建築業を営むうえで、重要になる費用が「現場管理費」です。普段から現場管理費を管理している方はその重要性を理解していると思います。しかし、将来独立や起業したい方、家業の工務店を継承する予定の方も、建築会社の経営をするうえで理解しておきたい概念です。
この記事を読んで、現場管理費の重要性や内訳をしっかり理解しておきましょう。
現場管理費とは
現場管理費とは、工事ごとにかかる諸費用のことです。 工事現場で必要になる備品の費用や現場で働く職人に支払うあらゆる費用、工事に求められる保険の費用などさまざまな費用が含まれます。 工事を請け負う際は、現場管理費を見積もったうえで、それに利益を上乗せして施主に請求する工事代金を決めるのです。
一般管理費との違い
一般管理費は、建築会社や工務店など会社の経営を維持管理するために必要な費用です。
例えば「本社や支社の事務所の家賃や水道光熱費・通信費や減価償却費、オフィス用品などの備品の費用、本社の社員や役員などの給与や交通費、福利厚生費」など、幅広い費用が含まれます。
現場管理費は「工事ごとにかかる現場の費用」のことですが、一般管理費は「会社全体の維持管理に必要となる費用」という違いがあります。
国土交通省:公共建築工事共通費積算基準現場管理費の重要性について
現場管理費は、「見積り」と「予算」においてとても重要です。 高層マンションやオフィスビルなど大規模工事はもちろんのこと、戸建て住宅であっても、建築工事には多額の費用と施工期間がかかります。 こうして長期間にわたって多くの人が携わるため、現場管理費は重要なのです。
CHECK!
見積り
現場管理費の見積もりを誤ると、利益が少なくなるおそれがあるため重要です。
工事の発注依頼や見積もり依頼を受けたら、「工事に必要となる期間やその間に携わる職人の人件費」、「工事現場で必要となる設備などの費用」や「工事現場の安全管理のための費用」などを見積もらなくてはいけません。 現場管理費等に利益をプラスして、発注者との間で工事代金の契約額を取り決めます。
CHECK!
予算
現場管理費の予算通りに工事が進まなかった場合も、利益が少なくなるおそれがあります。
実際の施工中に想定外の経費が発生したり、施工期間が延びたり、施工管理がうまくいかずに費用が上乗せされれば、やはり利益が減ってしまいます。 そのため、当初立てた予算内に収まるよう管理しなくてはなりません。
予算を見積もる際には、必要となる費用の抜けや漏れが出ないように気を付けることが大切です。 費用を計上する際も、過小評価しないようにすることも求められます。 さらに施工中には、予算と実際にかかる費用との間で、大きな誤差が生じないよう管理していくことが必要です。
予算を超える残業代が発生しないよう進捗やスケジュールを管理することや、事故などのトラブルが生じて思わぬ費用の発生や進捗の遅れが生じないよう、安全対策も徹底しなくてはなりません。
予算や見積書について詳しく読む
現場管理費に含まれる費用
現場管理費に含まれる費用として代表的なものに、「労務管理費・保険料・従業員給与手当・租税公課・法定福利費・施工図等作成費・福利厚生費・通信交通費・事務用品費・退職金・補償費」があります。
それぞれの費用について、どのようなものが該当するのか確認していきましょう。
労務管理費
労務管理費とは、現場で作業する職人やスタッフを管理するための費用です。
スタッフに支払う給与以外の費用が該当します。 スタッフの募集費用をはじめ、交通費や作業服や防塵マスクなどの費用、必要に応じて支給する場合の食事代などです。 現場スタッフの安全訓練や衛生に関する訓練を行った場合や研修を実施した場合には、労務管理費に計上されます。
保険料
保険料とは、工事にあたって万が一の災害や損害、賠償責任が発生した時に備えて加入する保険の費用です。
工事の対象物の火災や災害、作業ミスによる損害をカバーする建設工事保険や現場の事務所などに対してかける火災保険、工事に用いる車両にかける自動車保険、法定外の民間労災保険の保険料などが該当します。
建設工事保険は、補償内容にもよりますが、「工事中の建物が放火される・災害で崩れる・建設資材が盗難される・作業員が資材を落下させて資材を損壊した」などのケースに保険金が出る損害保険です。
従業員給与手当
従業員給与手当とは、現場で働く従業員の給与や手当の合計費用です。
作業員や現場監督をはじめ、現場事務所で電話対応や事務処理をするスタッフの給料や残業手当、通勤手当、危険手当などが対象です。
租税公課
租税公課は、工事にあたって発生する税金や行政機関などに支払う手続き費用などが対象となります。
契約書に貼付する収入印紙代や役所に申請する申請書に使用する証紙の費用、工事車両の自動車税などです。
法定福利費
法定福利費とは、現場で働く従業員や職人の健康保険料や厚生年金保険料、労災保険料や雇用保険料など、法律で事業主が負担することが義務付けられている社会保険料などのことです。
【建設業向け】見積書に法定福利費を含める場合の作成方法施工図等作成費
施工図等の図面を自社で作成するのではなく、専門業者に外注して作成する場合にかかる費用が該当します。
福利厚生費
法定福利厚生費とは別に、事業主が任意で設ける福利厚生にかかる費用です。 作業服の貸与や慶弔見舞金、決起集会や慰労会などにかける費用、保育費用の支援、サウナやスポーツジムなどの利用料の補助費用などが対象です。
通信交通費
通信交通費委は、通勤以外で必要となる交通費が含まれます。
現場事務所や現場で使う電話やインターネットの通信料金や作業員に持たせる巣ケータイやスマホの利用料金、現場から施主に報告に行くなど、
事務用品費
事務用品費には、現場事務所で使用する電話やFAX、コピー機やパソコン、印刷用紙や文具などの事務用品の購入費などが該当します。 新聞の購読料や、参考図書や地図などの購入費用も対象です。
退職金
退職金とは、現場監督や自社の作業員、現場事務所の事務員など現場で働く社員の施工期間中に積み立てる費用です。 定年退職時に支払う退職金だけでなく、勤続年数に応じて退職金を支払うケースや現役中に病気や事故などで死亡した場合に遺族に支払われる死亡保険金の保険料なども含まれます。
補償費
補償費は、工事中に発生する騒音や振動によって近隣の住民や法人などに迷惑をかけた場合や、水質汚濁や粉じんなど周辺の汚れが発生したなどの場合に補償を行うための費用のことです。
実際に損害が発生しないと支払われませんが、万が一に備えて見積もっておきます。ただし、工事用車両による通行止めなど実際に予定されていることに対して補償費を払うこともあり、その場合は補償費も計上されます。
費用に関しての記事はこちら
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まとめ
現場管理費とは工事現場において発生する、工事を完成するまでに必要となる諸費用のことです。 主な項目として、「労務管理費・保険料・従業員給与手当・租税公課・法定福利費・施工図等作成費・福利厚生費・通信交通費・事務用品費・退職金・補償費」などがあります。
一般管理費は、本社の機能を維持するための費用であり、工事現場ごとにかかる費用とは異なります。 現場管理費の見積もりを見誤ることや実際にかかった費用が当初設定した予算を超えると、工事代金に上乗せされている利益分が減少するので注意しなくてはなりません。 会社の業績にも影響を与える、重要な費用です。
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