ICT施工とはどのような施工方法かご存知でしょうか。
建築業界の人手不足や高齢化による技術承継問題を補い、安全で正確な工事をするために期待されている新たな施工法です。
この記事ではICT施工とは何か、メリット・デメリットをご紹介していきます。
ICT施工とは
ICTとは、Information and Communication Technology(情報通信技術)の略です。
最新のIT技術や機器をインターネットでつなぎ、スムーズで正確な情報伝達や情報を活用した対応が実施できる技術です。
ICT施工とはICTを活用した工事のことで下記の順番でつながり、建設工事の各段階でICT技術を活用することが期待されています。
- 3次元起工測量
- 3次元測量設計データ作成
- ICT建機による施工
- 3次元出来形管理等の施工管理
- 3次元データの納品
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ICT施工の活用場面
ICT施工では、測量・設計・施工・管理・検査・納品の工事現場の各プロセスにおいて活用することが可能です。
それぞれの活用場面の方法について見ていきましょう。
CASE1
3次元起工測量
測量といえば、人が2名2組で実際に線を引くことや長さを測って実施していました。
一時的に交通を止めることや人件費も手間もかかります。
3次元起工測量は従来の人による手作業ではなく、ドローンによる空中写真測量(UAV)、レーザースキャナーをはじめ、その他3次元測量技術を使って測量を実施します。
これにより少ない人材で短時間で測量ができ、山間部や人間が入りにくい開発遅滞などでも、安全かつ短時間で測量を行うことが可能です。
CASE2
3次元設計データ作成
3次元設計データとは、発注者から受領した従来通りの2次元の設計図書を受注者が3次元データに変換することです。
3次元設計データ設計図書の照査と、出来形数量の算出に活用することができます。
CASE3
ICT建設機械による施工
ICT建設機械に先に作成した3次元設計データを設定、登録するとICTが内臓されている建設機械は位置情報と3次元設計データを照合し、比較しながら、オペレーター操作をサポートすることや自動制御などを行うことが可能です。
技術や経験が未熟でも、設定された3次元設計データ通りに機械を動かすだけで精度が高く、安全な工事を行うことができます。
CASE4
3次元出来形管理等の施工管理
出来形管理などの施工管理も、3次元の設備を使って行うことです。
ドローンによる空中写真測量を用いた出来形管理や地上型レーザースキャナーを用いた出来形管理など、目的や現場に合わせて幅広い技術が活用できます。
CASE5
3次元データの納品と検査
作成し、施工に利用した3次元データの納品を行い、3次元計測器を通じて現場検査を実施します。
ICT施工のメリット
ICT施工のメリットはどんな点でしょうか。
ICT施工のメリットは業務効率化が図れること、安全性が高いこと、人材不足を解消できること、施工精度が向上すること、技術評価値の向上につながることです。
それぞれのメリットについて詳しく見ていきましょう。
業務効率化
従来の方法より、少ない人手でスピーディーかつ精度の高い施工が可能となります。
安全性が高い
高所や未開拓の山林、海や川の向こう岸にいたるまで、ドローンなどの機械や技術を用いて測量や検査ができるので、安全性が高いです。
建機の操作や運用も正確なデータにもとづいて行えるため、事故のリスクを防止できます。
人材不足を解消できる
測量・設計・施工・管理・検査・納品と工程ごとに複数の人材を配置していたのが、各担当1人や複数の工程を1人で対応できるなど、人材不足を解消できます。
ICT機器や技術が、これまで人が行って来た作業工程の一部に対応してくれるためです。
施工精度が向上する
測量担当者や設計図の作成、建機のオペレーターの知識や技術、経験値が低くても、ICT機器や技術を活用した測量や設計図を用いることで、より正確で精度の高いオペレーションが可能となります。
技術評価値の向上につながる
公共工事の落札をしたい場合には、入札価格だけでなく、工事の質や内容などの技術提案が評価対象とする総合評価落札方式が2022年度から導入されました。
従来のように最も低い入札金額を入れた事業者が落札者になるとは限らず、技術力の高い事業者がより高く評価され、入札につながりやすくなります。
施工能力評価型・技術提案評価型の企業の技術力の評価において、ICT施工技術の活用も評価ポイントの一つになっています。
ICT施工のデメリット
では、ICT施工のデメリットはどんな点でしょうか。
ICT施工のデメリットは導入コストがかかること、通信環境が悪い現場では利用できないことが挙げられます。
デメリットについて詳しく確認していきましょう。
導入コストがかかる
ICT機器を導入する必要があるので、機器の導入コストがかかります。
また、ICT機器を使いこなすための研修を積むなど、実際に操作でき、スムーズな運用を行うまでにはトレーニングコストなどもかさみます。
通信環境が悪い現場では利用できない
ICTは、インターネットを通じて、データを機器や建機などに伝達して工事を行う仕組みなので、通信環境が悪い現場では利用できないおそれがあります。
山間部の開発など、ぜひとも使いたいところで使えないといったジレンマが生まれることも少なくありません。
危険性を回避するため、どうしてもICT施工をしたいとなると、Wi-Fiの導入や設定などから入らなくてはならず、よりコストがかかります。
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まとめ
ICT施工とは、3次元起工測量、3次元設計データ作成を行い、ICT建設機械による施工を実施し、3次元出来形管理等の施工管理や3次元データの納品と検査までICTを駆使して工事を行うことです。
ICT施工のメリットは、業務効率化が図れること、安全性が高いこと、人材不足を解消できること、施工精度が向上すること、技術評価値の向上につながることです。
ICT施工のデメリットは導入コストがかかること、通信環境が悪い現場では利用できないことが挙げられます。