建設業界の元請け企業から「見積書に法定福利費をしっかり記載してください」と言われた経験はありませんか?これは、平成25年から「法定福利費を内訳明示して見積書に記載」することを義務付けられたからなんです。
法定福利費ってどうやって計算したらいいの?見積書に内訳を書く方法は?このような疑問に対して徹底解説します!
目次
法定福利費とは?
法定福利費とは、”福利厚生”として支払われる費用のうち、絶対に企業が負担しなければならない社会保険料のことです。
これは法律で義務付けられているため、企業は必ず労働者に支払う必要があります。
法定福利費に含まれる社会保険料は、以下の6つです。
- 健康保険料
- 介護保険料
- 厚生年金保険料
- 子ども・子育て拠出金(旧:児童手当拠出金)
- 雇用保険料
- 労災保険料
このような法定福利費は、労働者たちが適切な社会保険に加入し、安心して働くために必要な費用です。
なぜ見積書に法定福利費を記載するの?
建設業界では、労働環境を改善して人材を確保するため「社会保険などの未加入問題の解消」に力を入れています。
その一環として、法定福利費の内訳を明示して作成することが義務付けられるようになりました。
社会保険などの未加入問題を解消したいため
建設業界は危険な現場での作業も必要となるため、他の業界よりもケガや事故が多くなりがちです。そのため、企業は必ず労働者を社会保険や労働保険に加入させる義務があります。
しかし下請け企業などでは、社会保険に未加入のまま業務を行うところが多くありました。
ただでさえ建築業界は人手不足問題に悩まされているのに、労働環境が改善されていないことが分かると、建築業界からどんどん人材が離れてしまう恐れがあります。
そのため、「社会保険などの未加入問題」を解消して労働環境を改善させたい、という動きが強まっているです。
工務店の人手不足が問題に!解決するための取組とは平成25年から義務化されたため
この問題を解決するため、国は平成25年(2013年)から「法定福利費を含めた見積書」の提出を義務付けました。
「社会保険等の未加入問題」を解消するためには、福利厚生費をきちんと確保することが必要です。しかし、今までの取引では、見積書で福利厚生費がどのように扱われているのか分かりづらい状態でした。
そこで、「法定福利費の内訳をきちんと明示した見積書」の提出を義務付けることで、各種保険に加入していない建設会社は仕事自体ができなくなる仕組みを作ったのです。
国土交通省:社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン内訳明示した法定福利費の見積書の作り方
法定福利費を内訳明示した見積書は、以下の2つの手順で作成することができます。
- 法定福利費を算出する
- 法定福利費を見積書に明記していく
それぞれの手順において、ポイントとなるところを詳しく解説していきます!
1. 法定福利費を算出する
法定福利費は、以下の計算式で算出します。(※このほか、工事費や工事数量を使った算出方法もあります。)
法定福利費 = 労務費総額 × 法定保険料率
法定福利費は、「 ”年間の賃金総額” × 法定保険料率」で計算するのが一般的です。しかし建築業界の場合、見積もりの段階で「労働者の年間賃金総額」を把握することはできません。
そのため、見積額に計上した「労務費」をつかって、法定福利費を計算します。
それでは見積書や保険料率の計算法について、詳しく見ていきましょう!
STEP1
労務費を計算する
まず、労務費を計算します。労務費はそれぞれの業界や会社によって算出方法が異なるので、自分たちの方式に合ったやり方で計算してください。
建築業界の場合だと、労務費は以下の方法で算出できます。
一日あたりにかかる賃金 × 工事に必要な人数
STEP2
労務費と法定保険料率をかけ算する
つぎに、計算した労務費と各種保険料率をかけ算していきます。
保険料率は、都道府県や年度ごとによって異なります。そのため、見積書を作成するときは、必ず自分の会社が加入している団体を確認してから、それぞれに対応する参照先のサイトを見て計算してください。
各種保険料率について
- 健康保険料率
協会けんぽ:令和4年度保険料額表(令和4年3月分から) - 介護保険料率
協会けんぽ:協会けんぽの介護保険料率について(令和4年3月分から) - 厚生年金保険料率(子ども・子育て拠出金含む)
日本年金機構:厚生年金保険料額表(令和4年に更新) - 雇用保険料率
厚生労働省:令和4年度の雇用保険料率
保険料率がわかれば、あとはそれぞれ「労務費 × 各種保険料率」と計算することで、法定保険料率を算出することができます。
国土交通省:法定福利費を内訳明示した見積書の作成手順2. 計算した”法定福利費”を見積書に明記する
さて、ここまでで「福利厚生費」を算出することができました。では実際に見積書に明記していくために、どういったポイントに注意すればいいのでしょうか。
記入例つきで、詳しく解説していきます。
内訳表示する法定福利費の範囲
法定福利費の中で見積書に内訳表示する必要があるのは、以下の5つの中の現場労働者の「事業主負担分」です。
- 健康保険料
- 介護保険料
- 厚生年金保険料
- 子ども・子育て拠出金(旧:児童手当拠出金)
- 雇用保険料
見積書の記入例
以下に、記入例としてカフェのリフォーム工事を行った際の見積書の内訳を記載しています。
重要なのは、法定福利費も消費税の対象になるということです。
そのため、最終的な見積り金額は以下のように算出します。
消費税等:F円 =(D円+E円)× 8%
見積金額 = D円+E円+F円
こうして、最終的な見積金額を算出することができます。
もし概算の労務費率などを用いて計算する場合は、「工事価格・労務比率・保険料率」を明記する必要があるため、注意が必要です。
建築・リフォーム業の見積書の書き方やテンプレートはこちら
建設業がチェックすべき法定福利費の注意点
元請け企業:見積書に記載されているか必ず確認する
元請け企業の方は、下請けに発注する際「見積書に必ず法定福利費を記載してください」と伝えましょう。また、提出された見積書にきちんと福利厚生費が記載されているかどうか、必ず確認してください。
提出された見積書は、元請け企業が一方的に法定福利費などを減額してはいけません。
下請企業:見積書に必ず記載する
工事の見積書を作成する場合は、必ず法定福利費を記載するようにしましょう。
記載する厚生福利費は、ざっくり計算したものは認められません。各保険の「法定保険料率」を確認して、正確な金額を出す必要があります。
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まとめ
さて、今回の記事では法定福利費の計算方法や、見積書への正しい書き方について詳しく解説してきました。
建設業界では、人材不足などを背景に「社会保険などの未加入問題」対策として、見積書に法定福利費の内訳を明記することが義務付けられています。
労務費や各種保険料率をしっかりと確認して、正しく見積書を作成するようにしましょう。
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