようにするためや使った水を速やかに排水するための工事を行うのが給排水衛生設備工事となります。
具体的な工事内容としては、キッチンやトイレ、お風呂といった衛生設備の給水・給湯設備、給水管や排水管に関わる工事、排水を安全に処理するための浄化槽の設置工事などがあります。
昇降機設備工事・機械式駐車設備工事
高層ビルやタワーマンション、商業施設などたくさんの人や物が集まる場所では十分な移動手段や運搬手段を用意していないと混雑を引き起こしてしまいます。
このようなことを避けるためのエレベーターやエスカレーターといった昇降機設備に関わる工事を行うのが昇降機設備工事です。
また、狭い敷地でも大量の車両を駐車できる機械式駐車設備に関わる工事を行うのが機械式駐車設備工事となります。
設備工事に役立つ資格
建築技術の発展により、設備工事に求められる知識やスキルも高度に専門化しています。
工事内容によっては特定の資格が必要になることもありますし、資格が必須ではなくても所持していることで雇用に有利に働くことやスキルアップにつながることもあるでしょう。
設備工事に役立つ資格には次のようなものがあります。
電気工事士
電気工事士は、電気工事を行うために必要な国家資格であり、ビルや工場、住宅などにおいて工事を安全に行うことができるという証明になります。
電気工事士には第一種と第二種の2種類があり、第二種は600Vまで、第一種は500kWまでの工事に携わることが可能です。
第一種・第二種ともに試験はマークシート方式の学科試験と実技試験の2段階で実施されます。
建築設備士
建築設備全般(空調・換気、給排水衛生、電気など)に関する十分な知識と技能を有していることを証明する資格で、(公財)建築技術教育普及センターが実施する国家資格です。
受験資格として学歴や実務経験などの規定があり、合格率も15~20%と難易度は高めです。
1級建築士の受験資格になっているので、将来建築士を目指す人の受験も目立ちます。
消防設備士
建物や施設に設置されている消化器やスプリンクラーなど消防設備の点検や整備を行うために必要となる資格です。
(一財)消防試験研究センターの実施する国家資格で、甲種(特種・1~5類)と乙種(1~7類)の2つがあり、扱える消防設備に細かな違いがあります。
また、甲種(特種)の資格を保有者に限り整備・点検のほかに工事も行うことが可能です。
施工管理技士
建設業法にもとづく国家資格で、「建築施工管理技士」や「電気工事施工管理技士」などがあり、それぞれ1級と2級に分かれています。
電気工事施工管理技士の資格を取得すると、照明や変電設備、配線といった電気設備工事の施工管理を担当することが可能になります。
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設備工事業の課題
今後、設備工事の仕事に就きたいと考えている人にとって、業界の実情は気になるところでしょう。
設備工事業界の課題にはどのようなものがあるのでしょうか。
人手不足
これは設備工事の業界に限ったことでなく建築業界全体に言えることですが、慢性的な人手不足は長年の課題となっています。
少子高齢化が急激に進行する日本において、労働人口の高齢化は大きな問題であり、高齢者がリタイアしても若い労働力が代わりに入ってこないため、業界の労働者数は減少の一途を辿っているのです。
このような背景から、少数の労働者に過大な仕事が割り振られ、重労働を課す結果となっています。
DX化による働き方改革
人手不足が深刻な業界において、問題解決のために急務とされているのが、DX化による働き方改革です。
ドローンを使った測量データの取得や作業の自動化により大幅な人員削減を可能にするICT建機の導入、これまで高度な技術者しか行うことができなかった作業へのAI採用などが今後実用されるかどうかに業界の将来がかかっているといっても過言ではありません。
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『建設業向けシステム アイピア』
まとめ
設備工事の内容は多岐にわたりますが、どれも利用者に対して安全性や利便性、快適性を提供するものであり、とても大切な工事であることを理解していただけたと思います。
人手不足など業界特有の課題を抱えていることも事実ですが、DX化など抜本的な改革も検討され、実現されればより良い環境で働けるようになるでしょう。
設備工事業界で働きたいと考えているならば、将来に向けて資格を取得し、キャリアアップを目指してみてはいかがでしょうか。